【ほったらかし投資勉強会】やっぱり「成功は再現性が低く、失敗は再現性が高い」

個別株投資は生活に支障をきたす

『ほったらかし投資術』(朝日新聞出版)の第1章には、このように書かれていました。

 私にも思い当たることがあります。2010年頃に日本航空株を持っていたとき、仕事中でも株価をチェックしていたからです。当時は日本航空の組合その他、企業としての数々の問題が明らかになっていて、株価もダダ下がりしていました。
 そして私はというと、売るタイミングを逃していたのに、会社のパソコンでハラハラしながら株価をチェックしていました(当時の職場の皆様、スミマセン!)。

 人間とは面白いもので、不快な刺激であっても、その刺激をやめられず、自ら求めていくのです。『暇と退屈の倫理学』(著/國分功一郎 新潮社)には、次のように書かれていました。

退屈の対義語は快楽ではなく興奮である

 株価をチェックするたび、私の脳内でドーパミンが放出されていたのでしょう。脳内報酬系の実験で、飲まず食わずで、電気刺激が起こるレバーをラットがひたすら押し続けたように……
 そのようなわけで、値動きが激しくて興奮を招くので「個別株投資は生活に支障をきたす」のです。


 逆をいえば、個別株投資を行っても淡々と生活を送っていける人は、超人。
 そんな超人たちの売れに売れている本を、立ち読みしてきました。買わなかったのは、私がケチであるだけでなく、「やっぱり『成功は再現性が低く、失敗は再現性が高い』」と悟ったからです。



 著者たちは、国立大学医学部を卒業した麻酔科医と、国立大学理系学部の院卒で会社勤めをしながら中小企業診断士の資格を取得。この時点で「すげー……」とため息が出ます。

 まず、個別株投資の最大の失敗は、「損切りしない」ではないでしょうか。損切りとは、損失を抱えている状態で保有している株を売って、損失を確定させること。つまり、日本航空株下落の際に私がやらなかったことです。行動経済学での「損失回避バイアス」の一つで、利得と損失を比較した際に損失を重大だと感じやすいために、損失を回避しようとするのです。
 個別株投資においては、「株価が下がっているときに売っちゃうと、損が確定してしまう!」という心理的ショックを避けたがるために、急落中の株をズルズルと持ち続けてしまいます。その後に、もっと大きなショックが待ち受けているにもかかわらず……

 「損切りしない」という失敗は「もっと大きな損をする」現象を引き起こしやすい、つまりは再現性が高いと指摘されています。ですから、超人である著者たちは、損切りのルールを作り、失敗を回避していました。

 成功の再現性については、そもそも彼らは学歴がいい上、大量に投資の本を読んで、研究を重ねていました。類まれなる努力家でもあったのです。
 損切りすら今もうまくできない私が、投資の研究を重ねて、自分なりの必勝法を見つけられるのか。
 自問して、「ないな……」と思ってしまいました。凡人では再現できません。

 成功者の投資法を学ぶのは、それはそれとして素晴らしいのですが、「自己投資」ではなく大人のたしなみです。

 ここから、それぞれの著者の発言を見ていきましょう。
 まず、『50万円を50億円に増やした 投資家の父から娘への教え』(ダイヤモンド社)のたーちゃん。プロフィールだけでも、なかなかの超人です。

たーちゃん

個人投資家・医師

→バリュー投資
※景気循環によって業績が変動しやすい「シクリカル業種」で、現在は株価が下がっていて、将来的に業績回復が期待される企業に投資する

[プロフィール]

1975年兵庫県生まれ。
広島大学医学部卒の現役麻酔科医。
1998年、大学生のときに『金持ち父さん 貧乏父さん』を読んで投資に興味を持ち、元手50万円で株式投資をスタート。アミューズメント機器や施設運営、ゲーム機器を手がけるセガサミーホールディングス(旧サミー=6460)を購入。
2000年、セガ株の投資がうまくいき、資産500万円に増加。
2003年、暴落していたオーストラリアの金鉱株に集中投資して、2005年に資産1億円達成。集中投資はやめて、バリュー株の分散投資にシフト。
2008年のリーマンショックでは、ほぼ底値で買った銘柄の株価が上がったり、保有銘柄がTOB(株式公開買い付け)で値上がりしたりと、結果としてほとんど資産を減らさずに耐える。
2009年、「かつや」などを展開するアークランドサービスホールディングス(3085)の買い増しを続けて主力化。
2012年、過払い金請求問題で倒産すると思われていたアイフル(8515)が、黒字化したタイミングで集中投資
2013年、アベノミクスの追い風もあり、アイフルが半年で約7倍に。保有していたアークランド株も、この年にテンバガー(株価10倍)を達成。資産10億円を達成し、配当金は年3000万円以上と、医師としての収入をゆうに超えるようになった。
そこで38歳のとき、FIRE(経済的自立と早期リタイア)して専業投資家になるも、平日に高齢者と麻雀をする日々が暇すぎたため、半年で復職。
2016年、同業のGMOフィナンシャルホールディングス(旧GMOクリックホールディングス=7177)より割安だったヒロセ通商(7185)を、浮動株(株式市場で流通している株)がなくなるくらいに購入し、半年で株価が約3倍に。割安株主体で守備的な投資をしながら、不況の業種で10倍株候補を見つけて大胆に投資する「分散×集中投資」で資産50億円を超える。
2022年がんが発見され、翌年がんが再発。4度の手術を経て2024年、49歳で肺と肝臓へのがん転移が判明。主治医からは「50歳は迎えられても、51歳はわからない」と宣告される。
初の著書『50万円を50億円に増やした 投資家の父から娘への教え』(ダイヤモンド社)で2人の愛娘に向けて自らの投資法を初公開・初指南。

そこで「毎日、株の本を読む」と決めた。結局、年間100冊程度読み、大きな気づきを得た。
「割安な株を長期的に持っていることが株の王道」と学んだのだ。

 私の場合、漫画ならば年間100冊程度読んでいます。しかし投資の本となると、ただ読んで面白がるだけでなく、エッセンスを吸収する必要も出てきます。その点でも著者は超人です。





kenmo(湘南投資勉強会)

個人投資家

→新高値ブレイク投資:「新高値」をつけた株を買い、さらに高値で売却することを狙うという手法(株価チャートの「高値」を突き抜けて、値上がりする「ブレイクアウト」の後は株価が大きく上昇するケースが多い)
→集中投資&損切り

[プロフィール]

1982年愛知県生まれ。
大阪大学大学院情報科学研究科修了後、東証一部(現・東証プライム)上場のメーカーに研究職として就職。
2011年に4年間で貯めた元手300万円から株式投資を始め、追加資金の投入なしに、会社員を続けながらわずか5年で資産1億円を達成。現在は、約3億円を運用している。
2018年個人投資家同士の情報交換を目的とした「湘南投資勉強会」を設立。
2023年に中小企業診断士の資格を取得。
15年間勤めた会社を辞め、IR支援や企業コンサルティングを行うための法人を設立。現在は株式投資のかたわら、講演活動や、数多くの企業のIR説明会の主催を行っている。『ダイヤモンドZAi』『日経マネー』『日経ヴェリタス』『日本経済新聞』などでの記事掲載多数。本書『5年で1億貯める株式投資 給料に手をつけず爆速でお金を増やす4つの投資法』が初の著書となる。

大学時代にやっていた「せどり」は、就職してからも少し続けていましたが、1回の取引で得られる差益は数千円程度。大学生にはありがたくても、社会人としてもらう給与からすれば、とても労力に見合うものではありません。
そこで、「どうすればお金を増やすことができるのか」と真剣に考えるようになりました。
そして、収入を増やす手段として思いついたのが、「起業」「出世」「投資」という3つの手段だったのです。
ちなみに、「節約」するという手段は、はなから選択肢に入れませんでした。

でも、本書のタイトルに引かれて読んでいるあなたは、「できれば短期間でまとまった資産をつくりたい」と考えているはず。その思いは長期分散による“ほったらかしの投資信託”では実現不可能なのです。

テレビのコメンテーターとしてもよくお見かけする経済評論家・加谷珪一氏が著書で、そのことを裏づけるように「儲けるためには集中投資も必要」と述べているので、次に引用します。

「世の中では、リスク分散が絶対的に正しいことのように言われているが、そうではない。 以前、株式投資にチャレンジしている人に対して、少ない銘柄に集中して投資するようアドバイスしたことがある。(中略)結局のところ、かなり高いリスクを取った人のなかで、比較的運のよかった人が、特別にパフォーマンスの高い銘柄で一気に資産を膨らませる。その後はある程度リスクを抑えて、安全に運用することで目減りを防ぐ。このような投資パターンの人が、株式投資で財をなした人ということになるだろう」『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)より
資産が少ないうちは、分散投資をしてリスクを減らすことよりも、「この株なら勝てる」と確信に近い思いを得られる銘柄を絞り込んで、集中投資
それでももくろみが外れて株価がマイナス8%になったら、すぐに損切り。そして、別の銘柄にシフトするほうが、確率論における「期待値」は、かなり高まります。
見知らぬ他人が発している儲け話やSNSで見かけた有望銘柄に便乗しようとするのではなく、証券会社のサイトなどで「新高値」をつけた銘柄をスクリーニングし、なぜその株価が上がっているのかを調べ、自分で裏をとりましょう
また、1つの銘柄に集中するからこそ、日々のニュースや決算情報、業界の動向などにアンテナを張り、能動的に情報を集める習慣が身につきます。
それは結果的に、次に狙うべき銘柄を見極める力にもなっていくのです。
投資において本当に怖いのは、“わからないまま流されること”です。だからこそ、リスクをとるのであれば、納得してとる。

このマインドをもっていれば、相場に一喜一憂せず、ブレずに前進できるはずです。
最初に読んだのは、アラブ首長国連邦(UAE)の政府系ファンド「アブダビ投資庁」で日本株運用部長(ファンドマネージャー)を務めていた林則行氏の著書『伝説のファンドマネージャーが教える株の公式』(ダイヤモンド社)でした。

そこで紹介されていたのが、成長企業の株を年初来高値や昨年来高値といった「新高値」を更新した時点で買う「新高値ブレイク投資」だったのです。

 『伝説のファンドマネージャーが教える株の公式』を検索したところ、2010年に刊行されていました。おそらく、この本を読んで「新高値ブレイク投資」を実行した人は少なくないでしょう。その中で「比較的運のよかった人が、特別にパフォーマンスの高い銘柄で一気に資産を膨らませる」ことができたのだと、個人的には思っています。
 また、マイナス8%で損切りというのは、当たり前の話ですが、持っている株の価格をこまめにチェックしなければできません。
 「できれば短期間でまとまった資産をつくりたい」のであれば、その分の時間と労力が求められるということです。
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