【ほったらかし投資勉強会】「ボーグルヘッズ(Bogleheads®)の10則」

 『ほったらかし投資術』(朝日新聞出版)巻末の特別鼎談で「ボーグルヘッズの10則(非米国投資家向け)」が紹介されています。

 ヴァンガード・グループの創業者でもあったジョン・ボーグル氏(2019年没)は、世界で初めて、個人投資家向けにインデックス・ファンドを提供した人物です。

『インデックス投資は勝者のゲーム』Amazonページより



 ボーグル氏の投資哲学を普及させる活動をしている非営利団体がBogleheads ®(ボーグルヘッズ)で、ボーグル氏の言葉から10項目の原則「ボーグルヘッズの10則」をまとめています。

○Bogleheads®
設立:1998 年

○Bogleheads®日本チャプター
設立:2021年10月
X アカウント: @JBogleheads

 今回はボーグルヘッズの10則を見ていきましょう。

1 実行可能な計画を立てる(Develop a workable plan)

 今の自分の家族構成、収入や貯蓄、生活費などを把握してから、投資に回す金額を決めることが大事です。
 とはいえ、「完璧である必要は無いが、合理的である必要がある」ということ。1円単位で計算して「完璧な計画が作れない……」と悩むよりも、おおざっぱに「今は月々○円くらいで、来年は子どもが受験だから」と計画を立てるほうがよさそうです。
 「収入の20%くらいを投資に回すのが出発点としていいのではないか」とも示されていました。

2 早くから、かつ定期的に投資する仕組みをつくる(Invest early and often)

 「投資習慣を確立し、継続すること」が大事。給与からの自動引き落としによる投資を行うことが勧められています。基本的に、私たちは面倒くさがり屋。特に若い頃は、興味が多方面に向いているので、定期的に投資をしようと思っても忘れがちです。そのため、自分が動かなくても勝手に投資にお金が使われるようなシステムが有効です。

 山崎元さんは、次のように述べていました。
「若い頃は自分への投資が大事だ。しかし、それを前提とした上でも、先ずネット証券に口座を開いて、ネット証券と連携できる銀行口座を作る。そして、億劫がらずに、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)とつみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の口座を作って、それぞれに毎月5千円でもいいから積立投資する『仕組み』をつくるところまで、やっておくといい。仕組みが出来ていれば、あとは将来必要な時に金額を増やすのは簡単だ」。

3 リスクの取り過ぎや、リスクを取らないことに注意(Never bear too much or too little risk)

 「次の下落相場で株式を売らなければならないような株式投資額」はリスクの取り過ぎ、「売らずに堪えられる状況が予見できるなら、それは負担できるリスクだ」というのが適切なリスクということになるでしょう。

 ほったらかし投資では、リスクを取りたくない資金は、個人向け国債変動金利型10年満期や銀行預金に置くことを推奨しています。


4 分散(Diversify)

 特定の株式や業種に投資するのではなく、広く分散投資するべきで、アクティブ・ファンドの平均よりもインデックス・ファンドのほうが、運用成績が優れていることを指摘しています。

5 マーケットタイミングを採らない(Never try to time the market)


 「株価が下落しそうな時には、株式の投資比率を下げる」といった運用は、うまくいかないということがプロの運用の世界の常識だと山崎さんは述べています。
 「上げ相場にも、下げ相場にも、全て付き合う」という方針での運用が推奨されていました。

6 インデックス・ファンドを活用する(Use index funds when possible)

 分散という観点では、1本のグローバル(全世界)株式ファンド(「オール・カントリー」という名前がついているファンド)だけで十分ということです。

7 コストを低く抑える(Keep costs low)

 「一番ましな」ファンドを探すコツは、年間コストが最も低いものを探すことですなのだそうです。

8 税金を抑える(Minimise taxes)

 iDeCoやNISAなどの税制上有利な運用口座を、なるべく大きく利用することと、期待リターンが高い運用商品を集中させることがポイントだと山崎さんは述べています。

9 シンプルな投資(Invest with simplicity)


 シンプルな投資のメリットとして、次が挙げられています。
○コスト(税金を含む)を削減できる
○ポートフォリオの把握も、リバランスも簡単
○必要に応じてポートフォリオを簡単に相続できる
○家族や友人と過ごす時間を増やし、資産運用に費やす手間と時間を減らすことができる

10 航路を守る(Stay the course)

 ボーグルヘッズの投資哲学によると、投資を始める際の検討に必要な時間は数時間。その後は1年に1度1時間ほどかけてポートフォリオのバランスを調整し、マーケットのチェックや金融ニュースのフォローは必要ないとのこと。
 方針をいったん決めたら、明確な変更理由がない限り、守るべきだといういます。「やっぱり……」「でもやっぱり……」という具合にコロコロと方針を変えないほうがよさそうです。

■ 『ほったらかし投資術』 以外の主な参考資料
分散、低コスト、シンプル……ジョン・ボーグル氏の投資哲学を検討する

Bogleheads ®の投資哲学



※分散・シンプルな投資と関連してバランス・ファンドについて
 バランス・ファンドは、国内外の株式、債券、リート(不動産)など、複数の資産に分散投資する投資信託です。一つのファンドで、資産の種類や地域を分散することで、リスクを抑えながら安定的な運用成果を目指せるのが特徴です。

 ただし、手数料が高い、株式や債券などの割合が見えないなどの問題点を山崎さんは挙げていました。さまざまなアセットクラス(株式や債券といった資産)が混ざっているため、基準価額の動きの原因が理解しにくく、期待リターンの低い債券にも信託報酬を払って投資するのは無駄だと述べています。

 バランス・ファンドを山崎さんが推奨しない理由をまとめると、以下のとおりです。

(1)リスクの大きさ・内容が把握しにくい
(2)リスクの大きさ・内容のコントロールが難しい
(3)コストが割高
(4)アセットアロケーションの特別な能力は誰にもない

 実際に、同じ運用会社が似たコンセプトで作ったと思われる商品で、信託報酬を比較してみましょう(2025年7月の時点)。

○バランス・ファンド eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
購入時申込手数料 無料
信託報酬 年率0.143%以内(税込)
運用会社 三菱UFJアセットマネジメント株式会社

○インデックス・ファンド eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
購入時申込手数料 無料
信託報酬 年率0.05775%以内(税込)
運用会社 三菱UFJアセットマネジメント株式会社

 やはり、信託報酬にかなりの開きがあります。金融商品の場合は、単品買いするほうが確実に安いことがわかります。
 株式や債券などに分散させる場合には、バランス・ファンドに投資するよりも、自分で組み立てるほうが安上がりとのこと。

 『ほったらかし投資術』では分散投資という話題で、ETF(Exchange Traded Fund 、上場投資信託)がたびたび登場します。東京証券取引所(Exchange)で取引される(Traded)投資信託(Fund)です。
 取引所に上場しているものの、ETFは複数の銘柄に分散投資しているため、個別の企業の業績に左右されることは少ない一方、株式と同様にリアルタイムで売買できます。
 ETFの場合、決算期間中に発生した利子や配当など(インカムゲイン)が分配金として支払われますが、ETFが組入れた株などの売却益(キャピタルゲイン)が分配金にはなりません。
 資産を増やすというよりも、残高をキープしながら配当金や分配金をもらうという商品になります。

個人の運用管理、基本三原則
(1)投資家はリスクを投資金額で調整出来る。
(2)投資家にとって大切なのは自分の資産の「一部」ではなく「合計」だ。
(3)投資家は運用の中身を知らないよりも知っている方がいい。
■ 『ほったらかし投資術』 以外の主な参考資料
バランス・ファンドを巡るあれこれ

バランスファンドが本質的にダメな4つの理由
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