7-2 気功

 7-2 気功

 中国の伝統医学では、「気」がすべてのものを構成し、すべての現象を引き起こす根源的な要素として捉えられています。
 紀元前221年から紀元前206年まで存在した秦という国の医者である医和が、隣の普に派遣されて、普国の王に次のように語ったとされています。
天有六気、降生五味、發為五色、徵為五聲。
淫生六疾。
六気曰陰陽風雨晦明也。
分為四時、序為五節、過則為菑。
陰淫寒疾、陽淫熱疾、風淫末疾、雨淫腹疾、晦淫惑疾、明淫心疾。

天には六気がある。六気が地上に降りてきて五味が生まれ、五声ができた。
そして、六気が多くなり過ぎると六つの病気が生まれる。
六気とは、陰・陽・風・雨・晦・明のことを指している。
六気が分かれて四季ができ、それと一緒に五節ができて、六気が多くなり過ぎると災いを招く。
陰が多くなり過ぎると、寒性の病気が
陽が多くなり過ぎると、熱性の病気が
風が多くなり過ぎると、四肢の病気が
雨が多くなり過ぎると、おなかの病気が
夜の活動が多くなり過ぎる(夜更かしすると)と、心の乱れが
昼の活動が多くなり過ぎると、心労・気疲れが起こる。

 この医和の言葉には、以下のような、東洋医学の基本的な考え方が表現されています。
■気一元論
■五行説
■陰陽論
■天人合一


■気一元論

 生物も無生物も、あらゆる存在は気から生まれ、気によってつながり、感応し合っているという考え方です。
 気とは、流動的で、目に見えない力です。

 戦国時代(紀元前403 年〜紀元前221 年)の思想家である荘子も、著書の『荘子(そうじ)』で次のように述べています。
「人の生は気の聚(あつ)まれるなり。聚まれば生、散ずれば死」(知北遊篇)


□気・血・水

 生命活動する上で必要な生理的なものとして、気・血・水(津液)があります。気・血・水が過不足なく全身を巡っていれば健康で、そうでなければ病気になります。治療で重要なのは、過不足や滞りを発見して、それを正すことです。

○気

 生命エネルギーで、精神の働きや、血と水を動かす力です。
 気のバランスが悪くなると、頭のほうに上がっていきます。これが 気の上衝(じょうしょう)です。
 また、気が停滞しておなかが張って苦しくなることが 気滞(きたい)です。

○血

 西洋医学の血液と同じように、生命活動する上で必要な栄養です。
 血行障害を瘀血(おけつ)といって、その部分は黒ずみ、皮膚にもやもやとして細い血管が集まって見えています。

○水

 血以外の液体、つまり体液成分です。全身を潤しています。
 水分の代謝が円滑ではない状態が、水毒(すいどく)です。咳や痰(痰飲〈たんいん〉)、下痢、軟便、嘔吐、尿量減少あるいは多尿、浮腫(むくみ)、動悸、めまい、耳鳴り、頭痛などの症状を引き起こします。

※「精」は、先天的に備わった「先天の気」と、飲食物の運化によって得られた「後天の気」で、腎にたくわえられている結晶のようなもので、「腎精」とも呼ばれています。

■五行説

 人間を含め、自然界にあるすべてのものを5つに分類しています。
 すべてのものは「木・火・土・金・水」の5つの要素(五行)でできていて、それぞれがお互いに影響を与え合うことで季節や天候などが変化し、この世界が形作られていると考えられています。
 五臓では気などが生み出されたり、ため込まれたりしています。

□五臓

 五行説に基づく、体の機能の分類です。

○肝  疏泄

 気がスムーズに動くように調節します。肝臓の働きに加え、感情や自律神経と関係し、ストレスによる影響を受けます。

○心  血脈・神〈しん〉

 体の働きを統括する司令塔です。心臓の働きに加え、大脳に関わる精神活動(意識、思考、睡眠など)を支えています。

○脾  運化・昇清

 飲食物を消化、吸収して得られた「水穀の気」を運びます。消化吸収を通して生命力を補充する働きをつかさどります。栄養を運び、エネルギーを生み出します。

○肺  宣発・粛降

 「清気」を取り入れます。呼吸の調節機能のほか、皮膚、免疫機能、水分代謝などとも関わりがあります。体を取り巻くバリアのような働きを担っています。

○腎

 水分代謝をコントロールする腎臓の働きに加え、成長・発育・生殖などといった副腎や生殖器の働きも含まれています。
 「腎は水を司り五臓六腑すべての精を蔵す」といわれていて、父母から受け継いだ「先天の精」と食物から得た「後天の精」を蓄えています。

□六腑

 五臓に対応し、表裏の関係にあると同時に、袋のような役割を果たします。「胆・小腸・胃・大腸・膀胱」と、五臓に対応しない三焦を入れて、六腑とされています。



□経絡

 気の通り道で、五臓六腑と全身の各組織をつないでいます。経絡の流れが悪くなると、痛みやしびれといった症状や病気が発生しやすくなります。

十二経脈
肝経 胆経
心経 小腸経
脾経 胃経
肺経 大腸経
腎経 膀胱経
心包経 三焦経
(任脈) (督脈)
 

■陰陽論

 この世界に存在する物も事も、陰と陽の2つに分けられると考えられています。
 日常生活の中で「陽気になった」「陰気な人だ」などといいますが、まさにこのニュアンスです。

陽←      →陰
能動       受動
天         地
春・夏      秋・冬
昼        夜
日        月
男        女
親        子
動         静
表面       内側
浮上       沈下
剛        柔
軽         重
乾燥        湿潤
                        血・水・精


 陰陽は固定されているわけではなく、あらゆるものが陰になったり陽になったり、コロコロと入れ替わって変化します。陰と陽は反発するとともに交わり合っているそうで、なかなか理屈で割り切れません。
 要は、陰と思っていたら時間がたつと陽になることもあるということ。ですから、どちらの状態にあるのかを観察することが重視されています。

■天人合一

 天地つまり大宇宙であり自然界と、人体という小宇宙は、同じ構造であるという考え方です。

 「気功」とは、体内の気を巡らせ、外界の気を取り入れる養生です。

スワイショウ

 繰り返し腕を振る気功です。腕を左右に振るバージョンと前後に振るバージョンがあります。やりやすいバージョンを行いましょう。

○左右に振るバージョン
1 肩幅に足を広げて立ち、全身の力を抜き、ひざを軽く曲げる。
2 背骨を軸にして、腕を体に巻き付けるように、左右にゆったりと振る。
※でんでん太鼓のイメージ

○前後に振るバージョン
1 肩幅に足を広げて立ち、全身の力を抜き、ひざを軽く曲げる
2 腕を肩の高さまで前に持ち上げてから、力を抜いて体の脇へ振り下ろす。

 スワイショウは、どちらのバージョンも、最初は30秒程度から始め、気持ちよく続けられるようになってきたら少しずつ時間を延ばしていくといいでしょう。
 天気のいい日は、屋外で行うと気持ちがいいものです。

スワイショウは太極拳の準備運動で、以下の動画が非常にわかりやすいのでお勧め
■【すぐトレ】太極拳 優美に健康…基本編①

手振り

 手についた水滴を振り払うように、力を抜いて、手を前へとブラブラと振ります。最初は1分程度から始め、気持ちよく続けられるようになってきたら少しずつ時間を延ばしていくといいでしょう。

ツボ

 私たちの体には気の通り道である経絡があります。経絡は、体内の器官と体表をつないでいます。経絡上には、気の流れを表すツボ(経穴)があり、ツボに刺激を与えることで気の流れを調整することができます。

爪もみ

 福田稔(1939~2014年)医師が考案した、自律神経を調整するとされる療法です。手指の爪の生え際の両端(井穴というツボ)を、反対の手の親指と人さし指で挟んで、痛いぐらいの強さで10~20秒もみます。親指、人さし指、中指、小指の爪はもみますが、薬指は交感神経を刺激するということでもみません。足の指も同様に、第4指以外をもみます。



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