腎臓を巡る、長く、曲がりくねった物語 その2 水中国家のエネルギー問題 消化管(初出2024年6月4日、再構成2025年12月1日)
※フリーランスの編集者・ライターである『クラナリ』編集人(バリバリの文系)は、腎臓に関する記事や書籍に携わる機会が多いため、それに関連していろいろと考察しています。素人考えですが。腎臓のシリーズのくせに、今回は消化管についてまとめています。曲がりくねりつつ、後々、腎臓の話になるのです。
人体には、およそ37兆個の細胞があります(以前は60兆個といわれていた)。
人体を水中国家としたら、細胞は国民。それぞれが働いて、国家の維持に努めています。
細胞が働くには、エネルギー(さまざまな栄養素も含む)が必要です。
果たして、エネルギーをどこから得るのでしょうか?
人体の場合は、消化管です。
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| 消化管 |
食べ物にはエネルギーになるものもあれば、全然使えないもの、害を及ぼすものもあります。これらを取捨選択するのも、消化管の仕事なのです。
口腔では、歯でかみ砕き、唾液と混ぜて、食べ物を小さくします。同時に、味で「これは体に入れちゃダメ!」と判断して、ペッと外に出す仕事もしています。
胃は、胃液と混ぜ合わせて食べ物をドロドロになるまで細かくしながら、一時保存しています。
十二指腸は、膵液や胆汁などの消化液と食べ物を混ぜて、小腸から吸収しやすい状態にします。
小腸は、エネルギーを吸収(水も、大部分は小腸で吸収)。
大腸は、エネルギー吸収後の残りかすを便として排泄する準備を行いながら、水を吸収。
そして、肛門は便を体の外に排泄します。
エネルギー(栄養)吸収の場は、小腸の膜です。ここでは、吸収できる大きさに消化された状態で吸収されます。
〇糖質→ブドウ糖、果糖、ガラクトース
〇タンパク質→アミノ酸
〇脂質→コレステロール、中性脂肪(トリアシルグリセロール)
ブドウ糖、果糖、ガラクトース、アミノ酸などは、静脈で肝臓へと送られますが、コレステロールと中性脂肪、そしてこれらに溶ける脂溶性ビタミンはリンパ管という別のパイプラインで運ばれます。
どうして別の経路なのでしょうか?
コレステロールと中性脂肪は、十二指腸で胆汁と出会います。胆汁には界面活性作用、おおざっぱにいえば、食器についたベトベトの油汚れを落とす洗剤のような作用を持っています。
胆汁はコレステロールと中性脂肪を小さく分散させるので、小腸の膜を通過することができます。
そして、タンパク質と結合して、リポタンパク質になります。このときのリポタンパク質が大きいので、直径が8〜20μmの毛細血管を通れません。ですから、直径が15〜75μmの毛細リンパ管で運ばれるのです。
そして、毛細リンパ管→集合していって太いリンパ管→ 左鎖骨下静脈→静脈→心臓→動脈→全身という経路をたどります。
※1μm(マイクロメートル)は、1000分の1mm
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| リポタンパク質(LDL コレステロールとは? その測定法の問題点と解決策は?より) |
よく誤解されるのですが、「小腸で吸収されたエネルギー(栄養)がそのまま細胞に運ばれて、活動に使われる」というわけではありません。
小腸で吸収されたエネルギーは、言ってしまえば、稲、ウシ1頭、ブタ1頭、マグロ1尾みたいなもの。
稲だと、脱穀→もみすり→精米→炊飯という過程を経て、初めて食べられる状態になりますよね。
この一連の過程を行っているのが、肝臓。これが「肝臓は化学工場」なんて呼ばれている理由なのです。
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著/森 真希
祥知出版
〈目次〉
はじめに 1
第1章 縁の下の力持ちとして働く腎臓 17
1-1 水のコントロールセンター兼リサイクルセンター兼ゴミ処理場 17
1-2 進化の歴史の中で発達してきた腎臓 30
1-3 人体の6割を占める水を調整 40
1-4 血液の浄化を担う糸球体 47
第2章 慢性腎臓病になるとどうなる? 65
2-1 患者の割合が増えている慢性腎臓病 66
2-2 タイプ・目的別「慢性腎臓病の本」ガイド 76
2-3 積極的に取り入れられている運動療法 98
2-5 水をこまめに飲んで血流維持 107
第3章 人生会議・共同意思決定という難関 118
3-1 慢性腎臓病と診断されたら考えたいこと 119
3-2 ライフステージで移ろう「自分らしさ」 127
3-3 かかりつけ医が必要なのだが 133
3-4 一人暮らしでも在宅医療が可能に 140
3-5 患者の意思決定を支援する人生会議、往々にして会議はモメる 146
3-6 医療者と患者が一緒に行う共有意思決定も、なかなかに厳しい 154
3-7 患者が人生のゴールを決めておく 159
3-8 恐怖という負の感情と人間の歴史 166
第4章 透析をするという選択 173
4-1 透析を始めると何が起こる? 174
4-2 透析療法と腎移植 188
4-3 死に至る傷病から命を守ってきた透析療法 207
4-4 血液透析での苦痛 226
4-5 透析療法でかかるお金と関係する制度 234
第5章 透析をしないという選択肢 240
5-1 「しない」という決定は取りやめられる 241
5-2 尿毒症と対症療法 251
5-3「自然の麻酔」とも呼ばれている尿毒症 259
5-4 欧米での保存的腎臓療法 265
5-5 精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルペインは医療で癒せるのか 271
5-6 「あの世」について語り合う 276
第6章 透析をやめるという選択肢 282
6-1 透析療法中止で訴訟に至った例 283
6-2 PDラストという選択肢 293
6-3 薬で苦痛を和らげる鎮痛と鎮静 298
第7章 治ろうとする力を引き出す補完代替療法 308
7-1 苦痛を和らげる、古くて新しいセルフケア 309
7-2 気功 314
7-3 冷え取り 340
7-4 リフレクソロジー 350
7-5 ボディワーク 359
7-6 心身医学的療法 379
おわりに 382
主な参考資料 389



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