ニキビを改善させる「洗わない」スキンケア

 「洗顔をするほど肌が美しくなる」と思い込んでいる女性は、けっこう多いものです。
 特にニキビなどのトラブルで悩む人は、洗顔料や石けんを使ってしっかりと顔を洗いがちです。
 私が高校生の頃の話なのですが、ニキビを気にしていた部活の後輩が、学校でも洗顔料を使って何度も顔を洗っていました。
 しかし、ニキビは治らず、いつも顔は真っ赤。

 今の私なら、その女の子にアドバイスできます。
 「顔を洗い過ぎているから、ニキビが悪化しているんだよ」

 洗顔料で皮脂が取り除かれると、皮脂膜が形成されなくなります。
 皮脂と汗が混じり合ってできている皮脂膜は、皮膚をカバーして水分の蒸発などを防いでいるので、皮脂膜がなくなれば乾燥肌になります。
 そして皮膚の表面が硬くなって、毛穴がふさがりやすくなります。
 ふさがった毛穴の中でアクネ桿菌が増殖し、皮膚に炎症が起こってニキビができるのです。

 また、皮脂が極端に減れば、私たちの体の防御機能が働いて、皮脂腺が活発に働いて皮脂が多く分泌されるようになります。
 ふさがった毛穴の中でたくさん分泌された皮脂をエサに、アクネ桿菌が増殖します。
 これまたニキビを悪化させることにつながるわけです。

 ニキビや敏感肌、かゆみなどは、皮脂膜が形成されないことが原因の一つと考えられます。
 それなのに、多くの人が洗顔料などで皮脂を熱心に取り除こうとするのはなぜでしょうか。

 ある業界では、「皮脂を取り除いてから、化粧品で保湿成分を補う」「酸化した皮脂が原因でシミやくすみが発生する」という文言が広告で使われていることがあります。
 あたかも「皮脂は肌にとって邪魔者」という印象を与えています。

 また、消費者もそれを信じ込んでしまうのは、皮脂が原因で起こる皮膚のトラブルがあるからだと推測できます。
 皮脂が分解されてできる過酸化脂質が増えると、皮膚が赤くなったりかゆくなったりする脂漏性皮膚炎が起こります。
 そして前述のニキビも、過剰な皮脂で悪化します。

 しかし、だからといって洗顔料で顔を洗い過ぎれば、皮脂が極端に減って、少しの刺激でもかゆみや赤みといったトラブルを起こすようになります。

 皮脂は皮脂膜の形成だけでなく、皮膚常在菌にも影響を与えます。

 皮膚にすみついている皮膚常在菌の中で代表的なものが表皮ブドウ球菌。
 表皮ブドウ球菌は皮脂や汗を栄養源にして細菌バリアを作り、有害な菌の侵入を防いでいます。
 また、皮脂を分解して皮膚表面を弱酸性に保つことで、病原菌が繁殖できないようにしています。

 洗顔料で皮脂を落とし過ぎると表皮ブドウ球菌が減って、病原菌が繁殖しやすい状態になるわけです。

 皮脂は水で落ちます。
 水で顔を洗った後、白いタオルでふき取ってみてください。しばらくたつと黒ずんでくるはずです。これは皮脂がタオルに移ったからです。
水洗いでじゅうぶん!

 皮膚、なかでも顔の皮膚のトラブルは、心理的なストレスになります。
 私が取材した中で、アトピー性皮膚炎で思春期に引きこもりになってしまったケースがありました。

 「顔を洗顔料で洗わなければ不潔になるのではないか」と思い込んでいる人もいますが、むしろ逆。
 皮膚常在菌のバランスが崩れて病原菌が繁殖するほうが不潔ではないでしょうか。

 ニキビも吹き出物も、洗って落ちるものではありません。
 悪化するのです。
 そして、気になってつい触っていたら、やはり悪化します。
 薬や基礎化粧品を塗るときに触ることも、皮膚に過剰な刺激を与えます。

 どうか自分の皮膚をそっと扱ってください。洗わないことが大事なスキンケアなのです。


文/森 真希(もり・まき)

医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。
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