受診したら処方されるのは当たり前? 見直したい「薬への意識」
2017 年6月に、厚生労働省は『抗微生物薬適正使用の手引き』を公表しました。手引きをもとに、急性気管支炎といったいわゆるかぜなどへの抗菌薬処方を見直すように、国は医師に促しています。
「抗微生物薬」は、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫に対する抗微生物活性を持ち、感染症の治療、予防に使用されている薬剤の総称。抗微生物薬の中でも細菌に対して作用する薬剤は、「抗菌薬」「抗生物質」「抗生剤」と呼ばれています(以降は「抗菌薬」と表記)。
「かぜ症状群の原因になる微生物は80~ 90%がウイルスであると言われています。いわゆる普通のかぜ(感冒)では抗菌薬を内服してもほとんど意味がないということは、多くの医師は知っていると思います」と、とりうみこどもクリニック副院長の鳥海佳代子医師は話していました。
2児の母でもある鳥海医師は、自分の子どもに抗菌薬をほとんど飲ませなかったと、著書『小児科医は自分の子どもに薬を飲ませない』に書いています。
無意味でも薬を出さなければいけないという
医師の葛藤
抗菌薬の使い過ぎで、薬が効かない「耐性菌」が出現することが薬剤耐性の大きな問題点。“特に、免疫力の弱い乳幼児や妊婦、高齢者、また、持病を持つ人は、感染症にかかると重症化しやすいため、耐性菌が広まると命の危険が高まります”と政府広報オンラインのページにも書いてあります。
「薬剤耐性への対策は、抗菌薬が効かない感染症を将来的に発生させないという、公共の利益を守るためのものだといえます。しかしかぜ症状などで受診する患者さんは、自分の体調が悪いという目の前の問題を解消したいのです。
また、『受診したら薬が処方されるものだ』と思い込んでいる患者さんが多いので、公共の利益や診療のあるべき姿と目の前の患者さんの要望の間で、医師は日々葛藤しています」
薬をもらう側の患者の
意識変革も重要
薬の処方については、医師の裁量の範囲が大きいものです。世代間のギャップもあり、若い世代の医師では解熱剤を処方しないこともあると鳥海医師は話していました。
「私も夫も小児科専門医なのですが、薬の処方についての方針は違うところがいくつもあります。私は、この手引きに添った抗菌薬の適正使用が医療現場に速く広がっていってもらいたいと考えていますが、医師それぞれの考え方の違いもあり、一気には進んではいかないかもしれません」
医師も人間。一人ひとりで考え方は異なるし、パーフェクトな医師などいません。抗菌薬の適正使用を進めるには、医師をはじめ医療関係者だけでなく、患者である私たちも知識を蓄える必要があります。
「処方する薬について医師が患者さんに丁寧に説明する努力も必要なのですが、患者さんの意識変革が進んでいかなければ成り立ってはいかないのです」と鳥海医師は語っていました。
鳥海佳代子(とりうみ・かよこ)
とりうみ小児科院長。島根大学医学部卒業。島根大学医学部附属病院小児科や東京女子医科大学病院母子総合医療センターなどでの研修を経て、2000年に日本小児科学会認定小児科専門医の資格を取得。その後、複数の市中病院の小児科に勤務し、小児科専門医としての経験をさらに深める。10年、同じく小児科専門医の夫とともに、とりうみこどもクリニックを開業。「子育て応援の気持ちで」をモットーに日々、診療にあたっている。著書に『小児科医は自分の子どもに薬を飲ませない』(マキノ出版)、『小児科医が教える 子どもが病気のときどうすればいいかがわかる本』(中経出版)がある。
※この記事は、2017 年5月11日に鳥海医師をインタビューした内容をもとに作成しています。最新情報は鳥海医師に直接お尋ねください。
「抗微生物薬」は、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫に対する抗微生物活性を持ち、感染症の治療、予防に使用されている薬剤の総称。抗微生物薬の中でも細菌に対して作用する薬剤は、「抗菌薬」「抗生物質」「抗生剤」と呼ばれています(以降は「抗菌薬」と表記)。
「かぜ症状群の原因になる微生物は80~ 90%がウイルスであると言われています。いわゆる普通のかぜ(感冒)では抗菌薬を内服してもほとんど意味がないということは、多くの医師は知っていると思います」と、とりうみこどもクリニック副院長の鳥海佳代子医師は話していました。
2児の母でもある鳥海医師は、自分の子どもに抗菌薬をほとんど飲ませなかったと、著書『小児科医は自分の子どもに薬を飲ませない』に書いています。
無意味でも薬を出さなければいけないという
医師の葛藤
抗菌薬の使い過ぎで、薬が効かない「耐性菌」が出現することが薬剤耐性の大きな問題点。“特に、免疫力の弱い乳幼児や妊婦、高齢者、また、持病を持つ人は、感染症にかかると重症化しやすいため、耐性菌が広まると命の危険が高まります”と政府広報オンラインのページにも書いてあります。
「薬剤耐性への対策は、抗菌薬が効かない感染症を将来的に発生させないという、公共の利益を守るためのものだといえます。しかしかぜ症状などで受診する患者さんは、自分の体調が悪いという目の前の問題を解消したいのです。
また、『受診したら薬が処方されるものだ』と思い込んでいる患者さんが多いので、公共の利益や診療のあるべき姿と目の前の患者さんの要望の間で、医師は日々葛藤しています」
薬をもらう側の患者の
意識変革も重要
薬の処方については、医師の裁量の範囲が大きいものです。世代間のギャップもあり、若い世代の医師では解熱剤を処方しないこともあると鳥海医師は話していました。
「私も夫も小児科専門医なのですが、薬の処方についての方針は違うところがいくつもあります。私は、この手引きに添った抗菌薬の適正使用が医療現場に速く広がっていってもらいたいと考えていますが、医師それぞれの考え方の違いもあり、一気には進んではいかないかもしれません」
医師も人間。一人ひとりで考え方は異なるし、パーフェクトな医師などいません。抗菌薬の適正使用を進めるには、医師をはじめ医療関係者だけでなく、患者である私たちも知識を蓄える必要があります。
「処方する薬について医師が患者さんに丁寧に説明する努力も必要なのですが、患者さんの意識変革が進んでいかなければ成り立ってはいかないのです」と鳥海医師は語っていました。
鳥海佳代子(とりうみ・かよこ)
とりうみ小児科院長。島根大学医学部卒業。島根大学医学部附属病院小児科や東京女子医科大学病院母子総合医療センターなどでの研修を経て、2000年に日本小児科学会認定小児科専門医の資格を取得。その後、複数の市中病院の小児科に勤務し、小児科専門医としての経験をさらに深める。10年、同じく小児科専門医の夫とともに、とりうみこどもクリニックを開業。「子育て応援の気持ちで」をモットーに日々、診療にあたっている。著書に『小児科医は自分の子どもに薬を飲ませない』(マキノ出版)、『小児科医が教える 子どもが病気のときどうすればいいかがわかる本』(中経出版)がある。
※この記事は、2017 年5月11日に鳥海医師をインタビューした内容をもとに作成しています。最新情報は鳥海医師に直接お尋ねください。

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