「強度近視」で失明も! さまざまな眼病を引き起こす近視リスクは屋外活動で低下
近視が進行すると失明するリスクが高くなる……この事実に「まさか」と驚く人も多いのではないでしょうか。
近視については、「遺伝によるものだから仕方がない」と本人や家族もあきらめがち。また、眼鏡とコンタクトレンズで視力を矯正できることもあり、学校や職場で積極的に予防・抑制に取り組むケースはほとんどありません。
近視を放置しがちな今の風潮に警鐘を鳴らすのが、鳥居秀成医師(慶応義塾大学医学部眼科学教室)です。「日本では近視の人が増え続けているだけでなく、失明や視力障害に至る『強度近視』への進行も増えているのです」と鳥居医師は話していました。
眼球がだ円形に変形して
近視が進む
目をカメラにたとえると、「角膜」はフィルター、「水晶体」はレンズ、「網膜」はフィルムに当たります。そして、遠くの物にピントが合わない状態が近視です。
近視の原因の一つは、水晶体の厚さを調節する「毛様体筋」がうまく働かないことです。長時間にわたって近くの物を見続けた後、遠くの物がぼんやりとしか見えなくなることは、多くの人がすでに経験しているでしょう。
近くにピントが合わせるために、毛様体筋が収縮して水晶体を厚くします。こうした状態が続いて毛様体筋が緩みにくくなり、遠くの物にピントが合わせられないのです。
もう一つの原因は、「眼軸長」が伸びることです。眼軸長とは角膜から網膜までの、眼球の前後方向の長さ。眼軸長が伸びると網膜よりも前方で焦点が結ばれ、網膜にはピンボケのような像が映るのです。
これまで、眼軸長は子どもが成長するとともに伸びて、10歳ぐらいで伸長は止まると考えられてきました。つまりは子どもが10歳ぐらいになれば近視の進行は止まるということです。
ところが、オーストラリアやデンマークなどで行われた研究で、高齢になるまで眼軸長が伸び続けていることがわかってきました。
「私自身も子どもの頃から強度近視で、30代になっても自分の眼軸長が伸びていることを確認しました。近視の進行に注意が必要なのは、子どもだけではないのです」と鳥居医師は語っていました。
日本人の眼軸長は平均約24ミリで、眼軸長が26.5ミリ以上になると「強度近視」に分類されるケースが多くなります。ただ、世界的に統一された基準がなく、「C」のようなランドルト環という記号を使って行う視力検査の結果だけで強度近視かどうかを判断することはありません。
「遺伝だから仕方がない」は
誤りだった
眼軸長が伸びて眼球の形が変わると、網膜に負担がかかり、眼球内の圧力である「眼圧」にも影響が及びます。そのため、強度近視に進行したら、以下の眼病のリスクが高まるのです。
○網膜剥離
網膜がはがれて、視力が低下する病気。糸くずや虫のような物が、視界にもやもやと浮かんで見える「飛蚊症」が、前兆として表れることがある。視細胞が密集している「黄斑部」で網膜剥離が起こった場合、失明に至る危険性が高い。
○緑内障
眼圧が上がって視神経に障害が起こり、視野が狭くなる病気。
○網脈絡膜萎縮
網膜と、網膜の外側にある「脈絡膜(ぶどう膜)」が縮んで、視力が低下する病気。
18歳以上で新たに視覚障害者と認定された2034名を対象に行われた平成17年度の「網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究」では、視覚障害の原因の第5位が強度近視(高度近視)でした。
さまざまな眼病を引き起こす強度近視。これまでは眼軸長が伸びることを防ぐ手段がほとんどなかったため、定期的に眼科を受診して経過を観察するしかありませんでした。
しかし、世界各国の研究で、屋外での活動が近視の進行を抑制するとわかってきました。さらに鳥居医師の研究で、屋外での活動が近視の進行を抑制するメカニズムも解明されてきています。
「近視には遺伝が関係していますし、読書や勉強などで近くの物を長時間見続けると近視の進行を促します。
しかし、屋外活動の時間を長くすることで、近くの物を見る時間が長くても近視のリスクが低くなることが臨床研究で報告されています。
また、近年、爆発的に近視人口が増えていることから、遺伝以上に環境的な原因が近視に関係していると考えられるのです」
スマートフォンやゲーム機などの電子機器が大人だけでなく子どもにも広く普及しているのが現状。近視の進行を防ぐために、屋外活動の時間を作ってほしいと話していました。
いったん眼軸長が伸びてしまったら、短くすることはできません。失明に至る重篤な眼病を防ぐためにも、近視の予防・進行抑制を心がけたいものです。
※この記事は、2017年7月19日に鳥居医師をインタビューした内容をもとに作成しています。最新情報は鳥居医師に直接お尋ねください。
近視については、「遺伝によるものだから仕方がない」と本人や家族もあきらめがち。また、眼鏡とコンタクトレンズで視力を矯正できることもあり、学校や職場で積極的に予防・抑制に取り組むケースはほとんどありません。
近視を放置しがちな今の風潮に警鐘を鳴らすのが、鳥居秀成医師(慶応義塾大学医学部眼科学教室)です。「日本では近視の人が増え続けているだけでなく、失明や視力障害に至る『強度近視』への進行も増えているのです」と鳥居医師は話していました。
眼球がだ円形に変形して
近視が進む
目をカメラにたとえると、「角膜」はフィルター、「水晶体」はレンズ、「網膜」はフィルムに当たります。そして、遠くの物にピントが合わない状態が近視です。
近視の原因の一つは、水晶体の厚さを調節する「毛様体筋」がうまく働かないことです。長時間にわたって近くの物を見続けた後、遠くの物がぼんやりとしか見えなくなることは、多くの人がすでに経験しているでしょう。
近くにピントが合わせるために、毛様体筋が収縮して水晶体を厚くします。こうした状態が続いて毛様体筋が緩みにくくなり、遠くの物にピントが合わせられないのです。
もう一つの原因は、「眼軸長」が伸びることです。眼軸長とは角膜から網膜までの、眼球の前後方向の長さ。眼軸長が伸びると網膜よりも前方で焦点が結ばれ、網膜にはピンボケのような像が映るのです。
これまで、眼軸長は子どもが成長するとともに伸びて、10歳ぐらいで伸長は止まると考えられてきました。つまりは子どもが10歳ぐらいになれば近視の進行は止まるということです。
ところが、オーストラリアやデンマークなどで行われた研究で、高齢になるまで眼軸長が伸び続けていることがわかってきました。
「私自身も子どもの頃から強度近視で、30代になっても自分の眼軸長が伸びていることを確認しました。近視の進行に注意が必要なのは、子どもだけではないのです」と鳥居医師は語っていました。
日本人の眼軸長は平均約24ミリで、眼軸長が26.5ミリ以上になると「強度近視」に分類されるケースが多くなります。ただ、世界的に統一された基準がなく、「C」のようなランドルト環という記号を使って行う視力検査の結果だけで強度近視かどうかを判断することはありません。
「遺伝だから仕方がない」は
誤りだった
眼軸長が伸びて眼球の形が変わると、網膜に負担がかかり、眼球内の圧力である「眼圧」にも影響が及びます。そのため、強度近視に進行したら、以下の眼病のリスクが高まるのです。
○網膜剥離
網膜がはがれて、視力が低下する病気。糸くずや虫のような物が、視界にもやもやと浮かんで見える「飛蚊症」が、前兆として表れることがある。視細胞が密集している「黄斑部」で網膜剥離が起こった場合、失明に至る危険性が高い。
○緑内障
眼圧が上がって視神経に障害が起こり、視野が狭くなる病気。
○網脈絡膜萎縮
網膜と、網膜の外側にある「脈絡膜(ぶどう膜)」が縮んで、視力が低下する病気。
18歳以上で新たに視覚障害者と認定された2034名を対象に行われた平成17年度の「網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究」では、視覚障害の原因の第5位が強度近視(高度近視)でした。
さまざまな眼病を引き起こす強度近視。これまでは眼軸長が伸びることを防ぐ手段がほとんどなかったため、定期的に眼科を受診して経過を観察するしかありませんでした。
しかし、世界各国の研究で、屋外での活動が近視の進行を抑制するとわかってきました。さらに鳥居医師の研究で、屋外での活動が近視の進行を抑制するメカニズムも解明されてきています。
「近視には遺伝が関係していますし、読書や勉強などで近くの物を長時間見続けると近視の進行を促します。
しかし、屋外活動の時間を長くすることで、近くの物を見る時間が長くても近視のリスクが低くなることが臨床研究で報告されています。
また、近年、爆発的に近視人口が増えていることから、遺伝以上に環境的な原因が近視に関係していると考えられるのです」
スマートフォンやゲーム機などの電子機器が大人だけでなく子どもにも広く普及しているのが現状。近視の進行を防ぐために、屋外活動の時間を作ってほしいと話していました。
いったん眼軸長が伸びてしまったら、短くすることはできません。失明に至る重篤な眼病を防ぐためにも、近視の予防・進行抑制を心がけたいものです。
※この記事は、2017年7月19日に鳥居医師をインタビューした内容をもとに作成しています。最新情報は鳥居医師に直接お尋ねください。

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