悪質クレーマーやモンスターペアレントの背景に「パーソナリティ障害」? その3つのタイプ

 仕事やボランティアなど多くの人が集まって活動するときに、次のような態度を取る人に振り回されて、困り果てた経験はないでしょうか。

□グループのリーダーなど、人の上に立って注目を集めるような立場になりたがる。
□具体性や裏付けが乏しいハウツー本などを信じ込み、その本に書かれていることを周囲にも強要する。
□指示や要求がどんどんエスカレートする。
□率先してルールを決めるが、自分はさまざまな言い訳をして守らない。
□自分の思いどおりに周囲の人間をコントロールしようとし、できなければ怒りを爆発させる。
□些細なことをひどく気にして、絶えず周囲に確認する。
□相手によって、コロコロと態度を変える。目上や見知らぬ人などには過剰なまでに親切・丁寧に振る舞い、目下や部下に当たる人にはハラスメント的な行為をする。
□他人を傷つけたことへの罪悪感が薄い。当事者意識が低い。

 こうした項目に当てはまる人物は、「パーソナリティ障害」の可能性が高いといえます。
 最近ニュースを騒がせている悪質クレーマーやモンスターペアレント、虐待する親などにも共通する特徴があることから、こうした人々もパーソナリティ障害かもしれません。

 大きな問題は、周囲を振り回している当の本人が、決して満たされてはいないこと。生きづらさを抱えながら、誰も幸せになれない状況を作り出しています。

 パーソナリティ障害の研究は進んでいるようで、多数の解説書が出版されています。パーソナリティ障害の人への対応として、解説書で共通していたのは、その場しのぎの曖昧な言葉でごまかさないこと。そして、パーソナリティ障害の人からの要求に対し、できること・できないことを明確に示すことでした。

 2009年にアメリカで行われた調査によれば、10年で「自己愛性パーソナリティ障害」の発生率は2倍以上に増加している。日本でも増えつつあると予想できます。


パーソナリティ障害には
3つのタイプがある

「パーソナリティ」とは、仮面という意味であるラテン語の「ペルソナ(persona)」が語源。パーソナリティとは、文化や社会、人間関係などの影響を受けて形作られるものの見方や振る舞い方などで、日本語では「人格」に当たります。

 『パーソナリティ障害 正しい知識と治し方』(監修/市橋秀夫、講談社)では、パーソナリティ障害をわかりやすく、以下の3つのタイプに分けて説明されています。

○Aタイプ:風変わりな人
妄想性パーソナリティ障害 ……疑り深く、被害者意識が強い
シゾイドパーソナリティ障害……孤独を愛するように見えるが、他人と交流できないことに苦痛を感じている場合がある
統合失調型パーソナリティ障害 ……感情の幅が狭く、奇妙な思い込みを持つ

○Bタイプ:激しい人
演技性パーソナリティ障害 ……注目を集めたがって大げさな話し方をし、ウソをつくこともある
反社会性パーソナリティ障害 ……無責任・無計画で、人をだますことに抵抗がない → サイコパス(諸説あり)
境界性パーソナリティ障害 ……不安的で極端な人間関係になる
自己愛性パーソナリティ障害……他人からの評価に強くこだわり、「すごい自分」しか認められない

○Cタイプ:不安な人
回避性パーソナリティ障害 ……批判を恐れ、失敗して非難されるリスクを避けるために引っ込み思案になる
依存性パーソナリティ障害 ……何事にも受け身で、自分で判断できない
強迫性パーソナリティ障害 ……合理性のないルールにこだわり、自分にも他人にも厳しい

母子並行治療が
効果を発揮した例も

こうしたパーソナリティ障害の陰に、「発達障害が隠れているケースが多いといわれています」と『パーソナリティ障害 正しい知識と治し方』に書かれています。
 それはパーソナリティ障害である本人だけでなく、親が発達障害である場合も少なくないようです。
 パーソナリティは、赤ちゃんの時期からはぐくまれます。そして成長とともに等身大の自分が育っていくことで、状況に応じて振る舞ったり、気持ちを切り替えたりできるようになります。

 自閉症スペクトラムなどの発達障害の子どもについては、一人遊びを好むなど、親との愛着関係ができにくくなりがちです。
 同様のことは、発達障害の傾向がある親の側にも当てはまるでしょう。対人関係に消極的だったり、子どもの気持ちをくみ取ることが苦手だったりすることから、自分の子どもとも良好な愛着関係ができにくい場合があるのです。

 パーソナリティ障害のメカニズムは複雑ですが、あえて簡単に図式化すると以下のような形になります。

生まれもった要因(発達障害などの素質的要因)+環境による要因(親、友達、教師、仕事仲間、メディアなどの後天的な要因)→パーソナリティ障害

 『発達障害のいま』(著/杉山登志郎、講談社)には「大多数の発達障害において、もっとも確実な原因が遺伝的なものであることは、一九八〇年代にはすでにはっきりしていた」と書かれていました。
 著者の杉山医師は、子どもの患者の付き添いに来ている親にも、未診断の大人の発達障害が隠れている場合が少なくないことに気づきました。母子並行治療が効果を示した例が、この本では詳しく紹介されています。

 重ねて書きますが、記事の冒頭で紹介した「周囲を困らせる人」は「生まれつきだから仕方がない」と断定するのは早計
 彼らが社会的に適応できないような振る舞いをするのは、環境による要因、もしかしたら周囲にいる私たちの言動も関係しているのかもしれません。

 この件については、以下の記事に詳しく書きます。
〇「パーソナリティ障害」が傾聴で悪化することも!「いい方向へ変えよう」と働きかけるのはNG
https://sceltadelmetodo.blogspot.com/2019/03/ng.html






文/森 真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。
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