データの一部だけを伏せて薬の副作用を糾弾するメディア
薬の功罪を天秤にかけるか。あるいは、功の部分だけをもてはやしたり、罪を糾弾したりするばかりか……
多くのメディアが後者だと思います。
雑誌も消費者に買ってもらってナンボの世界。
どぎつく、極端な方向に話を持っていきたがる傾向があるのは、私自身にも当てはまります。
同じ穴の狢だから、『週刊新潮』2017年 9月14 日号の「漢方薬の大嘘」という記事に、ある種の“「におい”を感じたのかもしれません。
以前、“「漢方の大嘘」の大嘘”という原稿を書いた理由は、ここにありました。
「漢方薬の大嘘」をざっと読んだ後、監修した大学名誉教授の著書を2冊読みました。
1冊目のあとがきに、この名誉教授が加齢性黄斑変性を予防するために、ブルーベリーの健康食品を摂取した話が掲載されています。
健康食品の添加物が原因で、名誉教授は湿疹に悩まされるようになったとのこと。
その怒りがありありと伝わってくるあとがきでした。
「なるほど、名誉教授のご立腹が、この本を書く原動力だったのね」と私は思った次第です。
2冊の著書には、これでもかというほど大量の、健康食品やサプリメント、漢方薬の増悪例が収載されています。
ポイントは、名誉教授自身が研究したり、臨床で健康食品やサプリメント、漢方薬を使ったりしていないこと。
例えば、「漢方薬の大嘘」の記事でも危険性が指摘されていた黄芩。
名誉教授の著書を読んだところ、以下の論文が引用されていました。
「100μgベルベリンを1日1回,交配の前後に2~14日間雌マウスに筋肉内投与すると,胚盤胞への発生率が有意に低下するとともに,妊娠満期における胎子数が有意に減少した.」というデータを生体内( in vitro)での影響としてしまうのか……と私はガックリ。
マウスに黄芩を飲ませた研究を引用してほしいと思った次第です。
また、元の論文が「漢方薬 (黄連解毒湯) と抗生物質 (Cefatrizine) の併用により急性間質性肺炎をきたした1例」というタイトルなのに、本での引用部分では抗生物質だけが伏せられていることもありました。
そもそも漢方薬の副作用についての論文には、患者のみぞおち周辺がどんな状態だったのか、舌がどんな状態だったのか、どんな夢を見たりするのかといったことが書かれていません。
東洋医学的な診断を無視して、西洋医学的な観点だけで副作用に言及しているわけです。
東洋医学的な診断を無視して、西洋医学的な観点だけで副作用に言及しているわけです。
そのため、「鯨を食べるなんて野蛮」と非難しているレベルの記事だと、「漢方の大嘘」については思いました。
文/森 真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。

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