糖質制限に最適メニューを探して血糖値を測るドクター
コンビニ、牛丼屋、回転ずし、ハンバーガーショップなどで食事をしては血糖値を測定。自分の体を実験台に、糖質制限中でも外食できることを確認しているのが、「亀ドク」こと亀川寛大(かめかわ かんだい)医師です。
亀ドクは熊本市内にある「なごみクリニック」で院長を務めています。患者の診療を行って糖質制限を指導するかたわら、血糖測定器を持参してさまざまな店の食べ歩きを続けているわけです。
今、注目を集めている亀ドクの取り組みと、その背景を調べてみました。
「糖質を制限するだけなんて
安直すぎます」
「私たちが医学部の学生時代に教えられたダイエット法は、カロリー制限です。カロリー制限で減量できないのはわかっているのに、指導するなんて詐欺ですよね」
内臓脂肪型の肥満や高血糖、脂質異常症などの患者がダイエットに失敗するのは、本人の意志ではなく方法が間違っていたからだと亀ドクは指摘します。また、これまでの臨床経験から、健康な状態と血液検査の基準値があまりにもかけ離れていることを、亀ドクは実感してきました。
今の医学の教科書に載っている内容をそのまま患者に指導しても、病気は治せない……こうした危機感から、亀ドクは自ら糖質制限を実践しながら、糖質制限の啓蒙活動に力を入れているのでしょう。
糖質制限はメディアでも取り上げられたことで普及しましたが、誤解も少なくありません。「『糖質制限ってご飯を抜くだけですよね?』と言う人もいますが、大間違いです。糖質を制限するだけなんて安直すぎます」と亀ドクは語っていました。
必須アミノ酸と必須脂肪酸は、人間の体内で合成できないため、食事から摂取する必要があります。これらを含むたんぱく質と脂肪、それからビタミンやミネラルを必要な分だけ体に取り入れるためには、糖質が多い食品を食べる余裕などないのです。
そもそも人間は食品で糖質を摂取する必要はありません。もちろん、体にとって糖質は重要なエネルギー源の1つ。脳や網膜では、エネルギーを糖質でまかなっています。このように重要な糖質だからこそ、人間の体内には他の栄養素から糖質を作り出す仕組みが備わっているのです。
「日本では、糖尿病の合併症にかかる人の割合が増えている可能性が極めて高いという指摘もあります。糖質を無視してカロリーにばかりこだわった食事療法では、糖尿病を改善できないという証拠ではないでしょうか」
コンビニおでんは
だしを飲まなければ問題ない
亀ドクは糖質制限を指導して、肥満や糖尿病の改善などで効果を確認しています。その一方で、忙しいビジネスマンや一人暮らしの高齢者などは自炊が難しく、糖質制限を取り入れにくいという声もありました。そこで、コンビニ食や外食で糖質制限ができないか、亀ドクは自らの体を使って確認し始めたのです。
例えば、冬の定番であるコンビニのおでん。亀ドクはファミリーマートで以下の10品を選んで、血糖値を計測しました。
①大根…炭水化物量 1.3g
②卵…炭水化物量 0.5g
③こんにゃく…炭水化物量 2.1g
④白滝…炭水化物量 2.9g
⑤がんも…炭水化物量 6.0g
⑥だし巻き玉子…炭水化物量 5.9g
⑦肉いなり…炭水化物量 3.1g
⑧牛すじ…炭水化物量 0.1g
⑨鶏つくね…炭水化物量 5.0g
⑩しゅうまい巻き…炭水化物量 6.8g
その結果、血糖値は次のように変化しました。
食前 108mg/dl
食後15分 101mg/dl
食後30分 112mg/dl
食後45分 142mg/dl
食後60分 127mg/dl
食後90分 116mg/dl
ちなみに、おでんのだし400mlを飲んだときは、次のように変化しています。
食前 87mg/dl
食後15分 115mg/dl
食後30分 110mg/dl
食後45分 119mg/dl
食後60分 109mg/dl
食後90分 97mg/dl
この実験から、亀ドクはコンビニのおでんを食べるときの基準を提示しています。
●だしは飲まない
●だしが染み込みにくい食材を選ぶ
●低糖質の食材を選ぶ
亀ドクは、ほかのコンビニおでんでも血糖値の変化を調べています。さらに、牛丼屋、回転ずし、ハンバーガーショップなどで、モリモリ食事をしながら実験を行っています。詳しくは、亀ドクの「血糖値が上がらないお店、メニュー」を参照してください。https://www.facebook.com/%E4%BA%80%E3%83%89%E3%82%AF%E3%81%AE%E8%A1%80%E7%B3%96%E5%80%A4%E3%81%8C%E4%B8%8A%E3%81%8C%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%8A%E5%BA%97%E3%83%A1%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%BC%E5%85%A8%E5%9B%BD%E5%85%B1%E9%80%9A-1898540380414707/
亀川寛大(かめかわ かんだい)
1972年、鹿児島県生まれ。1991年、宮崎医科大学(現 宮崎大学)医学部入学。1998年、宮崎医科大学第一外科学研修医。1999年、鹿児島市医師会病院医局員。2003年、宮崎県延岡市介護老人保健施設施設長。2008年 宮崎県延岡市西階クリニック院長・副院長。2017年6月より、なごみクリニック院長。糖質制限指導、ファスティング指導を行うほか、熊本を中心に全国各地で糖質制限セミナーを実施している。
※この記事は、2017年10月26日時点のものです。最新情報は亀川医師に直接お尋ねください。
亀ドクは熊本市内にある「なごみクリニック」で院長を務めています。患者の診療を行って糖質制限を指導するかたわら、血糖測定器を持参してさまざまな店の食べ歩きを続けているわけです。
今、注目を集めている亀ドクの取り組みと、その背景を調べてみました。
「糖質を制限するだけなんて
安直すぎます」
「私たちが医学部の学生時代に教えられたダイエット法は、カロリー制限です。カロリー制限で減量できないのはわかっているのに、指導するなんて詐欺ですよね」
内臓脂肪型の肥満や高血糖、脂質異常症などの患者がダイエットに失敗するのは、本人の意志ではなく方法が間違っていたからだと亀ドクは指摘します。また、これまでの臨床経験から、健康な状態と血液検査の基準値があまりにもかけ離れていることを、亀ドクは実感してきました。
今の医学の教科書に載っている内容をそのまま患者に指導しても、病気は治せない……こうした危機感から、亀ドクは自ら糖質制限を実践しながら、糖質制限の啓蒙活動に力を入れているのでしょう。
糖質制限はメディアでも取り上げられたことで普及しましたが、誤解も少なくありません。「『糖質制限ってご飯を抜くだけですよね?』と言う人もいますが、大間違いです。糖質を制限するだけなんて安直すぎます」と亀ドクは語っていました。
必須アミノ酸と必須脂肪酸は、人間の体内で合成できないため、食事から摂取する必要があります。これらを含むたんぱく質と脂肪、それからビタミンやミネラルを必要な分だけ体に取り入れるためには、糖質が多い食品を食べる余裕などないのです。
そもそも人間は食品で糖質を摂取する必要はありません。もちろん、体にとって糖質は重要なエネルギー源の1つ。脳や網膜では、エネルギーを糖質でまかなっています。このように重要な糖質だからこそ、人間の体内には他の栄養素から糖質を作り出す仕組みが備わっているのです。
「日本では、糖尿病の合併症にかかる人の割合が増えている可能性が極めて高いという指摘もあります。糖質を無視してカロリーにばかりこだわった食事療法では、糖尿病を改善できないという証拠ではないでしょうか」
コンビニおでんは
だしを飲まなければ問題ない
亀ドクは糖質制限を指導して、肥満や糖尿病の改善などで効果を確認しています。その一方で、忙しいビジネスマンや一人暮らしの高齢者などは自炊が難しく、糖質制限を取り入れにくいという声もありました。そこで、コンビニ食や外食で糖質制限ができないか、亀ドクは自らの体を使って確認し始めたのです。
例えば、冬の定番であるコンビニのおでん。亀ドクはファミリーマートで以下の10品を選んで、血糖値を計測しました。
①大根…炭水化物量 1.3g
②卵…炭水化物量 0.5g
③こんにゃく…炭水化物量 2.1g
④白滝…炭水化物量 2.9g
⑤がんも…炭水化物量 6.0g
⑥だし巻き玉子…炭水化物量 5.9g
⑦肉いなり…炭水化物量 3.1g
⑧牛すじ…炭水化物量 0.1g
⑨鶏つくね…炭水化物量 5.0g
⑩しゅうまい巻き…炭水化物量 6.8g
その結果、血糖値は次のように変化しました。
食前 108mg/dl
食後15分 101mg/dl
食後30分 112mg/dl
食後45分 142mg/dl
食後60分 127mg/dl
食後90分 116mg/dl
ちなみに、おでんのだし400mlを飲んだときは、次のように変化しています。
食前 87mg/dl
食後15分 115mg/dl
食後30分 110mg/dl
食後45分 119mg/dl
食後60分 109mg/dl
食後90分 97mg/dl
この実験から、亀ドクはコンビニのおでんを食べるときの基準を提示しています。
●だしは飲まない
●だしが染み込みにくい食材を選ぶ
●低糖質の食材を選ぶ
亀ドクは、ほかのコンビニおでんでも血糖値の変化を調べています。さらに、牛丼屋、回転ずし、ハンバーガーショップなどで、モリモリ食事をしながら実験を行っています。詳しくは、亀ドクの「血糖値が上がらないお店、メニュー」を参照してください。https://www.facebook.com/%E4%BA%80%E3%83%89%E3%82%AF%E3%81%AE%E8%A1%80%E7%B3%96%E5%80%A4%E3%81%8C%E4%B8%8A%E3%81%8C%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%8A%E5%BA%97%E3%83%A1%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%BC%E5%85%A8%E5%9B%BD%E5%85%B1%E9%80%9A-1898540380414707/
亀川寛大(かめかわ かんだい)
1972年、鹿児島県生まれ。1991年、宮崎医科大学(現 宮崎大学)医学部入学。1998年、宮崎医科大学第一外科学研修医。1999年、鹿児島市医師会病院医局員。2003年、宮崎県延岡市介護老人保健施設施設長。2008年 宮崎県延岡市西階クリニック院長・副院長。2017年6月より、なごみクリニック院長。糖質制限指導、ファスティング指導を行うほか、熊本を中心に全国各地で糖質制限セミナーを実施している。
※この記事は、2017年10月26日時点のものです。最新情報は亀川医師に直接お尋ねください。
文/森 真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。
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