過保護が原因? ライフスキルに乏しく結婚も就職も放棄する若者たち

 過保護かどうかに明確な基準はありませんが、「子育てで後悔したくない」という動機によって次のような行動を取る親は少なくありません。
○子どもの課題に介入する
○子どもに決定権を与えない

 こうした親の行動は、少子化や労働人口の減少という、私たちが現在直面している問題と無関係ではないようです。

「最近の学生は学業成績は優秀だが
基本的なライフスキルに乏しい」

 少子化は日本だけで起こっているのではありません。「先進諸国病」とも呼ばれ、欧米でも進んでいるのです。

 少子化に関係すると思われるアメリカの研究結果が『Child Development』2017年9月19日オンライン版に掲載されていましたた。
 「最近の若者は成長が遅れているのではないか」と、研究を行ったサンディエゴ州立大学心理学のジーン・トウェンギ教授らは指摘しています。

 この研究では、1976~2016年にアメリカの13~19歳の男女約830万人を対象に実施された調査のデータを分析。その結果は下記のとおりです。
○12年生(日本の高校3年生)のアルバイト経験者の割合
1990年代 72~73% → 2010年代 55%
○12年生(日本の高校3年生)のデート経験者の割合
1990年代 81~84% → 2010年代 63%
○9年生(日本の中学3年生)のセックス経験者の割合
1990年代 38% → 2010年代 29%
○12年生(日本の高校3年生)のセックス経験者の割合
1990年代 64~68% → 2010年代 62%
○10年生(日本の高校1年生)の飲酒経験者の割合
1990年代 71~72% → 2010年代 51%
○12年生(日本の高校3年生)の飲酒経験者の割合
1990年代 81% → 2010年代 67%

 20年前と比べ、働いたり恋愛をしたり酒を飲んだりという「大人の経験」をした若者が減少しています。こうした傾向は性別や人種、社会経済的状況、居住地域などに関係なく認められました。

 トウェンギ教授は「中高生の成長のスピードが遅くなっているのが良いことなのか、悪いことなのかは、受け止め方次第だ」としています。ただ、「自立心を養う経験が全然ない状態で大学に進学し、就職することになる可能性がある」と指摘してました。

 注目すべきは、今回の研究報告を受け、アメリカのニューヨーク大学ランゴン医療センター小児精神科のヤミリス・ディアス博士が出したコメント。

 「確かに最近の学生は学業成績は優秀だが、計画を立てたり、時間を管理したり、問題を解決したりするといった基本的なライフスキルに乏しい者が多い」

子どものライフスキルを
はぐくみたい

 ライフスキルとは、自分で何を行うのか決めたり、周囲とコミュニケーションを取って対人関係を築いたりする能力を指します。
 このライフスキルの低下が、少子化や労働人口の減少と大いに関係するようです。

 まず、異性とコミュニケーションを取ろうとしなければ、恋愛に発展することはありません。ましてやセックスは、互いの愛情を確認する究極のコミュニケーション。セックスが面倒くさくなってしまえば結婚まで至りにくく、当然、少子化は進みます。

 加えて、仕事は学校の勉強とは違って、決められたカリキュラムをこなすわけではありません。突発的な問題が持ち上がるのが常。そのときに混乱したり、放り投げてしまったりしたら、仕事は成立しません。
 問題を解決するライフスキルが乏しいために仕事を辞めてしまう人が増えれば、労働人口は減ることになります。

 では、日本の親たちではどうでしょうか。娘が連れてきた恋人の見た目(太り気味、居住地が外国など)が気に入らないという理由で結婚に猛反対するケース、就職活動で苦戦している子どもに「だったら、もうしばらく勉強すればいいじゃない」などと話すケースを、私は見聞きしていました。

 子どもの決定権を奪い、問題を解決する意欲を捨てさせようとする行動ではないでしょうか。エスカレートしたら「毒親」と判断されても仕方ありません。

 自分の子どもだけでなく、少子高齢化が進む日本の将来のことも考えて、子ども自身に問題を解決させ、決定権と責任も与えて、ライフスキルを育てるように親は心がけたいものです。もちろん、私自身も目下修行中です。



文/森 真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。

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