ぜんそくでも金メダル! 病気をネガティブにとらえないアスリートの強さ

 スポーツなどで体温が上がると、発作的な激しいセキや呼吸困難が誘発されます。そのため、ぜんそくの子どもにまったく運動をさせない家庭もあり、「ぜんそくの人はひ弱」というイメージを持たれることが多いのではないでしょうか。

 しかし、ぜんそくを患っているアスリートは少なくありません。フィギュアスケート選手の羽生結弦さんをはじめ、元スピードスケート選手である清水宏保さん、「霊長類最強女子」と呼ばれていた元レスリング選手の吉田沙保里さん、元柔道選手の谷本歩実さんなど、ゴールドメダリストたちが自身のぜんそくを公表しています。

 ぜんそくの発作は苦しいし、眠れません。家族も周囲も心配します。しかし、適切な治療と体調管理、そして本人の不断の努力によって過酷なスポーツな世界でも結果を残している選手たちがいるのです。


ぜんそくは
子どもだけの病気ではない
 
 ぜんそくは、空気の通り道である気道の炎症が続き、気道が狭くなって呼吸が苦しくなる状態が繰り返し起こる病気です。代表的な症状として、激しいセキ、タン、呼吸するときに鳴るヒューヒュー、ゼーゼーといった音、息切れ、呼吸困難が挙げられます。夜間や早朝、梅雨時、台風シーズンなどに、ぜんそくの症状は現れやすいとされています。

 日本呼吸器学会によると、日本では子どもの8~14%、大人の9~10%がぜんそくです。ぜんそくは子どもの病気と思われがちですが、大人も10人に1人の割合で患者がいるわけです。

 小児ぜんそくは2~3歳までに60~70%が、6歳までに80%以上が発症する。その60~80%が、思春期までに症状が消えるといわれています。成人ぜんそくについては、小児ぜんそくが続いていたり再発したりするケースのほかに、成人になって初めて症状が出る「成人発症ぜんそく」があります。

 小児と成人とは原因が異なることも少なくありません。小児ぜんそくの70~90%がハウスダスト、ダニ、花粉などといった「アレルゲン」が特定されるアレルギー反応ですが、成人ぜんそくの場合はアレルゲンが特定されず、慢性化しやすいといわれているのです。

男性のほうが
「ぜんそく死」のリスクが高い

 成人発症ぜんそくについては、60%以上が40~60歳代に起こります。「子どもの頃にぜんそくではなかったから、自分は大丈夫だ」と思い込まずに、以下の症状に悩まされているのならば呼吸器科を受診することをお勧めします。特に男性については「ぜんそく死」のリスクも高いのです。

□セキが長引く
□夜間や早朝に激しくせき込む
□夜間に息苦しくなって目覚めることがある
□呼吸をするときにヒューヒュー、ゼーゼーといった音がする
□タンが絡んで排出しにくい

 ぜんそくの治療には、気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬や、ぜんそく発作を和らげる吸入β2刺激薬などが使われています。

 アスリートたちも薬で症状をコントロールしながら競技を続けてきたはずです。ぜんそくだけでなく、さまざまな試練も経たからこそ、現在のすばらしいパフォーマンスがあるのでしょう。そんなアスリートを応援していきたいと思います。


文/森 真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。
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