経血は子宮からの出血。だから「女性は生理で毎月生まれ変わる」わけではない
「生理は、1カ月かけてたまった古い血が出てくるもの」
「生理で女性は生まれ変わる」
「生理は最高のデトックス」
ネット上には、このような意見が珍しくないのですね。驚きました。
現在は小学校で生理(月経)について教えているそうですが、間違いなく、学校ではそのように話題は出ていません。
経血は出血。ですから経血が多すぎたり(過多月経)、生理中に痛みを伴ったり(生理痛)するのは、体に負担がかかっている証拠です。
過多月経や生理痛を伴う子宮内膜症の女性が増えていて、10人に1人の割合でいるといわれています。
「痛くても仕方がない」と放置したり、「古い血が出るのだからデトックス効果がある」と勘違いしたりせずに、生活を見直す必要があるのではないでしょうか。
経血量の正常値は
1回の生理で大さじ3程度
胎児を育てる子宮の内側には、子宮内膜があります。子宮内膜の表面は「機能層」、深部の1mm程度の層は「基底層」と呼ばれます。
この記事では、機能層を子宮内膜と呼ぶことにしましょう。
女性ホルモンの変化によって、子宮内膜はふかふかのスポンジ状に厚くなっていき、排卵後の黄体期に子宮内膜全体の厚さは8mm程度になります(もちろん、個人差があります)。妊娠しなければ、子宮内膜はははがれ落ちます。そのときに、子宮内膜の中を通る血管が裂けて出血をするのです。
「生理で女性は生まれ変わる」
「生理は最高のデトックス」
ネット上には、このような意見が珍しくないのですね。驚きました。
現在は小学校で生理(月経)について教えているそうですが、間違いなく、学校ではそのように話題は出ていません。
経血は出血。ですから経血が多すぎたり(過多月経)、生理中に痛みを伴ったり(生理痛)するのは、体に負担がかかっている証拠です。
過多月経や生理痛を伴う子宮内膜症の女性が増えていて、10人に1人の割合でいるといわれています。
「痛くても仕方がない」と放置したり、「古い血が出るのだからデトックス効果がある」と勘違いしたりせずに、生活を見直す必要があるのではないでしょうか。
経血量の正常値は
1回の生理で大さじ3程度
胎児を育てる子宮の内側には、子宮内膜があります。子宮内膜の表面は「機能層」、深部の1mm程度の層は「基底層」と呼ばれます。
この記事では、機能層を子宮内膜と呼ぶことにしましょう。
女性ホルモンの変化によって、子宮内膜はふかふかのスポンジ状に厚くなっていき、排卵後の黄体期に子宮内膜全体の厚さは8mm程度になります(もちろん、個人差があります)。妊娠しなければ、子宮内膜はははがれ落ちます。そのときに、子宮内膜の中を通る血管が裂けて出血をするのです。
子宮から腟を通って、子宮内膜と血液が排出されることを生理と呼んでいます。
子宮内膜が厚くなるのは、受精卵を着床させる(妊娠)ためです。ですから、子宮内膜は「赤ちゃんのベッド」と表現されることもあります。妊娠をすれば、母体と胎児をつなぐ胎盤の形成に、子宮内膜の一部が使われます。
子宮の内部を観察する医療器具である子宮鏡を使って、子宮内膜を撮影した写真がネット上にあるのですが、薄いクリームピンクに見えました。当然のことですが、子宮に1カ月かけて血液がたまることはありません。
子宮の大きさは、大人の女性が妊娠していないときではLサイズの鶏卵、妊娠を経験した後では握りこぶし大だといわれています。その内側を覆っている8mm程度の膜がはがれ落ちると考えれば、それほどの量にはなりません。経血量の正常値は、1回(1日ではない)の生理で37~43mlとされています(過多月経臨床治療ガイドライン 2010)。大さじ1は15mlなので、大さじ3程度に当たります。
もしも生理期間中に握りこぶしでは収まらない量の経血があったとしたら、子宮からの出血が止まっていないという異常事態と考えられるでしょう。過多月経はデトックスではありません。
運動・冷え取り・ストレス軽減を
心がけよう
過多月経についてはさまざまな原因がありますが、子宮や卵巣に病気がなくて起こっている場合は、生理がスムーズに進んでいないからと考えられます。
子宮内膜がはがれ落ちるときには、酵素が働いています。酵素によって子宮内膜の組織や血液がサラサラの状態になり、狭い子宮頸管を通って、腟へと排出されます。酵素の働きが悪くなると、子宮内膜がはがれ落ちにくくなり、出血量が増えてしまう可能性が指摘されています。つまり、酵素の働きが関係して、過多月経が起こっていると推測できるのです。
さらに、酵素の働きが悪くなれば、子宮内膜の組織や血液がねっとりした状態になり、狭い子宮頸管を通過しにくくなります。それをなんとか排出させようとして、子宮がギューッと縮むのです。こうして生理痛が起こっていると考えられます。
酵素とは化学反応を促進するたんぱく質で、周囲の温度が低すぎても高すぎても働きが悪くなります。
子宮の内部については、温度が低いために酵素の働きが悪くなる可能性が高いといえます。
子宮の温度が低くなる原因の一つとして、運動不足が挙げられます。筋肉は人体最大の熱産生器官。体を動かさなければ筋肉が衰え、熱が発生しにくくなります。下半身の筋肉量が少なくなっていたら、子宮を含め骨盤に収まっている内臓の温度も下がることになるのです。
加えて、保温性の低下。薄着によって骨盤の周囲が保温されなければ、内臓の温度は維持されません。
強調しておきたいのは、ストレス。強いストレスを受けたり、弱いストレスを長く受け続けたりすると、血流が悪くなります。酸素や栄養素だけでなく体温も血液で運ばれるので、ストレスを受ければ子宮の温度は下がり、酵素の働きが悪くなるでしょう。
対人関係、受験、就職、スポーツ、ダイエットなど、現代の女性は10代の頃からさまざまな形でストレスを受けていることが、生理トラブルの原因になっているように思えてなりません。
なお、婦人科などを受診すると、過多月経や生理痛にはピルが処方されることがほとんどです。ピルとは女性ホルモンの成分が含まれた薬で、生理を止める、言い換えると子宮内膜が厚くなるのを妨げる働きがあります。
ピルについてもさまざまな意見がありますが、合う・合わないがあるのは事実です。個人的な体験ですが、私がピルを飲んだときは特に問題がなかったものの、知人については「明らかに体調が悪そう」と外見が変化するほどに副作用がありました。
過多月経や生理痛などの生理トラブルについては、運動や冷え取り、ピルなど、さまざまな対処法があります。出血が多くなれば貧血を招くので、「たかが生理」と軽く考えずに生活を見直してください。
最後に、母親などの年長の女性が「私もそうだったから、仕方がない」「生理があるから、女って損よね」「生理中でも私はがんばっていた」などと、生理トラブルに悩んでいる女性に言っても百害あって一利なし。ストレスになって症状を悪化させる可能性大なので、やめてほしいものです。
![]() |
女性ホルモンと子宮内膜との関係(日本医師会HPより) |
子宮内膜が厚くなるのは、受精卵を着床させる(妊娠)ためです。ですから、子宮内膜は「赤ちゃんのベッド」と表現されることもあります。妊娠をすれば、母体と胎児をつなぐ胎盤の形成に、子宮内膜の一部が使われます。
子宮の内部を観察する医療器具である子宮鏡を使って、子宮内膜を撮影した写真がネット上にあるのですが、薄いクリームピンクに見えました。当然のことですが、子宮に1カ月かけて血液がたまることはありません。
子宮の大きさは、大人の女性が妊娠していないときではLサイズの鶏卵、妊娠を経験した後では握りこぶし大だといわれています。その内側を覆っている8mm程度の膜がはがれ落ちると考えれば、それほどの量にはなりません。経血量の正常値は、1回(1日ではない)の生理で37~43mlとされています(過多月経臨床治療ガイドライン 2010)。大さじ1は15mlなので、大さじ3程度に当たります。
もしも生理期間中に握りこぶしでは収まらない量の経血があったとしたら、子宮からの出血が止まっていないという異常事態と考えられるでしょう。過多月経はデトックスではありません。
運動・冷え取り・ストレス軽減を
心がけよう
過多月経についてはさまざまな原因がありますが、子宮や卵巣に病気がなくて起こっている場合は、生理がスムーズに進んでいないからと考えられます。
子宮内膜がはがれ落ちるときには、酵素が働いています。酵素によって子宮内膜の組織や血液がサラサラの状態になり、狭い子宮頸管を通って、腟へと排出されます。酵素の働きが悪くなると、子宮内膜がはがれ落ちにくくなり、出血量が増えてしまう可能性が指摘されています。つまり、酵素の働きが関係して、過多月経が起こっていると推測できるのです。
さらに、酵素の働きが悪くなれば、子宮内膜の組織や血液がねっとりした状態になり、狭い子宮頸管を通過しにくくなります。それをなんとか排出させようとして、子宮がギューッと縮むのです。こうして生理痛が起こっていると考えられます。
酵素とは化学反応を促進するたんぱく質で、周囲の温度が低すぎても高すぎても働きが悪くなります。
子宮の内部については、温度が低いために酵素の働きが悪くなる可能性が高いといえます。
子宮の温度が低くなる原因の一つとして、運動不足が挙げられます。筋肉は人体最大の熱産生器官。体を動かさなければ筋肉が衰え、熱が発生しにくくなります。下半身の筋肉量が少なくなっていたら、子宮を含め骨盤に収まっている内臓の温度も下がることになるのです。
加えて、保温性の低下。薄着によって骨盤の周囲が保温されなければ、内臓の温度は維持されません。
強調しておきたいのは、ストレス。強いストレスを受けたり、弱いストレスを長く受け続けたりすると、血流が悪くなります。酸素や栄養素だけでなく体温も血液で運ばれるので、ストレスを受ければ子宮の温度は下がり、酵素の働きが悪くなるでしょう。
対人関係、受験、就職、スポーツ、ダイエットなど、現代の女性は10代の頃からさまざまな形でストレスを受けていることが、生理トラブルの原因になっているように思えてなりません。
なお、婦人科などを受診すると、過多月経や生理痛にはピルが処方されることがほとんどです。ピルとは女性ホルモンの成分が含まれた薬で、生理を止める、言い換えると子宮内膜が厚くなるのを妨げる働きがあります。
ピルについてもさまざまな意見がありますが、合う・合わないがあるのは事実です。個人的な体験ですが、私がピルを飲んだときは特に問題がなかったものの、知人については「明らかに体調が悪そう」と外見が変化するほどに副作用がありました。
過多月経や生理痛などの生理トラブルについては、運動や冷え取り、ピルなど、さまざまな対処法があります。出血が多くなれば貧血を招くので、「たかが生理」と軽く考えずに生活を見直してください。
最後に、母親などの年長の女性が「私もそうだったから、仕方がない」「生理があるから、女って損よね」「生理中でも私はがんばっていた」などと、生理トラブルに悩んでいる女性に言っても百害あって一利なし。ストレスになって症状を悪化させる可能性大なので、やめてほしいものです。
Leave a Comment