どうして月経痛が起こるのだろうか ~子宮筋腫 その1 子宮筋腫の種類と大きくなるメカニズム

 子宮筋腫とは子宮にできる良性の腫瘍です。腫瘍とは、周囲の細胞とは異なる細胞が勝手に増殖してできた塊で、しこりのようなものです。
 子宮は、自分の意志では動かせない筋肉である「平滑筋」でできています。この筋肉にできたしこりなので、「筋腫」ということです。

 子宮筋腫は良性で、ガン(悪性)ではないので、ほかの細胞に悪影響を与えたり、命に直接かかわったりすることはありません。
 そして自覚症状がない場合もあるのですが、月経痛がひどくなったり、過多月経を引き起こしたり、頻尿や便秘などの原因になったりすることがあります。

 こうした症状については、子宮筋腫のできる場所と大きさが関係しています。今回は、子宮筋腫のできる場所によって月経トラブルが起こるメカニズムについて考えていきます。

女性ホルモンの影響で大きくなる

成人女性(生殖年齢にある女性)の3人に1人が子宮筋腫を持っていて、20年前ぐらいに取材をした頃は45~50歳に多いといわれていました。
 しかし今では30代を中心に20~50代が子宮筋腫で受診しているようで、平成29年度の患者数については11万6000人でした。

 子宮筋腫の原因は、はっきりとはわかっていません。
 子宮に子宮筋腫の核(遺伝子の変異でできる、「筋腫の芽」ともいわれる腫瘍細胞)ができて、周囲に新しい毛細血管が次々と張り巡らされます。そして栄養が届いて、大きくなっていったものが子宮筋腫です。
 この核は、エストロゲン(卵胞ホルモン)が作用すると大きくなるといわれています。
 そのため、月経の始まる年齢が早くなっている近年では、若い世代にも子宮筋腫が増えてきたのだと考えられています。

 個人差や個体差があり、すべての子宮筋腫がエストロゲンの影響で大きくなるとは限りません。ですから、医師が子宮筋腫の成長を予測することはできず、患者自身で貧血や痛みなどをチェックしたり、定期的に検診を受けたりする必要があります。

 子宮筋腫はいびつな形をしているので、「直径〇cm」と診断されてもどこを計測しているかで数値は異なります。つまり、同じ子宮筋腫でも、医師が違えば「直径〇cm」という診断は異なる可能性が高いということです。

 ですから、1cmくらいの誤差は当然あるものととらえて、こだわり過ぎないことも大切です。

 そして、子宮筋腫が1つだけという単発性筋腫は珍しく、およそ8割が多発性筋腫で、大きさもバラバラです。
 「手術をしたのに再発した」という例は少なくないのですが、手術で小さなものまで含めてすべての子宮筋腫を取ってしまうことが難しいからです。

 それから、子宮筋腫が小さくなることも珍しくありません。子宮筋腫の細胞が死滅する変性が起こるためです。

 変性の原因は、血行障害です。子宮筋腫が大きくなりすぎると、中央にある核の細胞まで血液が届かなくなり、栄養が断たれて、中央から死滅していくのです。
 その結果、子宮筋腫に次のような変化が起こります。
〇柔らかくなる
〇固いコラーゲン線維に変わる
〇中に水がたまる
〇カルシムが沈着しカチカチに固まる(石灰化)

 子宮筋腫の変性は、妊娠中や更年期に起こりやすいようです。
 妊娠中はエストロゲンが大量に分泌され、子宮筋腫が急激に大きくなるため、核まで血液が届きにくくなるためだと考えられています。
 一度変性して小さくなった子宮筋腫が、再び大きくなることはありません。
 ただ急に変性が起こった場合に、「変性痛」といって痛みや炎症が起こることがあり、入院が必要になる場合もあります。

できる場所や大きさで、症状が異なる


 子宮筋腫は、できる場所によって3つの種類に分けられます。
1 筋層内筋腫
2 漿膜下筋腫
3 粘膜下筋腫

日本産婦人科学会サイトより


1 筋層内筋腫

子宮筋腫の約6~7割が、このタイプに当てはまります。大きさは大豆くらいの大きさのものもあれば鶏卵大のものもあり、さまざま。そしてたくさんできることも珍しくありません。
 子宮筋層の中に子宮筋腫ができるため、子宮の内側(子宮腔)が引き延ばされ、子宮内膜の面積が増えます。そのため、月経量が増える過多月経が引き起こされます。
 同時に、月経時に子宮内膜がはがれ落ちるのに時間がかかるため、月経期間が長くなる過長月経にもなるのです。
 月経期間中に大量の血液が出ていくことから、貧血のリスクも高まります。

2 漿膜下筋腫

子宮筋腫の約2~3割が、このタイプに当てはまります。
 子宮筋層から外に向かって盛り上がるような子宮筋腫で、大きくなりすぎると膀胱や直腸などが圧迫されて、臓器の機能に悪影響が及び、頻尿尿失禁便秘などが起こるのです。そのほか、腰痛下腹部の痛み・膨満感足のしびれ性交痛などを招くこともあります。
 また、子宮筋腫が細い茎のようなものでつながりながら発育するタイプを「有茎性」と呼びます。
 有茎漿膜下筋腫が、腸の動きで茎の部分がねじれると、猛烈な痛みが起こります(茎捻転)。

3 粘膜下筋腫

子宮筋腫の約1割が、このタイプに当てはまります。
 子宮腔に向かって子宮筋腫が成長するもので、小さくても症状がひどいという特徴があります。
 筋層内筋腫と同様に過多月経・過長月経を引き起こすほか、月経痛が激しくなり、不正出血不妊も招きます。
 細い茎のようなものができて子宮腔にぶら下がる有茎粘膜下筋腫の場合、月経のたびに子宮筋腫を排出しようとして、子宮が強く収縮します。ですから、月経痛がとてもひどくなり、子宮から排出されて膣に飛び出す筋腫分娩が起こることもあります。

似た病気

子宮内膜ポリープ
 子宮内膜の一部の細胞が過剰に増殖し、子宮内腔にできた腫瘍。2~3mmほどの大きさで、まれに1cmほどになることもあります。ちなみに「ポリープ」は病名ではなく総称で、「皮膚・粘膜などの面から突出し、茎をもつ卵球状の腫瘤」(広辞苑第6版より)。

子宮肉腫
 子宮にできる悪性の腫瘍。他の臓器に転移する可能性があり、命にかかわる病気です。子宮筋腫と思って手術したら、組織検査で子宮肉腫とわかるというケースも少なくないそうです。子宮肉腫とわかったら、子宮全摘をします。



■参考資料
https://www.seirino-mikata.jp/knowledge/how/
http://www.kms.ac.jp/~anatomy2/Histology30.pdf
https://www.ferring.co.jp/infertility/femalebody/index.html
https://www-sdc.med.nagasaki-u.ac.jp/genetech/genkenbunshi/pdf/H24.1.12_answer.pdf
https://www.jmedj.co.jp/files/item/books%20PDF/978-4-7849-3223-8.pdf


文/森 真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。

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