どうして月経痛が起こるのだろうか ~子宮筋腫 その2 女性のライフサイクルで考える手術

 女性の一生は,小児(少女、幼年)期(10歳以前)・思春期(10歳頃から18歳頃まで)・性成熟期(18歳頃から40代前半まで)・更年期(40代後半から50代前半まで)・老年期(50代後半以降)に分けられます。
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 子宮筋腫については、性成熟期・更年期に起こりやすく、女性として今後どのように生きていくのかという人生設計にも関係します。
https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/living-well-with-menopause/about/physical-changes/より



年齢や状況で
治療方針が変わる


 月経痛や過多月経、不正出血、性交痛、腰痛などのトラブルがすでに発生して、日常生活に支障が出ていれば、手術などを検討するでしょう。
 しかし、それほど症状が強くなければ、経過観察を行うことが少なくありません。

 また、近々妊娠したいかどうかによって、子宮筋腫の治療は変わってきます。
 子宮筋腫は不妊だけでなく、流産や早産の原因にもなるからです。
 子宮筋腫があると子宮内膜がデコボコになってしまい、受精卵が着床しにくくなります。着床しても、胎児に栄養などを供給する胎盤がはがれやすい状態のため、流産しやすくなります。
子宮筋腫で、子宮内膜はデコボコに


 それから、閉経を迎えてエストロゲンの分泌量が大きく減れば、子宮筋腫が縮小する傾向になります。そして妊娠について検討する必要がないため、子宮全摘が主要な選択肢になるでしょう。

 以上のように、性成熟期で妊娠を希望するかどうかで、治療方針が変わってくることになります。

〇近いうちに出産したいと望む→子宮筋腫が小さいうちに手術を行う
〇いずれは子どもを生みたい→様子を見て、偽妊娠療法などの対症療法も選択して行い、子どもを生みたくなったら手術を行う
〇出産予定はない→様子を見て、場合によっては子宮全摘も念頭に置いて手術を決める

手術の種類

妊娠を希望する→子宮筋腫核出術
妊娠を希望しないが、子宮を残したい→子宮筋腫核出術、子宮動脈塞栓術(UAE)、集束音波焼灼術(FUS)
妊娠を希望しないし、子宮を残さなくてもよい→子宮全摘術

子宮筋腫核出術 保険適用
 子宮筋腫だけを取り除く手術です。
 
 開腹して行う腹式子宮筋腫核出術、数カ所を小さく切開して腹腔鏡と手術器具を入れる腹腔鏡下子宮筋腫核出術、有茎粘膜下筋腫を対象に腟から子宮筋腫を取り除く腟式子宮筋腫捻除術、電子メスのついた子宮鏡を膣から入れて粘膜下筋腫を切除する子宮鏡下子宮筋腫核出術があります。

 この手術を行った後の妊娠や出産時に、傷の部分が破れる「子宮破裂」の可能性があります。そのため、通常では6カ月ほど妊娠を控えたほうがよいといわれ、妊娠したときも早めに帝王切開の判断をします。


〇メリット
将来、妊娠が可能

〇デメリット
子宮全摘術に比べて出血が多い
再発する可能性がある
術後に癒着する可能性が高い
術後は帝王切開を勧められることが多い

子宮動脈塞栓術 一部保険適用(施設適応基準を満たしている必要あり)
 子宮に栄養を送っている動脈を止め、子宮筋腫への栄養補給を止めて小さくする手術です。副作用として、感染、卵巣機能不全などがあります。

集束音波焼灼術 保険適用外
 おなかから超音波を当てて、子宮筋腫を焼いてしまう手術。さまざまな条件があり、この手術を受けられる人は限定されます。

子宮全摘術 保険適用
 開腹して子宮を摘出する腹式単純子宮全摘術と、腟から子宮を摘出する腟式単純子宮全摘術、腟式単純子宮全摘術を安全に行うために腹腔鏡を補助的に使う腹腔鏡下腟式子宮全摘術があります。
 腟式については、筋腫の大きさや出産経験の有無、癒着の程度で、この方法で手術できるかが左右されます。

〇メリット
手術中の出血量が少ない
症状から解放される

〇デメリット
喪失感を抱くことがある

【開腹手術のメリット・デメリット】

〇メリット
手術時間が短い
さまざまなタイプの子宮筋腫に対応できる
多くの施設で受けられる(腹腔鏡下・子宮鏡下手術の場合、医師に技術が求められる)

〇デメリット
術後の傷の痛みが強い
術後の癒着が起こりやすい
入院期間がやや長い(腟式だと7日前後、子宮鏡下手術だと2~3日で済む)
おなかに傷跡が残る

※腟式で手術していても、途中で開腹手術になる場合もある


■参考資料
https://www.palana.or.jp/ipath/manual/4-female-genital/1-uterus
https://www.seirino-mikata.jp/knowledge/how/
http://www.kms.ac.jp/~anatomy2/Histology30.pdf
https://www.ferring.co.jp/infertility/femalebody/index.html
https://www-sdc.med.nagasaki-u.ac.jp/genetech/genkenbunshi/pdf/H24.1.12_answer.pdf




文/森 真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。

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