糖尿病対策には、タマネギなどポリフェノールが豊富な食品をこまめに取ることがポイント
糖尿病が強く疑われる成人は、平成28年の「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)で1000万人と推計されていて、そのまま横ばいの状況が続いています。
糖尿病になると、血管が傷害されるだけでなく、ウイルスなどから体を守る免疫力も落ちています。
今は糖質の多い食品が簡単に手に入り、便利になって体を動かす機会も激減しました。そのため、血糖値が高くなりやすい状況だといえます。ですから、意識して、血糖値を下げる習慣を取り入れたほうがよさそうです。
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photo/Markus Spiske |
「糖化」と「酸化」が
ダブルで起こる
糖尿病とは血液中のブドウ糖(血糖)が増える病気で、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが効きにくくなったり、作られなかったりすることで起こります。
体内で過剰になったブドウ糖は、たんぱく質と結びついて変性させます。これを「糖化」といいます。例えば、血液の成分である赤血球のたんぱく質に糖化が起こると、全身に酸素を運ぶ役割を果たせなくなります。このように、糖化によって細胞がきちんと働かなくなってしまうのです。
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『はたらく細胞BLACK』 第19話より |
『はたらく細胞BLACK』 第19話では、血液中のブドウ糖によって赤血球が糖化し、酸素を運ぶ機能が損なわれてしまったことが描かれていました(『はたらく細胞』 シリーズ、お勧めです)。
また、血液中で増えすぎたブドウ糖は、血管の内壁の細胞を傷つけます。すると、炎症が起こり、動脈硬化につながります。
そして炎症が起こっている部分では、活性酸素が大量に発生します。活性酸素は攻撃性の高い酸素で、紫外線を浴びたときや、タバコの煙などの毒物が入ってきたときにも体内で作られます。活性酸素が結合する「酸化」によって、正常な細胞まで傷つくことがあるのです。
ですから、血糖値が高くなると、糖化・酸化によって血管や神経などがダメージを受け、失明したり、腎臓のろ過機能が低下したり、しびれを感じたりするといった合併症が現れます。
1日3食と、朝・昼のおやつに
ポリフェノールを取ろう
血糖値を下げる習慣として、よく勧められているのはタマネギを食べること。
板倉弘重医師は10年ほど前に、農林水産省のプロジェクトの一環として、食品の機能性を調査しました。そのプロジェクトで、血糖値を下げる効果について研究を行ったのがタマネギです。
タマネギに含まれているポリフェノール(植物の色や香り、苦味などの成分)のケルセチンには、活性酸素の毒性を除去して、酸化から細胞を守る抗酸化作用があります。
ポリフェノールが血糖値を下げるメカニズムについて説明すると、まず、膵臓の機能回復に役立ちます。
ブドウ糖が含まれる食品を食べるたびに、膵臓がインスリンを分泌するわけですが、食べる回数や量が多ければ、その分だけ大量の酸素を消費しながら膵臓は働くことになります。こうして活性酸素が発生し、膵臓の機能が低下して、インスリンが分泌されにくくなってしまうのです。体には活性酸素を除去する仕組みが備わっていますが、量が多ければ対応し切れません。
こうしたときにポリフェノールを取り入れると、膵臓で活性酸素を取り除く働きがサポートされ、インスリンを分泌する機能も回復しやすいのです。
また、ポリフェノールは、消化管の中でブドウ糖の吸収を抑える働きをします。ですから、血糖値が上がりにくくなります。
さらに、食べ物が消化管の中で酸化されると、腸内環境に悪影響が及びます。ポリフェノールは体内での酸化を防ぐことで、腸内環境を整え、悪玉菌による毒素の発生を抑えて、インスリンがきちんと効果を発揮する状態にするのです。
このように、さまざまな形で血糖値を下げるポリフェノールを、たっぷりと取り入れられる食品の一つがタマネギ。
板倉医師は過去に、ポリフェノールを食品で取り入れることで効果がどれぐらい持続するのかを、血液検査で確かめています。その結果、食べてから2時間ぐらいで効果が下がってくることがわかりました。
ですから、1日3食に加え、朝と昼のおやつでポリフェノールを取ることがお勧めということになります。加えて、運動を行った後や強いストレスを受けたときには、体内で活性酸素が発生するので、ポリフェノールを取るように心がけたいですね。
板倉弘重(いたくら・ひろしげ)
1961年、東京大学医学部卒業、医学博士。カルフォルニア大学心臓血管研究所に留学。東大医学部助手、講師を経て、1984年、国立栄養研究所病態栄養部長、1989年、国立健康・栄養研究所臨床栄養部長。現在、茨城キリスト教大学生活科学部食物健康科学科教授、国立健康・栄養研究所名誉所員。
※この記事は、2020年7月9日に板倉医師をインタビューした内容をもとに作成しています。
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