尿が作られる仕組みと出る仕組み その1 腎臓
多くの人体図では、腸などで隠れてしまっている腎臓。
そんな腎臓の位置は一番下の肋骨の内側辺りで、左右に一対あります。1つの大きさは、握りこぶしぐらいです。
※泌尿器などの構造については、以下のサイトに詳細に説明されています。https://www.visiblebody.com/ja/learn/urinary/urinary-system-pathologies-common-diseases-and-disorders#incontinence
腎臓は、全身を巡った血液をろ過して、こし取ったゴミを尿として排泄しています。
血液をろ過するフィルターの役割を果たしているのが、「ネフロン(腎単位)」と呼ばれる構造です。1つの腎臓に、ネフロンは約100万個も存在しています。
○ネフロン
腎小体(糸球体、ボウマン嚢) 原尿を生成する
尿細管 原尿の成分を調整する
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| 腎臓の発⽣ より引用 一部改変 |
ネフロンは複雑な構造をしていますが、その中でフィルターの働きをしているのが「糸球体」です。糸球体は、毛細血管がボールのように丸まった形をしています。
糸球体を通っている毛細血管の壁には、小さな穴がたくさん開いています。血液中の赤血球やたんぱく質などはこの穴を通れませんが、老廃物などほぼすべては穴から毛細血管の外に吸い出されます。これが「原尿」。
糸球体の表面には、タコの足のような「足細胞」がたくさんくっついています。足細胞にある「スリット膜」を通って原尿が出てきます。
原尿の中には、老廃物だけでなく、糖分やミネラルなども多く含まれています。こうした体に必要な成分を、必要な分だけ再び血液に戻す「再吸収」を行っているのが、「尿細管」です。そして再吸収されなかった「尿毒素」などの不要なゴミが、水分と一緒に尿として排泄されています。
尿細管の内側には、微絨毛(びじゅうもう)がびっしりと生えているため、表面積が増えて、たくさんの物質を早く吸収することができます。そして外側は毛細血管に覆われています。
腎臓が1日に作る原尿の量は、約180リットル。そのうちの約99%が尿細管から再吸収され、血液に戻されます。
尿は集合管を通り、コップのような形をした腎杯、腎臓中央にある腎盂を経て、尿管を通って膀胱へ移動します。
腎臓をトイレにたとえると、ネフロンが便器、尿細管は排水管に当たります。
トイレのトラブルの中で最も多いのが、排水管の詰まりです。詰まった状態で無理に水を流そうとすると便器に逆流し、トイレ全体が水浸しになって使えなくなってしまいます。
これと同様に、腎臓で一番詰まりやすいのは尿細管なのです。死んだ細胞や壊れたたんぱく質など、原尿に含まれているゴミの量がとても多ければ、尿細管が詰まってしまいます。
すると、ネフロンも目詰まりをして、少しずつ壊れていきます。そして腎臓の機能が落ちていき、やがて腎臓病になるのです。
人間やイヌでは、尿細管のゴミを取り除くシステムが働くのですが、ネコに関してはAIMというものがないため、システムが働きません。そのため、腎臓病で死ぬネコが多いのです。
腎臓の機能は一度失われると、そのほとんどが回復することはありません。そして、腎臓でこし取られなかったゴミである尿毒素が全身にたまっていって、吐き気やめまい、疲労感などの「尿毒症」が現れます。それを防ぐために、尿毒素や余分な水分を人工的に取り除く「透析」療法が行われています。
この透析は対症療法にすぎません。ですから、「腎臓病になってしまったら、打つ手がない」と考えられてきました。
そんな腎臓病を治せるのではないかと期待されているのが、AIM(apoptosis inhibitor of macrophage)です。東京大学大学院医学系研究科 宮崎徹教授らの研究グループは、AIMが腎臓に働きかけて急性腎不全(腎臓がゴミを十分に除去することができなくなった状態)を治癒させることを明らかにし、2016年に研究論文を発表しました。
AIMは、死んだ細胞や壊れたたんぱく質など、体内で発生したゴミにベタベタとくっつきます。それを目印にして、白血球の一種であるマクロファージがゴミを食べて、取り除いてくれているのです。
腎臓においては、AIMが血液から原尿へと移動して、尿細管にたまったゴミにくっつくことで、きれいに掃除されるわけです。
宮崎教授のグループでは、もともとAIMを持たないマウス(ネズミ)と、AIMを持っているものの重度の腎不全になったマウスを使って、実験を行いました。その結果、AIMを注射して体に補充することで、どちらのマウスも尿細管の詰まりがすぐに解消されて、腎臓の機能が改善し、60~100%だった致死率が0%になりました。
腎臓の機能の低下には、次の4つの段階があります。
1 尿細管にゴミがたまり始めている(腎不全の前段階)
2 尿細管にゴミが詰まって、ネフロンの機能が低下する
3 ネフロンが機能しなくなって重度の腎不全になり、ゴミが全身を巡って脳や心臓などの機能が落ちる(透析を導入する段階)
4 死に至る
1~3の段階の症状については、AIMを投与することで改善できます。なぜなら、原尿だけでなく、全身を巡る血液に含まれているゴミも、AIMがくっつくことで掃除されるからです。そのため、3の段階になってからでも、手遅れではないということになります。
AIMを使った治療の特長は、もともと人間の体に存在しているたんぱく質が持っている「ゴミを取り去る」というメカニズムを使う点にあります。ですから、体に与える負担や副作用は非常に少ないと考えられます。
■参考資料
腎臓の発⽣
http://www.dev-neurobio.med.tohoku.ac.jp/students/lecture/pdf/med_dev/2017/med_dev_2017_21.pdf
東京大学 腎臓の働きを改善する遺伝子「AIM」でネコの寿命が2倍に!? | 広報誌「淡青」37号より
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/features/z1304_00002.html
日刊工業新聞
https://www.nikkan.co.jp/spaces/view/0051337



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