出版業界の右肩下がりが続く中ではびこる「取材商法」と「出版商法」

  情報誌(ファッション誌、経済誌、タウン誌など)では、広告費をもらって企業やお店などの記事を掲載している場合が多々あります。

 雑誌や書籍、またニュースサイトへの記事掲載のために費用が発生するケースは珍しくなく、法にも触れません。


 問題なのは、掲載費用の請求を隠して取材依頼をすること。

 あるメディアの担当者が電話をかけてきて「ぜひ取材させていただきたいのです!!」などと長々話して、取材先にOKをもらい、取材がすべて終わった後で「取材費用を協力していただきます」などと切り出すわけです。


 こうしたやり方は「取材商法」と呼ばれています。


 私も勤務先で店番をしていた頃、飛び込みで取材商法の勧誘を受けました。

 私のほうから相手の説明を遮って「掲載費はかかるのですか」と尋ね、「お金がかかるのでしたら結構です」と断りました。


 こうした勧誘はとにかく話が長くて、論理が見えにくいのです(おそらく、わざと論理を見えにくくしています)

 ですから相手のペースで話をさせないこと。

 そしてこちらの聞きたい内容だけ聞いて、早く結論を出すことを勧めます。


 もう一つの「出版商法」は「自費出版」「共同出版」と似ていますが、まったく違うものです。


 印刷代や編集費などをすべて筆者が負担する自費出版も、出版社と共同で負担する共同出版も、法的な問題はありません。


 経費の負担を隠して「本を出しませんか」と勧誘するのが出版商法。

 「あなたのブログを読んで、心が揺さぶられました。ぜひ弊社で書籍化させていただきたいのですが、ご足労いただけませんか」などと呼び出し、出版の意義を長々と話した後、「出版に当たっては費用を負担してもらいます」と切り出します。


 取材商法と出版商法は、特定商取引法で禁止されている「ブラインド勧誘」に抵触する可能性があります。本来の目的を告げずに面会の約束を取り付けて、勧誘行為をすることがブラインド勧誘。


 言い過ぎかもしれませんが、誰でも出版社を立ち上げられるのが現状。

そのために取材商法や出版商法がはびこってしまうのだと考えられます。


 今では雑誌も書籍も、作るより売るほうが大変。大手版元の営業は、書店を回って「ウチの本を棚に置いてください」と頭を下げています。日本では1年で約7万点の新刊書籍が発行されていて、書店にはすべてを並べるスペースなどないわけです。

 営業体制がしっかりしておらず、インターネットでしか流通しない出版社の本は、大量の新刊の渦に飲まれて終わりでしょう。


 楽に本が作れて流通させられるようになったわけですが、出版業界の右肩下がりは続いています。

 ウェブも競争が激化。ページを頻繁に更新させるために、イラストレーターやライターの原稿料が低い状況です。


 メディアが華やかなのは、目に見える「陽」の部分。

 隠れた「陰」の部分では、自転車操業と激しい競争、「1円ライター」といった「やりがい搾取」が行われています。



 夢や目標とやりがい。

 費用・労力の負担。

 この2つを天秤にかけてください。お金について事前に確認するのは、決して恥ずかしいことではないと思っています。

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