承認を求めるあまり、居場所を失う人たち
とにかく積極的な男性のAさん。ある交流会で、参加者の女性たちに熱く語りかけて、後日、交換した連絡先にも「あなたと一緒にぜひ行きたい場所がある」などとアタックしてきたとか。
Aさんの「行きたい場所」は、売上高日本一のマルチ商法(ネットワークビジネス)の集会で、Aさんがその会員だとわかり、交流会の主催者はAさんを出入り禁止にしました。しかし、「自分のやっていることのどこが悪いのか!!」とAさんは憤っていたのだそうです。
この主催者が厳しい態度を取ったからよかったものの、別の交流会の主催者がマルチ商法に手を染めていたこともありました。
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photo/cottonbro |
SNSで参加者を募っていたり、街コンや町中で「おいしいお店、知りませんか?」と声をかけてきた人に誘われたりした以下の会が、実はマルチ商法絡みだったと報告されています。
朝会
読書会
ボードゲーム(ボドゲー)大会
パーティ
マルチ商法絡みの会合では、いやに参加者同士が仲が良いのですが、妙なテンションの高さやフレンドリーな態度が、ひょっとすると、初参加の人をリラックスさせるのかもしれません。
初参加の人にとっては「居場所ができた!」とうれしい経験かもしれませんが、それを繰り返すうちに、現実社会の中では浮いた存在になっていく危険性は高くなります。
理由は、奇妙なテンションの高さやフレンドリーな態度に加え、"仲間"以外を見下すような発言を始めるからです。
今のマルチ商法には自己啓発の要素が濃く、"仲間"以外は意識の低い人間どもに思えるからだと推測します。そうです。かぶれちゃうんです。
そして、以下の言葉を口にしたり、SNSで発信したりします。
ESBIクワドラント (従業員、自営業者、ビジネスオーナー、投資家の分類)、Bクワドラント、Bクワ思考→自営業者になれという煽り
経営者になる
師匠
チームビルディング
ブランディング
〇〇の真実(〇〇には化粧品や食品など)→オーガニックコスメやシャンプー、サプリメントの販売
創造社会
選択は自由
起業で成功
人生で起こることの全ては自分が源である
物事には積極的に全力で取り組むのが重要
自己責任
違和感があるところに自分を置け
起業すれば夢がかなう
過去は生ゴミ
win win
最優先事項は何か
感謝の分かち合い
自己投資
外界にはない成功法則
一度きりの人生
労働収入ではダメ
正しい情報
質の高い情報
『金持ち父さん貧乏父さん』
『ユダヤ人大富豪の教え』
『パブロとブルーノ』
実は、ある女性、Bさんがかぶれていく過程を見てしまったのですが、現在は家族のことも過去のことも”自己開示”。そして、自己啓発のテキストの写真やらマルチ商法のオーガニック商品やらを、せっせとSNSにアップしています。
Bさんは、自分自身がただの主婦であることが許せなかったのでしょうか。SNSでは〇〇コンサルタントと名乗っています。
あまりにも自己啓発やマルチ商法にのめり込むと、「主婦」という立ち位置すら危なくなりそうです。家族が「Bさんは何を言っているんだ?」と怪訝に思って、彼女から離れていくリスクがあるからです。
○通信教育講座のCMの「賢くなければならない」というメッセージ
○健康食品のCMの「いつまでも若々しくなければならない」「スリムでなければならない」というメッセージ
……などで、強迫観念的になり、私たちは自分の心地のよいあり方を見失っているのではないでしょうか。
ただ家の中で、家族と一緒に暮らしているだけではダメなような気がして、つい、新しい居場所を求めてしまう気がします。
それはそれとして仕方がないことでしょうが、強迫観念に無自覚でいると、テンション高めのマルチ商法や自己啓発に絡めとられてしまいます。
どうやらお金を巻き上げられ、借金もし、家族からも孤立させられている人々もいるようです。務めていた会社も辞めるように促され、新たに働き始めた会社がマルチ商法の幹部経営でブラックだったという話もあります。
また、マルチ商法メンバーが家にやって来て、その人の荷物などを運び出した後、シェアハウスに住まわせるケースも報告されてきました。
自分の居場所とは、名作『青い鳥』のように、探し求めていたけれど、実際は家の中にあったというものかもしれません。生まれ育った家があまりにも居心地が悪いのならば、新たに自分で作る努力をするわけです。
そんな居場所は賢さや若々しさやスリムさや美しさとは別次元。年を取って認知症になっても離れていかず、貧しくなったら互いにカバーするような存在であるわけです。テンション低めに周りを見渡せば、そんな”普通”の人たちが、ぶつくさ愚痴を言いながらも、それなりに幸せに、穏やかに暮らしているのではないでしょうか。
○勧誘する人の特徴
1. 社会的な知識と常識に欠ける(良心欠如、サイコパス)
2. 「○○という事業で○○円が必要」といった具体的な目標はないものの、とにかくお金を増やしたい
3. 煽る
4. 無責任である
5. 経歴などで平気でウソをつく、あるいは自分がついたウソに気づかない
6. ホームページや名刺は立派だが、実業家としてのキャリアも実力もない(中身がない虚業家)
○勧誘されやすい人の特徴
1. 社会的な知識と常識に欠ける(情報弱者)
2. 「○○に使いたい」といった目標はなく、生活にさほど困ってはいないものの、なんとなくお金を稼ぎたい
3. 雰囲気(意識が高い感じがする見た目、「市との共同開催」「教育委員会が後援」「NHKで取り上げられた」「○○公認」などの謳い文句)に弱い
4. イベントやセミナーなどに参加できるぐらいに時間があり、暇である(ただし、本人はそう思っていない)
5. パッとしない人生や今の生活(会社員、主婦、子育て中の母親、無職)に不満がある=「自分の人生は、こんなものじゃない」と思い込んで焦っている
6. 何でもいいから肩書きが欲しい
7. 社会的な経験に乏しく、失敗するのが怖い(自分の失敗を認められない)
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