【何者にもなろうとしないゆるゆる人間関係】地味な人生を寂しくしない、小さな努力

 5年前のことです。たまたま誘われて、異業種交流会に参加しました。主催者のみゆきさん(仮名)は、見た目にもスマートで、魅力的でした。お子さんたちは成人間近だったはずなので、みゆきさんもそこそこの年齢。


 その会では、マルチ商法の勧誘は禁止されていました。みゆきさんも「マルチ商法はお断り」という態度を、はっきりと示していました。


 そんなみゆきさんが、今はどっぷりとマルチ商法に漬かっているのです。

 異業種交流会を機にみゆきさんとはSNSでつながり、みゆきさんが私に会いに来てくれたことも一度だけあります。
 みゆきさんは長年専業主婦で、私と会う4年ほど前にカウンセラーのような仕事を始めた状況でした。
 会話する中で、彼女の焦り・くすぶりを強く感じました。それで、「異業種交流会のメンバーで○○をやってみたらどうでしょうか」などと私から提案したのですが、「うーん、何か違うのよね」とどこか不満げ。わざわざ会いに来てくれたみゆきさんですが、スッキリしない表情で別れたので、何だか申し訳ない気持ちになりました。


 その後、異業種交流会のメンバーから、みゆきさんの様子がちょっと変だという連絡がありました。
 それでみゆきさんのSNSを見たら、有名なマルチ商法の商品、そして情報商材のテキストの写真がドーンと載っていたのです。投稿をさかのぼると、どうやら朝会がきっかけだったようです。


 みゆきさんは、異業種交流会を主催して積極的な人物に見えましたが、実際のところは、自分をキラキラした世界へと引っ張ってくれるような人との出会いを求めていたのかもしれません。私にも少し期待してくれたのでしょうが、話す内容があまりに地味で、がっかりしたのでしょう。
 本人が予想していたほどには仕事でキラキラと輝けず、異業種交流会のメンバーでできることも現実として地域活動レベル。異業種交流会については、人間関係が大変な割には、みゆきさんにとって報われない状況でした(本人談)。


 そんなときに参加した朝会で情報商材系の"意識の高い"人に出会い、"キラキラした"世界に魅了されてしまったようです。


 このように、マルチ商法に関する予備知識があり、それなりに警戒していても、はまり込んでしまうことが、現実としてあるわけです。
 もちろん、みゆきさんだけではなく、私にもその可能性はあるということ。警戒しておいたほうがよいと実感しました。


 母親というものは、子どもたちが成長する中で「お母さん」という役割の比重が減っていきます。
 その空白、そして寂しさを埋めるために、別の何者かになろうとするのかもしれません。また、「○○カウンセラー」といった、なんらかの肩書きを求めるのかもしれません。
 ここの空白を、マルチ商法はうまく突いてくるのではないでしょうか。


 マルチ商法で、家庭崩壊した例は多数報告されています。
 後で「しまった!」と気づいても、気力も体力も衰えていく年齢だと、家族の再構築は厳しいと思います。お金もなく、家族も去っていった孤独な人生は、あまりも残酷。
 だとしたら、「お母さん」という役割が減っていっても寂しく感じないような小さな努力が、今から必要なのかもしれません。


 それには家事は非常に都合がいいのです。
 ネットで掃除や片づけを調べていると、多数の達人たちと出会え、「こんなやり方があったのか!」と発見があります。
 この達人たちのいいところは、リアルじゃないために、こちらで距離感を調整できる点にあります。特定のグッズや洗剤などをネットで勧めていたのならば、「ふーん、そういうことね」と距離を広げることができます。要は、自分から彼らに接触しなければいいわけです。


 そして、小さな壁のシミを消しただけで「よし!」とガッツポーズを取っていたら、それなりに達成感が得られるものです。シミはたくさんあるので、その分だけ「よし!」と達成感も積み上がります。

 達成感のためには、家族に褒められるためや認められるためでなく、自分のために、自分なりの方法で家事を楽しむことがポイントかもしれません。

photo/Matilda Wormwood


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