【今井龍弥医師の知恵袋】美肌水の材料について調べてみた

  グリセリン・尿素・水道水だけで作れる「美肌水」。これは、今井龍弥医師が考案したものです。

 保湿力があるだけでなく、界面活性剤を使用していないため、肌への影響は少ないだろうということで、広まっていきました。

 美肌水の材料の一つがグリセリン。

グリセリンはその完全な無毒性の故に,応用範囲が非常に広く,たとえば米国では約2,000種もの用途がある。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/34/3/34_3_179/_pdf/-char/ja

 「完全な無毒性」という点で、安心して使用できるグリセリン。化粧品やダイナマイト(ニトログリセリン)、タバコに用いられています。

 化学式(分子式)はC3H8O3で、各炭素に一個ずつヒドロキシ基(-OH、水酸基)がついた、3価のアルコールです。ちなみに、アルコールはヒドロキシ基がある有機化合物の総称で、ヒドロキシ基が結合している炭素が脂肪族鎖式炭化水素・脂環式炭化水素に属する場合に、こう呼ばれるそうです。

 多くのグリセリンが、グリセリンと脂肪酸が含まれている油脂を加水分解することで生産されています。原材料は、植物油または石油で、ヤシ油やパーム油などの前者から作られたものは「植物性グリセリン」、後者は「合成グリセリン」と呼ばれています。

 医薬品用のグリセリンは、ほとんどが合成グリセリンなのだそうです。理由は、純度が高いから。

 植物性グリセリンには、製造過程で混ざる不純物を取り除くため、蒸留などをするとのこと。それでグリセリンが劣化したり、不純物を完全に取り切れなかったりすることもあるわけです。つまり、合成グリセリンは品質が安定しているということ。

 私たちのような一般消費者が手にしているのは、植物性グリセリンのようです。ドラッグストアなどで多く販売されている「化粧品」と、あかぎれ用の「指定医薬部外品」などがあります。

 商品のパッケージをパッと見ただけでは、化粧品と指定医薬部外品との見分けがつきにくいですね。


 もう一つが、尿素。化学式はCH4N2Oで、名前のとおり、動物の尿に多く含まれている有機化合物です。

 今井医師は、美肌水を作る際に、あえて「肥料用尿素を使いなさい」と伝えてきました。尿素には、指定医薬部外品や化学用、肥料用などがあります。化学式が同じならば、安い肥料用を使ったほうがよいという、今井医師らしい主張です。


 肥料用尿素について調べていたところ、以下のような情報が出てきました。

尿素、硫安、塩化加里のような単一成分の化学肥料に関しては、包装袋または MSDS(物質安全データシート)に書いている注意事項通りに保管すれば、保管中に成分含有量が減ることはない(図 1)。尿素、硫安、塩化加里、硫酸加里が実験室で密閉の容器に 20 年間保管して、もの自体が固結したが、成分含有量の変化がみられないという実験データがある。したがって、固結してもその塊を粉砕すれば、施用しても肥料効果に限って新品との差がないとも言える。このようなタイプの化学肥料に消費期限を設けることは全く余計なことである。化成肥料についても同じに言える。

http://bsikagaku.jp/f-knowledge/knowledge81.pdf

 この筆者の文体が、非常に今井医師と似ています。

 尿素にも、化粧用があるようです。また、いくつか比較すると、今井医師の言葉どおり、肥料用は格段に安く、大容量です。

 さておき、グリセリンも尿素もシンプルな構造といえそうです。この2つを組み合わせただけの美肌水が、肌荒れ、フケ、シミなど幅広い症状の改善に効果を発揮したことが、今さらながらおもしろいですね。


 美肌水に関する今井医師の著書は多数あるので、作り方や作用機序などをぜひ参照してください。今井節に加え、たくさんの体験談も掲載されています。



○今井龍弥医師のプロフィール
1940年、愛知県名古屋市生まれ。京都大学医学部卒業後、大阪大学歯学部を卒業。医師免許、歯科医師免許を取得。名古屋市内でクリニックイマイを開業。著書多数。
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