貧困が強制される社会 『衰退途上にあるこの国のリアル 日本の貧困女子』

 『衰退途上にあるこの国のリアル 日本の貧困女子』(著/中村淳彦 SB新書)の「はじめに」では、貧困女子が生まれた背景がギュッと濃縮して解説されていました。

 古くから根強く残る男性優位社会と長男信仰(長男が一番大事、家庭内差別)、男尊女卑の価値観。その価値観に基づく暴力・暴言(DV)。
 同じく、「子どもは親の持ち物。だからなにをしてもよい」という価値観。その割に、幼稚で無責任な大人たち。そして、弱い者への暴力・暴言。
 閉鎖的なムラ社会。子ども時代の上下関係やいじめが、大人になっても引き継がれる。
 
 「若い」「美しい」「オンナ(性)」を商品化する資本主義。
 少子高齢化で経済が衰退化する中での、持てる人間(既得権益、主に中高年男性)と奪われる人間(若い、主に女性)の格差。
 優しさに飢えた女性の男性依存。ホストやナンパ男など表面的な優しさ・言葉に惑わされ続ける。

  これはもう、明治・大正・昭和初期のおしんの世界。人身売買ですね。



 私たちは、学校その他で以下のように教わってきたし、思い込まされてもきました。

〇男女は平等である
〇公平・公正な社会である
〇親は子どもを保護する責任がある
〇子どもの人権は守られるべきだ
〇暴力ではなく話し合いで解決すべきだ

 もちろん、上記のような一面もあるのですが、そればかりではないということでしょう。

 ボーッと生きてい、美辞麗句に惑わされていると、貧困に転落する。

 社会がそれを強制するのが、日本のリアルだと筆者は訴えているのかもしれません。他人事じゃありませんよ、と。

 経済的・関係性的・情報的に貧困で、奪えそうなところから、また奪いやすいところから奪っていくのが、社会で生きる人間たちであり、国家でもあるということです。

  以下は、引用。

  貧困は、おカネが足りない経済的貧困を筆頭に、人間関係がない関係性の貧困、制度などを知らない情報の貧困と、それらが重なるほど事態が深刻になってくる。生まれや育ち、地域や生活環境によって貧困の苦境、苦しさは変化する。
 東京では、非正規雇用で一人暮らしをしていると、手取りが15万円程度。家賃6万円を払えば、もう可処分所得は貧困ラインに乗ってくる。その苦しさから逃れるため長時間労働をしたり、性労働をしたり、空腹に耐えたりと、それは人それぞれだ。負の連鎖とは、貧困から逃れるための長時間労働から精神疾患になり、子どものネグレクトがはじまり、死にたい気持ちが止まらないなど、みたいなことだ。最終的には命を落とす者が出てくる。
貧しい経験をして苦労を知り、成長して這い上がるというロマンは過去の産物化フィクションであり、現在の貧困は固定された階層であり、一度組み込まれてしまうと抜けだすことができない。
そして貧困層に落ちてしまった者はただただ苦しいままその日を乗り切るだけの日々が続き、その親元で育った子どもたちにも貧困が遺伝してしまう。
 そんな、東京の貧困女子の苦境を聞くと、原因はほぼほぼ労働系の法律改正と国の制度変更であり、現在の政府が積極的に推進する新自由主義(民営化・規制緩和・市場原理・労働の自由化など)路線によって生まれた貧困と断定できる。人々の労働が人間のセーフティネットではなく、安くコキ使われる商品として流通させて起こってしまった。現在は悲しいくらいに人間の価値が暴落している。それに男たちの暴力が加わって、女性は人間性を喪失させるような苦境に陥っている。
 もう一つ、中流以上の中高年男性たちに蔓延する貧困者に対する自己責任論がある。まず新自由主義路線のターゲットにされた女性たちの貧困に「努力不足、自分自身の選択の結果であり、あなたの苦境はあなたに責任がある」と、苦しむ女性たちに対して自己責任論を叩きつけている。学ぶために大学生になったり、生まれ育った地方自治体で臨時食品の雇用契約を結んだことが自己責任なのだろうか。
 たまたま優遇された層がなにも与えられない層に責任を押しつける。それが現在の自己責任論の招待であり、非常にいびつな分断と憎悪を生んでいる。


人手不足の産業は労働者に事実の情報を与えず、美辞麗句やポエムによって集めるので当事者は現実をまったく知らない。 


 時間をかけて介護の資格を取得しても、挫折して辞める。介護職資格取得は補助金が出るので税金を使っている。資格業者が儲かるだけでまったくの無駄なお金となる。現在は介護や保育だけでなく、地方自治体の臨時職員など、国や行政が主導する主に女性をターゲットにした完成貧困が深刻化しているが、普通に生活できるだけの賃金を与えない限り、この負の連鎖は延々と継続する。

 仮に彼女が美貌を持っていなかったらどうだろうか。AV女優に誘導されることはなかっただろうし、精神的にひどく病むこともなかった。そして、夜家の仕事に手を染めなかった可能性が高い。東京は換金ができる美人にとって、本当に危険な場所だ。悪い人物が寄ってきて、あらゆる言葉を浴びて裸の世界に誘導されてしまう。「美人は得」と一般的に言われるが、実は一寸先は闇なのだ。
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