何をもって損、何をもって得とするのか 『豆大福分析からはじまる損得勘定学入門』
『問題です。2000円の弁当を3秒で「安い!」と思わせなさい』で紹介されていた豆大福分析。その本を読んでみました。
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花ざかりの森より |
すべて売値が100円、原価が30円、利益が70円の商品の話です。
1 昼過ぎには売り切れる豆大福を、店員が1個落とした場合 →100円の損=売り逃がし ※100円で売れるはずのものが売れなくなったので=機会損失
2 ラーメンを、店員が1杯ひっくり返した場合 →30円の損 ※予備の材料でラーメンを作り直した分の費用(原価、材料費)がかかったので
3 ファストフードのドーナツを、店員が1個落とした場合 →0円の損=売り残し ※大量生産で、毎日、売れ残りは廃棄していたので
売値・原価・利益が共通している商品でも、以下の影響で、損した額が変わるということです。
○収益(売上)への影響
○費用(コスト)への影響
○(差し引き)利益への影響
この3つは、以下の条件で変化します。
○毎日売り切れるか、売れ残るか
○売れ残ったら廃棄するか、次の日も使えるのか
【売り残しの原因】
○需要予測を行ったための過剰生産
○オーバーな販売目標による過剰生産
○仕入れコストを下げることが目的の過剰仕入れ(ドーナツがこれ)
【売り残しの影響】
○保管コストがかかる
○管理コストがかかる(棚卸など)
○移動(運搬)コストがかかる
○スペースを取るので作業効率が悪くなる
○商品が劣化する
○廃棄損や値引きによる損失が生じる
○廃棄費用がかかる
○処分するまで損金とならないので税務上不利になる
○在庫の金利負担がかかる
○キャッシュ・フローが悪くなる
【売り逃して売り残すケース】
○シーズン限定品などが配送が遅れたために売り逃がし、在庫が残る
○品切れになって、急いで増産したが売上が鈍り、在庫が残る
○製品に不備があったため回収して廃棄する
○ある店で欠品が生じて売り逃がし、ほかの店では売れ残って廃棄する
著者は、売り逃がしと売り残しをサッカーのゴールにたとえています。
○フォワードがシュートを外す=売り逃がし
○ディフェンダーがゴールを割られる=売り残し
財務諸表では黒字でも、倒産する会社があるのは、会計に以下のような限界があるからのようです。
【財務会計の限界】
○財務会計の数値は過去のもの 機会損失や売り逃がしなどのように、起こらなかったこと・将来のことは表せない
○会計の正しさには、ある程度の幅がある
○正しくない「会計の正しさ」
○財務諸表が表すのは、見積もりによる仮の状態
【会計の限界】
○財務会計の数値を用いるという管理会計の限界
○会計では表せない大切なものもある
そのため、この本の袖には、以下の言葉があります。
決算書をつくるための会計知識より、どんぶり勘定のシンプルさが会社経営には大切だったりする。
どんぶり勘定の「どんぶり」は「丼」ではなく、腹掛けのポケット。昔、職人などが、腹掛けのポケット(どんぶり)から金を出し入れして使ったことからが語源です。
どんぶり勘定は、キャッシュフロー計算書に通じるところがあります。
また、いくつかの用語も紹介されていました。
【損益分岐点分析(CVP分析)】
売上高-費用=0←損益分岐点
CVP分析というのは、操業度(Volume)が変化したときに原価(Cost)や利益(Profit)に対してどのような影響を与えるのかを分析することです。
コスト cost 変動費+固定費
量 volume
利益 profit
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そのCVP分析って、意味ありますか?(管理会計のワナ!その2)より |
巻末で『ザ・ゴール』が紹介されていました。この小説は、TOCを物語形式でわかりやすく説明しています。
TOC(Theory Of Constraints、 制約理論)
TOCは、企業や組織の共通目的である「現在から将来にわたって栄え続ける(Ever flourishing)」というゴールの達成を妨げる制約(Constraints)に注目して、改革や改善を進める事によって企業・組織のパフォーマンスに急速な改善をもたらす手法です。その後TOCは考え方を拡張し、ボトルネックすなわち「制約(Constraint)」こそが企業収益を握る鍵であり、企業内外の様々な活動を制約にフォーカスする事が重要であると主張したのです。
SCM(supply chain management、サプライチェーン・マネジメント)
サプライチェーンマネジメントの「サプライチェーン」とは、原材料が調達されてから商品が消費者に渡るまでの生産・流通プロセスのことで、直訳すれば「供給連鎖」となる。具体的には「原材料・部品調達 → 生産 → 物流・流通 → 販売」という一連のプロセスの連鎖のことを指す。これはサプライチェーンに関わる業者・人間の側面で見れば、「サプライヤー → メーカー → 物流事業者 → 卸売事業者 → 小売事業者 → エンドユーザー」という流れのこと。一方、情報やお金は、サプライチェーンと逆方向に流れることになる。サプライチェーンマネジメントとは、こうしたモノの流れ、お金の流れを情報の流れと結びつけ、サプライチェーン全体で情報を共有、連携し、全体最適化を図る経営手法のことだ。その場合、部分最適の和が必ずしも全体最適を意味するわけではなく、サプライチェーン全体のバランスを見て連携管理することが極めて重要となる。
ABC/ABM(Activity Based Costing、活動基準原価計算/Activity Based Management活動基準管理)
膨らみ続ける間接費を多面的に管理し、その無駄を見つけるための原価管理法としてABC/ABMが考えられたのである。活動基準原価計算(activity based costing)とは、膨張し続ける間接費を管理し、各活動単位に正しく反映させる原価計算法である。この原価計算においては、まず資源の原価が活動に割り当てられ、次にその原価が活動を基にして原価計算対象(製品など)に割り当てられていく。活動基準管理(activity based management)とは、活動基準原価計算によって、活動ごとに把握された原価情報などを活用し、コストの視点から活動の管理に重点を置く技法である。活動の分析を通じてプロセスのムダ(非付加価値活動)が明らかにされるので、リエンジニアリングを実施する際に役立つ方法とされている。
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