投資詐欺の9割を占めるポンジ・スキーム。例えば、エクシア合同会社

「ポンジ」とは、米国の詐欺師、チャールズ・ポンジから名付けられた言葉です。

ポンジスキームは、次のような仕組みになっています。

<1> 元本保証・無リスクをうたい、年10%や20%など高利回りの投資案件で出資者からお金を集める
<2> 運用する(というのは建前で、実際には運用しない)
<3> 後から参加する別の出資者から集めたお金の一部を着服する
<4> 残ったお金を以前の出資者に配当金と偽って横流しする
投資詐欺の9割は「ポンジスキーム」、罠の手法を知って対策をhttps://www.yomiuri.co.jp/otekomachi/20220930-OKT8T348926/

 この詐欺手法を生み出したチャールズ・ポンジ(1882-1949年)は、イタリアからの貧しい移民で、経済について特に学んだことはなさそうです。
 実際、ポンジ・スキームは、出資者から得た資金を配当に回すという、シンプルかつ自転車操業的なシステム
 その特徴は以下のとおりです。

○「元本保証」で投資を募る

 金銭消費貸借契約とは「借金」のことで、金銭を受け取る代わりに、それと同額の金銭(利息がつく場合は利息も含む)を返すという契約です。次の2つの要件があります。
 ① 借主が貸主に、同額を返還することを約束する
 ② 貸主から金銭を受け取る

 ポイントは「同額」。ポンジ・スキームでは、「金銭消費貸借契約を取り交わすと元本が保証される」という文言が使われるとのこと。
 しかし、投資には、元本保証はありません。ですから、「金銭消費貸借契約」と「投資」は両立しないのです。

 また、後で述べるように「合同会社」という会社形態が利用されたこともありました。

○「年30%以上」「月3%以上」と高い金利を提示する

 ポンジ・スキームでは、現実離れした高利回りが宣伝文句に使われます。年数%程度の利回りでは、出資金を集めることができないからです。

○少額で投資できる

 数十万円という少ない額で投資ができるようにして、ハードルを下げています。

○配当金を毎月支払うと約束する

 最初の出資では、毎月配当金が支払われます。これで信用をして、多くの人が出資金を増やしていきます。
 しかし配当金が支払われるのは初期だけで、途中でストップすることがほとんどです。

○高額な紹介料が設定されている

 投資詐欺を行う詐欺師は、紹介者に紹介料を支払っているケースが多々あります。
 紹介する場合は「あなただけに教える」「ここだけの話」「著名人や芸能人も出資している」という文言が使われています。

 では、最近ネットを騒がせた「エクシア合同会社」について見ていきましょう。
エクシア合同会社ホームページより

 使われたのは、「合同会社」という会社形態を利用した投資スキームです。

 そもそも、合同会社は、少人数で出資して、共同で事業を行うことを想定しています。そして、出資者が有限責任の「社員」となり、事業により利益が出たら「配当金」を分配するシステムです。ですから、社員は従業員ではありません。

 資金調達のために、社員権を募集することについては、「金融商品取引会社」としての登録は必要ありません。そのため、不特定多数の投資家に「社員」になる形で、出資を募ることができるのです。
 通常、不特定多数の投資家からお金を集める場合は、厳しい規制を受けます。一方、合同会社だと、法規制を受けずにお金を集められて、運用もできます。

 そのため、合同会社を利用した投資スキームは、2022年10月には使えなくなりました。合同会社が出資者(社員)を勧誘する場合、金融商品取引業の登録が必要となったのです。

 本題のエクシア合同会社については、代表社員(株式会社における代表取締役に当たる)の菊地翔氏は北海道出身で1977年生まれ。東京モード学園を卒業後、6年半の間にFX取引を独学で学び、“天才的なトレーダー”として才能を開花させたとのこと。インスタグラム上では“かけるん”と名乗っていました。

 2009年には、わずか15営業日で「利益率2,520%という驚異的なトラックレコードを記録」(HPより)し、国内プライベートファンドの為替トレーダーや海外ヘッジファンドのアドバイザリー、海外証券会社の為替トレーダーに就任したとの輝かしい記述もある。

 2015年4月に、菊池氏は資本金100万円でエクシアジャパン合同会社を設立しました。シンガポールにある子会社の「エクシア・プライベート・リミテッド」に資金を貸し付けて、運用させ、運用益と貸し付けの返済金がエクシア合同会社に入ってくるという仕組みだったそうです。

 2016年から2019年までの年間運用利回りは、35.33~97.36%!

 しかし、エクシア・プライベート・リミテッドの資産は34万円で、負債は938万円だったとのこと。

 シンガポールの現地法人「エクシアプライベートリミテッド」の2017年から2018年の決算書の「TOTAL ASSET」(資産)の項目には「4236シンガポールドル」と記載されている。当時の為替相場で1シンガポールドルはおよそ81円。つまり、同社の資産はわずか「34万円」に過ぎない。またその決算書の「TOTAL LIABILITIES」(負債)の項目には「115821」とあり、円換算でおよそ938万円の負債があることもわかった。

 2019年9月、エクシア合同会社に社名を変更。シンガポールのエクシア・プライベート・リミテッドではなく、エクシア・デジタル・アセットとエクシア・アセット・マネジメントに出資するようになったようですが、どちらも業績が悪かったようです。
 2022年3月頃から、利益配当金や出資金の払い戻しをせず、社員の退社(出資者への返金)も拒んできたとのこと。当然、訴訟になります。夏には、「エクシア被害対策弁護団」が結成されました。
 
 今年夏、「エクシア被害対策弁護団」が結成された。弁護団によると、9月の第1次提訴は原告32名、10月の第2次提訴は原告22名で、さらに広がる見込みという。
 弁護団は投資家が購入した社員権の「退社」の拒絶と、エクシアの代表社員としての「裁量」で払戻金額の総額の制限を設けている点を問題視している。
 弁護団の事務局長、小幡歩弁護士(リンク総合法律事務所)は、「エクシアは、(決算書など)計算書類なども公表しないため、事業実態がわからなない。信用不安もあり、退社はやむを得ない事情だ。総量の制限の妥当性を判断する上でも運用実績などの開示が必要」とし、エクシア側に開示を求めている。

 ネット上には、エクシア合同会社の組織図などがアップされていました。
https://twitter.com/tousi_seikatu/status/1716618699103424817/photo/4

https://twitter.com/tousi_seikatu/status/1713008391097024724/photo/3

 以上のことから、エクシア合同会社は、ポンジ・スキームと合致しています。

<1> 元本保証・無リスクをうたい、年10%や20%など高利回りの投資案件で出資者からお金を集める
→「合同会社」を利用した投資スキームで、「元本保証・無リスク」(建前)。35.33~97.36%という高利回り(建前)。

<2> 運用する(というのは建前で、実際には運用しない)
→シンガポールのエクシア・プライベート・リミテッドは、約938万円の負債だったわけで、運用どころの話ではないですね。

<3> 後から参加する別の出資者から集めたお金の一部を着服する
→代表社員の菊地氏はキャバ嬢に貢ぎ、その様子をInstagramにアップしていたとのこと。また、ほかの社員もテレビ番組でセレブライフを公開していました。

<4> 残ったお金を以前の出資者に配当金と偽って横流しする
→2016年の年間運用利回りは97.36%については、出資金を運用せずにそのまま社員(出資者)に回していたのでしょう。

 元本保証の金融商品は、金利が安いのが当たり前。また、投資信託の場合、5%前後の運用利回りが相場のようです。
 そして、日興アセットマネジメント マーケティンググローバルヘッドの今福 啓之氏は「毎年固定の3%とか5%とか7%の利回りなんてことは、投資の世界では絶対にない。常に変動するのが投資なのだ」と語っていました。



■参考資料




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