『宗教の起源』ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード その5 メンタライジングで大集団が!
『クラナリ』編集人の住む千葉県市川市の人口は、公式サイトによれば、令和6年4月30日現在で49万4871人です。そして日本は令和6年5月1日現在で1億2393万人です。
生物たちは、生存戦略として群れ(集団)を作ってきたわけですが、49万4871や1億2393万もの集団ができたのは人間ぐらいではないでしょうか。ちなみに、チンパンジーの群れは、20~100頭程度とのことです。
人類の系統とチンパンジーの系統が分かれたのが、700万年前から600万年前までの間のことです。300万年前から200万年前に現生人類の祖先の「ヒト(ホモ)属」が出現したそうです。人類の祖先の脳が大きくなっていくのは、ヒト属からとのこと。その理由は、環境の変化と考えられています。
もともと地球は温暖で、人類の祖先はアフリカの熱帯雨林で、豊富に実る果実などを食べて、のんびり暮らしていました。それが900万年前から800万年前に、地球の寒冷化が始まります。アフリカでは乾燥化も進んで、熱帯雨林はだんだん縮小していきます。
そして、200万年前には、人類の祖先は熱帯雨林を出てサバンナに移動することになりました。
樹木が生い茂る熱帯雨林とは違って、サバンナでは外敵に見つけられやすいうえ、水が少なく、食料は簡単には手に入りません。人類の祖先は、大きな集団を形成し、互いに協力して狩猟や採集などで食料を確保する必要が出てきたのです。
そして、200万年前には、人類の祖先は熱帯雨林を出てサバンナに移動することになりました。
樹木が生い茂る熱帯雨林とは違って、サバンナでは外敵に見つけられやすいうえ、水が少なく、食料は簡単には手に入りません。人類の祖先は、大きな集団を形成し、互いに協力して狩猟や採集などで食料を確保する必要が出てきたのです。
こうした点から、『宗教の起源』(白揚社)の著者であるロビン・ダンバーは、「社会脳仮説」を提唱しました。
ヒトの友人は最大150人!?:人類の成功の秘密は、社会脳にあり
https://wired.jp/2012/08/31/social-brain/
動物のなかで最も力が強いわけでも最も脚が速いわけでもない人類が成功した理由は、抽象的思考を行う能力や、道具を操作する能力や、非常に多様な状況に対応する能力のような、大きな脳に起因する能力にあると、長い間考えられてきた。
しかし、ダンバーにとっては、こうした説明は十分ではなかった。彼をはじめとした人々は、多様で柔軟な仕方で他人と継続的な関係をつくり、共同作業をしたり、考えや意識を共有することができる能力が大きく貢献したと確信していた。
ダンバーは社会脳について仮説を立てた。これによれば、大脳新皮質の相対的な大きさは、社会グループが大きくなるにつれて成長する。このようにして動物は、安定的共存に必要なだけの関係の数を維持し管理することができる。
ヒトの友人は最大150人!?:人類の成功の秘密は、社会脳にあり
https://wired.jp/2012/08/31/social-brain/
社会脳と大きく関係すると考えらえているのが、メンタライジング。他人の心を読み取る能力と説明されることもあります。それと同時に、「自分がどんな心の状態のときに、どのように行動するか」を自分で認識している能力でもあるようです。
心理学の立場から:メンタライジングの発達
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn1969/38/4/38_4_262/_pdf
メンタライジングとは心の理論、あるいはマインドリーディングとも呼ばれ、相手の意図を理解する能力のことだ。p134
メンタライジング(mentalizing)とは,自分自身について考えたり,他者の心について考えたりする心の機能のことである.この能力によって,われわれは他者の行動を予測することができる.物理的環境世界で何が起きているかを知るということ以上に,他者が何を考えているのかを考えることは,複雑な社会的活動に従事するために本質的なものである.なぜならメンタライジングは,同じ社会を共有する成員がお互いに学習したり,協力したりする能力を支えるものだからである.
心理学の立場から:メンタライジングの発達
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn1969/38/4/38_4_262/_pdf
成人の脳は、重さが1200~1500gで、体重の2%を占めています。そして、コミュニケーション能力などに関係する前頭前野が、大脳の29%を占めています。
一方、チンパンジーだと脳の重さは300〜400g。これは体重の1%に相当します。前頭前野については大脳の17%に過ぎません。
一方、チンパンジーだと脳の重さは300〜400g。これは体重の1%に相当します。前頭前野については大脳の17%に過ぎません。
社会脳仮説の核心は、種ごとの典型的な社会集団の大きさと、脳の大きさー厳密には新皮質の大きさーが単純な相関関係にあることだ。
p102
![]() |
| 前頭前野(イラスト/時短だ) |
前の記事で紹介したエンドルフィンは多くの生物に共通して分泌されているのですが、脳と大きく関係するメンタライジングについては人間は他の生物とかけ離れて発達しています。
エンドルフィンでつながれるのは、チンパンジーの群れである20~100程度が限界なのかもしれません。
人間が49万4871や1億2393万もの集団を作り、「私は市川市民である」「私は日本国民である」と認識して協力体制を取れる(税金を払ったり、法律・条例を守ったりする程度……)のは、前頭前野が大いに関係しているようです。
霊長類(ひいては人間)の社会関係の心理学的基盤と、社会的結束に関わる神経生物学的な仕組みについて考察してきた。それは三本の綱が撚りあわせになっている。第一の綱は個人のあいだできずなが出現する過程だ。エンドルフィンの働きと、メンタライジングおよびホモフィリーの基盤となる認知機構、この二つから結束感が生まれる。第二の綱は、親密な友情を生むこうした仕組みが、いかにしてより大きな共同体の結束に用いられてきたかだ。第三は宗教の教義的な概念を処理する私たちの能力に、認知的要素、とくにメンタライジングがどう関わるかである。p147
「ホモフィリー」とは、同じような属性の人とつながりやすい傾向のことで、『宗教の起源』では「友情の七つの柱」として以下が紹介されていました。
〇言語
〇出身地
〇学歴
〇趣味と興味
〇世界観(宗教、道徳、政治の立場)
〇音楽の好み
〇ユーモアのセンス
霊長類の社会的結束は二重のメカニズムによって生みだされる。エンドルフィン系とそれがつくりだす結束感が、信頼を醸成する薬理学的な環境を整え、そこから第二の、より認知がからむメカニズムが働きはじめるのだ。(中略)名づけて「友情の七つの柱」である。具体的には言語、出身地、学歴、趣味と興味、世界観(宗教、道徳、政治の立場)、音楽の好み、そしてユーモアのセンスである。家族でも友人でも、これらの共通点が多いほど関係は強固になり、相手のために行動する気持ちが強くなる。
p129
サルや類人猿と同じく個人どうしの結びつきでつくれるのは小さな集団までだが、七つの柱があるおかげで、構成員が誰であるかに関係なく、私たちは巨大集団という抽象的な概念との結びつきを持てるのだ。p133
また、メンタライジングは宗教と根本的に関係しているとロビン・ダンバーは述べていました。『クラナリ』も、長く回り道をしてきましたが、ようやく宗教の話題を始められそうです。
■参考資料
人類が地上に降りた理由、森の気温と季節の出現によるものか -チンパンジー、ボノボの生活様式から仮説を提示-
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2017-07-19
メンタライジングが、宗教の出現に根本から関わっているのだ。
第一に、人智を超えた別の宇宙があって、霊的存在がそこにいることを想像できなければ、いかなる宗教も生まれない。p138
第二に、自分以外の生き物に精神があることを理解できなければ、別の霊的世界には糸を持った存在がいるかもしれないということも想像できないだろう。
第三に、ある文の文法構造、もしくは命題を読みとく能力は、メンタライジング能力と直接結びついている。
そして第四の理由だが、これが最も重要だ。自分の観念を他者に伝達する能力がなければ、どんな形式であれ、宗教は成立しない。神の存在を信じることもできるだろうが、それだけでは宗教とはいえない。それはただの信念だ。少なくとも二人が同意して初めて信念は宗教になる。
■参考資料
人類が地上に降りた理由、森の気温と季節の出現によるものか -チンパンジー、ボノボの生活様式から仮説を提示-
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2017-07-19

Leave a Comment