腎臓を巡る、長く、曲がりくねった物語 その15 実質と間質

 体のすべての組織は、実質と間質で構成されています。組織の機能の中心となっている部分が実質で、その周辺にあり実質を支えている部分が間質です。

組織

 細胞成分

  実質(parenchyma):機能の中心となっている部分

  間質(stroma):実質の周辺にあって支持している部分
   脈管系の細胞(血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞、周皮細胞など)
   血球系・免疫系の細胞(リンパ球や好中球、マクロファージなど)→炎症反応や創傷治癒反応に重要な役割
   神経系の細胞
   線維芽細胞
   脂肪細胞

 非細胞細胞(細胞外マトリクス、extracellular matrix、ECM)

   低分子代謝物質
   シグナル伝達に関わる液性因子(増殖因子やサイトカインなど)
   細胞外基質(extracellular matrix:ECM、コラーゲンやフィブロネクチン、ヒアルロン酸など)
実質と間質(がん微小環境における線維化とナノ DDSより、一部改変)



 実質と間質がわかりやすいのが、皮膚です。

 皮膚の重要な機能が、バリア機能。体の中からの水分の蒸発、そして体の外からの病原体などの侵入を防いでいるのが、皮膚です。
 そんなバリア機能の中心になっているのが表皮。化粧品のコマーシャルで「角質層に~」というワードが頻出しますが、角質層(角層)は表皮の最も外側の層ですね。

 そして、やはり化粧品のコマーシャルで「張りと弾力を~」「コラーゲン」「エラスチン」というワードが頻出しますが、張りがあろうとなかろうと、さほどバリア機能には影響はないでしょう。
 そのようなわけで、皮膚の実質と間質は、次のようになります。

 実質:表皮
 間質:真皮、皮下組織
皮膚の構造(あたらしい皮膚科学 第3版より)

皮膚断層像(花王ニュースリリースより)



 強度の高いコラーゲンと、柔軟性のあるエラスチンという2種類のタンパク質が、網目構造になって、緩衝材の役割を果たしています。
ゴルフネットは、打ったボールの衝撃を吸収



 また、血管が通っているのは間質です。毛細血管が真皮全体に張り巡らされ、皮下組織にある動脈と静脈につながっています。

 毛細血管からにじみ出した血漿が、間質を満たす間質液(組織液)になります。
 表皮の細胞は、間質液から酸素や栄養を取り入れて、二酸化炭素やゴミ(老廃物)を間質液に出しています。

 体重の15%に当たる間質液が、細胞と細胞の間を満たしています。




 間質液の移動経路が、間質です。ですから、間質液を介して、細胞が情報を伝え合って連携し、全身に間質というネットワークを張り巡らせているというという主張も、アメリカで2018年に出てきました。

 日本でも、間質の研究が進められているようです。

現在、研究者によって定義が異なる間質を再定義する【間質リテラシ―】を完成させることを私達は目指しています。

従来「間質」が名称に付く疾患(例えば、間質性肺炎、尿細管間質性腎炎、間質性膀胱炎など)において、「間質」は様々な原因に由来する病態が生じる「場所」を示しており、原因や病態を反映してきませんでした。また、炎症、線維化は、間質を主座として生じますが、個々の臓器や疾患における間質応答の特異性は全くと言ってよいほど理解が進んでいません。またがんには豊富な間質を認めますが、実質のみの病変と理解されがちであります。

間質性細胞集団(線維芽細胞、免疫細胞、血管、神経)の間にどのような細胞間クロストークが生まれるのか、またそのクロストークの実質に対する機能的意義は未だ明らかになっていません。
全身の臓器は実質と間質とから形成されている。間質は実質を支持する部分と考えられていたが、実際に病気が起こって増悪する過程ではその間質で起こる変化が、実質機能に影響を及ぼしている。本研究提案では「間質」を切り口として、その場の構成する主要成分で分類される4つの領域である①免疫系、②神経系、③血管・リンパ管系、④間葉系が既存の枠を超えて領域横断的に研究を行うことにより、病態の発症・進展において間質に時空間特異的に出現する多様な細胞群の細胞間クロストーク(複雑系細胞クロストーク)を明らかにすることを目標とする。さらに、間質性細胞クロストークの変化が実質に与える影響をあきらかにすることにより、疾患の進行機序の全貌を解明する。


 また、新型コロナウイルス感染症では、間質性肺炎を発症して死亡した例もありました。

 あくまでも素人がネットで調べた範囲では、間質の炎症で思い健康障害が起こるのは、腎臓と肺でした。どちらも、生物が進化の過程で陸上に生活を送るようになって、大きく発達した臓器という点で、ちょっと気になります。

■参考資料
あたらしい皮膚科学 第3版(1章)

がん微小環境における線維化とナノ DDS

ヒトの器官で最大の器官が新たに発見される

間質リテラシー

腎尿細管間質性病変,疾患の変遷

新型コロナウイルスと間質性肺炎

シワが皮膚のどの深さの構造変化によってできているかを特定

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