酸化(oxdation)について、超文系人間が調べてみた

「酸化」 とは、「原子またはその原子を含む物質が 電子を失う 変化」です。
「還元」 とは、「原子またはその原子を含む物質が 電子を受け取る 変化」となります。

 えー! 酸素は関係ないの?
 酸素oxygenだから、酸化 oxdationじゃないの?

 裏切られた思いがします。
 そんなわけで、酸化について、過去から順番に考えていきます。

〇フロギストン(燃素)説 「燃焼とはフロギストンという物質の放出の過程である」

 ヴィッテンベルク大学医学教授ゼンネルト(Daniel Sennert、1572-1637年)が、1619年に発表した『化学派とアリストテレス派並びにガレノス派との一致と不一致』には、以下の記述があるとのこと。
 「多くのものに同一の性状や質が内在する場合、共通の原理(原質)によって内在するのでなければならない。例えば、あらゆるものは土のせいで重く、火のせいで熱いのである。そして、色、臭い、味、可燃性(フロギストン)やその他同様のことが鉱物、金属、宝石、鉱石、植物、動物に内在している。それゆえ何か共通の原理や基体により内在しているのである。しかしそのような原理は、元素ではない。元素はそうした質を生み出す力をもたないからである。それゆえ別の原質が探し求められなければならない」

 フロギストンはギリシャ語で、炎や燃焼性を意味しています。

 宮廷錬金術師のベッヒャー(Johann Joachim Becher、1635~1682年)は、『地下の自然学』(1669)で、土に 3 種類を設けたとのこと。
1 流動性、稀薄性、金属性を担う液状または水銀状の土
2  油性、硫黄性、可燃性を担う油状または脂肪質の土
3  融性と固定性を担う石状またはガラス質の土

  ベッヒャーの考えを受けて、シュタール(Georg Ernst Stahl、1659/60-1734年)は、すべての燃える物質に可燃性原質のフロギストンが存在すると考えたとのこと。どういう経緯でそう考えたのかは、以下の文献を参照してください。紆余曲折があります。


〇酸素の発見1

 イギリスの科学者であるジョーゼフ・プリーストリー(Joseph Priestley、1733-1804年)は、熱心なフロギストン論者だったとのこと。1774年に実験で酸素を発見していますが、もともとフロギストン論者だったことから、酸素を「脱フロギストン空気」と呼んだようです。酸素を見つけながらも、終生フロギストン説を堅持し続けたそうです。

〇酸素の発見2

 燃焼を研究していたアントワーヌ・ラヴォアジエ(Antoine-Laurent Lavoisier、1743-1794年)は、フロギストン説には否定的でした。物が燃えるのは、空気の一部が吸収されるからだと考えたようです。
 プリーストリーが発見した「脱フロギストン空気」を知ったラヴォアジエは、それをベースに実験を行い、「燃焼は、物質と空気中の酸素との結合」と結論を下しました。
 1777 年には、「燃焼一般について」という題で以下の発表を行いました。
(1)すべての燃焼において、火または光の物質が発散する。
(2)燃焼は「脱フロギストン空気」の中でしか起こらない。この空気をここでは「純粋な空気」と呼ぶ。
(3)すべての燃焼において、「純粋な空気」の分解が起こり、この分解が起きた分だけ燃焼物の重量増加がある。
(4) すべての燃焼において、燃焼した物は酸(acide、仏語)になる。

 その後、「純粋な空気」「高度に呼吸可能な空気」などと呼んでいたものを、酸の元としての「酸素」と呼ぶことを、論文「酸の本質についての一般的考察」で提唱しました。ギリシャ語のoxys(酸)とgenen(生む)を合わせ、「oxygène」と名づけたのです。
 「燃焼とは空気中に含まれる酸素が可燃性化合物と化合することである」としたラヴォアジエは、酸化と還元を次のように定義しました。

 「酸化とは物質が酸素と化合する反応であり、還元とは酸化物から酸素が抜ける反応である」

アントワーヌ・ラヴォアジエ(Wikipediaより)



〇電子の発見

 1897年に、イギリスの物理学者であるジョセフ・ジョン・トムソンが電子を発見しました。
 電子の電荷は、アメリカの物理学者ロバート・ミリカンとハーヴェイ・フレッチャーが1909年に行った油滴実験でより精密に測定されて、その結果は1911年に発表されたとのこと。

〇「酸化に酸素が必要というわけではない」という発見

 19世紀に入ると、「すべての燃焼において、燃焼した物は酸になる」わけではないとわかりました。もはや「酸」化ではないのですが、「酸化」「還元」という表現は残ったのです。
 イギリスの化学者やドイツの化学者ヴィルヘルム・オストヴァルト (Friedrich Wilhelm Ostwald、1853-1932年)は、酸化還元反応は電荷を持った物質のやり取りだと考えました。
 ちなみに、「モル」という単位は、1900年頃にオストヴァルトが最初に用いたといわれているとのこと。

〇現在

 1912年、ドイツの自然科学者であるゲオルク・ビューヒナー(G.Buchner、1813-1837年)が、酸化還元反応で電子(e-)のやり取りが発生しているという説を主張しました。
 アメリカの化学者のハリー・シップレイ・フライ(Harry Shipley Fry 、1878-1949年)も同じ考え方をもとに、1914年には「酸化は、原子またはその原子を含む物質が 電子を失う 変化」「還元は、原子またはその原子を含む物質が 電子を受け取る変化」と発表。現在の酸化・還元の考え方になっています。

「酸化される」

酸素を受け取る
水素を失う
電子を失う
酸化数増加

「還元される」

酸素を失う
水素を受け取る
電子を受け取る
酸化数減少
酸化剤:相手を酸化して、自身は還元される
還元剤:相手を還元して、自身は酸化される



〇おまけ 活性酸素

 人間は酸化還元反応を利用して、エネルギーを生み出しています。エネルギー代謝の副産物として、活性酸素が発生します。そのほかにも、さまざまな発生原因があります。

発生原因
生理的因子:呼吸、白血球などによる異物や細菌の処理(体内に侵入したウイルスや病原菌を退治)、薬物の代謝処理など
病的因子:虚血再還流、過度の運動、精神的・肉体的ストレス、感染、炎症など
外的因子:喫煙、紫外線、放射線、大気汚染、重金属など

活性酸素種(ROS:reactive oxygen species):反応性の高い酸素種の総称
スーパーオキシド(superoxide:O2•-)
過酸化水素(hydrogen peroxide:H2O2)
ヒドロキシラジカル(hydroxyl radical:•OH)
一重項酸素(singlet oxygen:1O2)
など
※スーパーオキシドとヒドロキシラジカルは、フリーラジカルと呼ばれている

 体内には酸化から体を守る能力が備わっています。その能力を上回る活性酸素は、タンパク質や脂質、糖質、核酸などを酸化し、生理機能の低下、病気の発症や進行、老化などの一因となります。


 活性酸素の発見は、1940年代のようですが、発見者についてはネットでは見つけられませんでした。
 発見当時は、活性酸素が細胞の中にあるミトコンドリアで作られて、体を守る働きがあるとけ認識されていました。

 アメリカの化学者であるデナム・ハーマン(Denham Harman)は、1956年にフリーラジカル説に関する論文を発表しました。フリーラジカル説とは、活性酸素が老化の主原因であり抗酸化物質により、それを遅らせることができるはずだという説です。
 ただ、ほとんど注目されなかったとのこと。

 1967年にホームズ?(Holmes)が、慢性肉芽腫の白血球を使って、殺菌作用の仕組みを解明したのですが、その主力は活性酸素だったとしています。

 そして、1969年に、アメリカの生化学者のアーウィン・フリドビッチ(Irwin Fridovich、1929-2019年)は、大学院生のジョーM.マッコードとともに、活性酸素不均化酵素(スーパオキサイドデイスムターゼ、SOD)を発見しました。不均化(disproportionation)とは、1種類の物質の2分子以上が、互いに酸化・還元などを行い、2種類以上の物質を生じる反応のこと。


■参考資料
化学と歴史のネタ帳 滴定の歴史(4):酸化還元滴定の発明

Wikipedia

後藤先生の徒然日記
フリーラジカル説の父デナム・ハーマン博士死す (2015年9月14日)

生体内のレドックス(酸化還元)反応と活性酸素種

 ※フリーランスの編集者・ライターである『クラナリ』編集人(バリバリの文系)は、腎臓に関する記事や書籍に携わる機会が多いため、それに関連していろいろと考察しています。素人考えですが。
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