「お金と爽やかにつきあう」 山崎元さんに勝手に教わるお金と生業4 『お金とつきあう7つの原則』
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| 『お金とつきあう7つの原則』より |
クラナリの周りには共働き夫婦が多いのですが、「実は家庭内別居の状態」「本気で離婚を考えている」というケースに遭遇しています。不仲になる理由は、もちろん、複雑に絡み合っているものですが、よくよく聞くとお金が大きく関係していました。共働きでは家計のために双方がお金を出すのですが、その際に“不平等”があり、長い期間を経てこじれていき「口もききたくない」という感情を抱くようです。
お金と感情は激しくもつれ合うので、なかなか厄介です。
お金が絡んだケースといえば、 東京科学大学の21歳の女子大生が覚醒剤所持で逮捕されたニュースで驚きました。
文春オンラインによると、2024年の2~3月頃に、女子大生は六本木の路上で性接待のスカウトに声をかけられたそうです。ここで女子大生はスカウトと連絡先を交換します。
すると、スカウトから女子大生に、時給20万円の高額案件が紹介されました。そして女子大生は、3月に、スカウトから紹介された仕事のため、ホテルの一室に向かいます。そこで、女子大生は無理やり大麻を口に入れられたとのこと。
後日、女性大生はスカウトから300万円の現金が手渡されました。
ただ、報酬はあまりに高額だ。まして彼女は一般の学生。カネの魔力に抗えなくなったのか、誘いに応じ続けたのだ――。
東京科学大学に入学するために、女子大生は頑張って勉強してきたに違いありません。それに21歳という若さ。
そんな過去も将来も棒に振るほど抗いがたいのが「カネの魔力」ということなのでしょうか。
経済評論家の山崎元さん(2024年没)は「一生を通じてお金と爽やかにつきあうためには、多少の知識と実践のコツが必要だ」と『お金とつきあう7つの原則』(KKベストセラーズ)で述べていました。
お金そのものは概ね便利なものだし、普通は、あって困るというものではない。しかし、お金というものがあるせいで、人が幸せになれなかったり、不自由は思いをしたり、ということがあるのも事実だ。お金に対して不用意だと、生活や心を傷める場合がある。
『お金とつきあう7つの原則』には共働き夫婦の家庭内別居や、覚醒剤所持で逮捕された女子大生は登場しないのですが(当たり前の話ではありますが……)、本書の内容をもとにこの2つのケースについて検討してみました。
ポイント1 お金をたくさん持っている人、またお金をたくさん稼ぐ人ほど、えらいのか
お金とは、支払いの手段に過ぎません。にもかかわらず、カール・マルクスが指摘した「貨幣の物神性」のように、お金自体が神秘的な力を帯びて、商品の価値や人間関係も規定されてしまいがちです。
女子大生のケースでは、資産300億円といわれる不動産投資会社元会長は、高額報酬で女子大生をホテルの部屋に呼び出して、薬物を強要したり暴力を振るったりしたとのこと。おそらく、不動産投資会社元会長は「金持ちの俺はえらい」「だから、お金を欲しがっている人間をどう扱ってもかまわない」という思考回路の持ち主だったのでしょう。
また、共働きの場合は、夫と妻でそれぞれの財産も収入もぴたりと一致することのほうが稀です。そんな「お金の差」が、「家計のためにどれだけのお金を出し合うか」「家庭を維持するために家事などをどれだけ分担するのか」などにも影響を及ぼしがちです。「私のほうが多く稼いでいて、家計にもお金を多く入れるから、その分、家事はあなたがやらないと“不平等”でしょ」というような力関係が生まれるわけです。一方、「私はそれほど稼げていないから、嫌いな家事もやるべきなんだな」という引け目も発生します。
難しいのは、平等というのは感覚的なものなので、夫婦でも「何をもって平等とするか」が違う点です。
さらに、“不平等”を解消するために、家事をお金に換算し始めると、息苦しくなってしまいます。「家族で気持ちよく過ごすために掃除しよう」と捉えるか、「掃除は○円に換算できるから、洗濯はやってもらわないと不平等」と捉えるかで、モチベーションは大いに変わるのではないでしょうか。
お金は多くのものに交換できる一般性を持っている。加えて、金額が数字で表れる。このため、多くのものの価値をお金に換算することができる。油断をすると、人間の価値までお金で計れるような感覚に支配される。これも注意が必要な点だ。
→仕事(家事を含む)や人間の価値をお金で計れるような感覚に支配されがちなので、要注意
ポイント2 お金の話は「汚い」「下品」なのか
共働き夫婦の妻と話す機会が多いクラナリですが、お金については結婚時に話し合った程度で、その後の数十年は夫婦間の話題にしていないようでした。結果として、「5年前に私が出したお金が……」などのわだかまりが、長い時間を経てドロドロとした怨念に変わっていくようにクラナリには見えました。
怨念になると、合理的に考えられなくなります。怨念化を防ぐために、人生の節目に、家庭でお金について話し合う機会があってもよいのではないでしょうか。結婚、出産、育児、退職などで、生活に必要なお金や価値観は変化します。
そのほか、仕事のインタビューで出会ったのは、借金まみれだけど夫の散財を止められない妻でした。「クレジットカードのキャッシングで、借金を返す」というサイクルにはまり込んでいたのですが、「お金のことを話すと、夫の機嫌が悪くなるから……」と語っていました。
さらに、夫が定年退職した後、「なんだ、ウチには金がないじゃないか!」と言われて腹を立てている妻もいました。仕事一本の夫のそばで、彼女は一人で家計をやりくりしてきたからです。
そういえば私たちは、子どもの頃から家庭内でお金の話をやってきませんでした。父親と母親が家計について話し合っている姿を見たことがない人のほうが多いでしょう。それが代々続いてきたのですが、不満がたまったり、火の車になっていたりするぐらいならば、伝統を打ち砕いて、お金についてこまめに話をしたほうがよいように思えます。
何はともあれ、お金については目をそらさず、状況を直視することが重要だ。そして、お金に振り回されるのではなく、お金を合理的に使いこなすことが大切だ。
→お金の話題を避けないスタンスで
最後に、書名にある「7つの原則」を紹介します。
爽やかにお金と付き合うための7箇条その1 小さな節約をしないその2 「人的資本」に投資するその3 お金の計算は安全なほうに間違えるその4 お金は(なるべく)貸し借りしないその5 国内外の株式に分散投資するその6 買値ではなく未来を考えるその7 怖いのは市場リスクよりも「人間」と心得る
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『いま生きる「資本論」』(新潮社)で佐藤優さんは、なんでも商品化する資本主義のシステムを、家庭内に持ち込むべきではないと語っていました。例えば、子どもにお手伝いをお願いするときに「皿洗い ○円」「風呂掃除 ○円」などと価格をつけると、お金を支払わなければお手伝いをしなくなるからです。
金銭のやり取りを発生させずに人間関係を育む場が、家庭ということになるのでしょう。


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