わざわざ損をするという、非合理的な行動を取る5つの理由 山崎元さんに勝手に教わるお金と生業5 『「投資バカ」につける薬』
クラナリについては、学生の頃から金融商品を購入し、結果として現況は「不安定なフリーランスの仕事でも、取引先が倒産しても、気が狂うことなく生活が継続できている」程度に運用ができています。
とはいえ、ここに至るまでに手痛い失敗を多数やってきました。
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『「投資バカ」につける薬』 |
かつて、毎月分配型ファンドを購入していました。理由は、当時、それがとっても人気だったから。
しかし、しばらくしてやめました。手数料が高いと気づいたのです。これこそ、「投資バカ」だと、経済評論家の山崎元さん(2024年没)が書いた 『「投資バカ」につける薬』(講談社)の中で取り上げられていました。
投資家が、不利な毎月分配型ファンドを買うという非合理的な行動に出る理由は、行動ファイナンスの面から見ると、私の思いつくかぎり五つあります。
1 メンタルアカウンティング(心の会計)2 代表性のヒューリスティックス(および認知的不協和)3 プロスペクト理論4 時間選好率の歪み5 後悔回避
それぞれについて、調べてみました。
わざわざ損をするという、非合理的な行動に出る5つの理由
1 メンタルアカウンティング(心の会計)
大変な仕事をして得たお金は慎重に使おうとするのに対して、ギャンブルで儲けた利益はあぶく銭と考えて簡単に使ってしまうことなど。
2 代表性のヒューリスティックス(および認知的不協和)
代表性ヒューリスティックスは、代表的・典型的なものだけで、全体も同様だと結論づけることです。
また、認知的不協和は、「ダイエットしたい」と思っているのに、ケーキを食べて自分を責めるなど、人が自身の認知と行動の間に矛盾や不調和を感じ、不快感やストレスを覚える状態です。
3 プロスペクト理論
得することよりも損のほうに敏感に反応すること。投資家の場合は、収益が出ている場合は損失回避的な利益確定に走りやすく、損失が出ている場合はそれを取り戻そうとしてより大きなリスクを取るような投資判断を行いやすいとされています。
4 時間選好率の歪み
時間選好率とは、現在の消費を犠牲にして、どれだけの将来の消費の増加を望むかということ。時間選好率が高い人は、未来によりも今得られる満足を優先する傾向があります。
また、「せっかちさ」を計測するのが時間割引率です。例えば、今もらえる1万円と1年後にもらえる1万円を比較すると、誰でも今もらえる1万円を選択します。では、今の1万円をどこまで割り引いたら、1年後の1万円と同じ価値と感じるのかが、時間割引率です。「5000円でも今欲しい」という場合、時間割引率は50%です。時間割引率の大きいほど「少ない金額でもすぐ欲しい」、つまり非常にせっかちということです。
5 後悔回避
意思決定場面で、将来の結果を予測して、後悔による不快な状態を避けるように決定することです。
投資については、結局のところ、「手数料」をきちんと把握することが大切だと感じられました。
毎月分配される場合は、分配に関係する手数料を、1年ごとよりも12倍も払うことになるということ。
よくわかりもしないのに、なんとなく「安心」「お得」と思い込んで、金融商品に手を出すところに問題があったのでしょう。学生の頃に金融商品を購入したのも、雑誌か何かで知っただけで、投資についてはよく理解していませんでした。
以下は、 『「投資バカ」につける薬』からの引用です。赤い太字は山崎さんが想定した金融機関のセールストークで、それに対する山崎さんの突っ込みが青い太字です。
第1部 「常識への問いかけ」編
その常識、ホントは間違いだらけ!
「いま投資すれば、確実に儲けることができます」と言われたら…
「だったら、なぜ自分で投資しないのですか?」
仮に、あなたが自分の儲けにつながる百パーセント確実な情報を入手したとき(そんなケースはほとんどないと思いますが)、その情報を赤の他人に教えたいと思うでしょうか。自分が儲けたいと思っているかぎり、まずそんなことは思わないはずです。それもかかわらず、あなたに情報が伝わってくるということは、すでにその情報の速報性が失われているか、あるいは発信者に何らかの意図があると考えるべきでしょう。
「長期投資をすればリスクを減らせるので、大きくリスクを取れます」と言われたら…
「リスクが減少する根拠を具体的に提示してください」
年齢や運用機関でモデル・ポートフォリオを強引に当てはまようとするファイナンシャルプランナーを見かけた場合は、「この人はインチキを言っている」と考えていただいてまったく問題はありません。
実際には、長期投資は、一定の投資期間当たりの一時的なコスト(手数料など)の負担を少なくするために非常に有効な手段です。その一方で、短期投資はコスト面で「話にならないぐらい不利」なのです。
もちろん、長期に貯蓄して運用しなければ大きな資産を形成することは難しいので、やはり長期投資は資産運用の「基本中の基本」と言えるでしょう。それは運用方法自体の有利不利の問題ではありません。しかし、それと「長期投資でリスクが縮む」という誤った考え方の間には何の因果関係も存在しないのです。
「低金利の銀行預金で資産運用するのはバカバカしいと思いませんか?投資信託なら高い利回りが期待できます」と言われたら…
「コストの高い投資信託が、なぜそんなにお勧めなのですか?」
「チャート分析を勉強すれば、売買のタイミングがわかるようになります」と言われたら…
「では、チャート分析法の有効性を示すデータを見せてください」
乱暴な言い方で恐縮ですが、チャート分析を使えば、「バカでも意見が持てるようになる」のです。
「もうすぐ日本の財政は破綻し、資産課税の預金カットが行われます。今のうちに外貨建て商品に資産を移しておきましょう」と言われたら…
「国家財政が10年以内に破綻する確率はどのくらいですか?」
まず消費者の恐怖心を煽り、「それは大変だ」と思わせたところで、危機への対応策として自分が売り込みたい金投資やプライベートバンクなどの運用商品に目を向けさせる。それが金融業界におけるマーケティングの常套手段なのです。
結論から言えば、日本がデフォルトになる可能性は当面かなり低いと思います。
日本の長期金利が海外の主要国よりも高くなり、円安を止めるための介入が行われるような事態になった場合には、円建て資産の安全性を心配すべきかもしれません。
インフレへの対策というのは、実際にインフレ率が2~3%に達した時点で行っても決して遅くはないのです。
第一、この先日本が再びデフレに陥る可能性もまだ残されているのです。
大事なのは普段から経済状況のチェックを欠かさないことであり、先走って運用商品に手を出すことではありません。
「あなたが倒れたら、後に残されたご家族はどうなるのですか?生命保険への加入は、家族に対する当然の責任です」と言われたら…
「その生命保険の付加保険料を教えてください」
第2部 「情報への問いかけ」編
情報に踊る人は儲からない
「私の編み出した投資法は完璧です」と言われたら…
「その投資法が正しいのなら、どうして皆が真似しないのですか?」
「良いファンドを選べば、手数料を差し引いてもベンチマークより高い利回りが期待できます」と言われたら…
「良いファンドをなぜ事前に見分けられるのか、その根拠を説明してください」
「ファンド(ファンドマネージャー)の良し悪し」はコントロール不可能なファクター(要因)ですが、「手数料の多寡」はコントロール可能なファクターです。従って、なるべく手数料の安いファンドを選ぶか、あるいは自分にとって中身の分かりやすいファンドを選ぶことを第一に考えるべきです。
「効率の良い銘柄に集中投資するべきです。その方がガツンと儲けられますよ」と言われたら…
「集中投資をすれば、リスクも集中してしまうのではありませんか?」
投資信託の信託報酬が例えば0.5%程度まで下がるようなことがあれば、その時は投資信託の購入に踏み切っても別段構わないと思っています。なぜなら、投資信託にははっきりとメリットがあるからです。それは前述のように、少額の資金でも分散投資が可能になることです。
ここで分散投資をスタートする「コツ」を簡単にまとめると、次のようになります。
1 "塊"を持たずに、ウェイトをばらす。2 時価総額の大きい東証1部上場の銘柄を選ぶ。3 異業種の銘柄を選ぶ。4 ナンピン買い(株価が下がったときの買い増し)をしない。
「世の中に無難な運用商品などありません。ある程度のリスクをとってこの商品で高いリターンを期待しましょう」と言われたら…
「その商品は、個人向け国債+日本株の組み合わせより、どれだけ優利なのか、数字で教えてください」
トヨタの社債も、通貨としての円や円預金などの信頼性に依存することになるので、個人向け国債よりも安全ということはありません。好き嫌いの問題は別にして、信用リスクについては、やはり国債は最もリスクの小さい運用商品の一つだと考えていいでしょう。
「賃貸マンションにいくら家賃を注ぎ込んでも、自分のものにはなりません。思い切って自分だけの白を手に入れませんか」と言われたら…
「不動産で儲けられるのは不動産屋と銀行だけではありませんか?」
第3部 「流行への問いかけ」編
流行に乗ろうとすると火傷する
「毎月分配型ファンドがこれだけ売れているのは、個人投資家のニーズに合った商品だからです」と言われたら…
「毎月分配型ファンドは、本当は損なのではありませんか?」
「ドルコスト平均法で投資すれば、リスクが減って、購入単価が低下するので有利です」と言われたら…
「リスクが集中し、余計なコストがかかるドルコスト平均法のどこが有利なのですか?」
要するに、ドルコスト平均法とは単なる気休めに過ぎず、それ自体は有利でも不利でもありません。気休めでもそれが無害なら別に構わないのですが、実際にはリスクの集中の問題があり、チャンスを無駄にしているという側面があり、加えて手数料も余分に支払わなければなりません。
「成功報酬型の手数料ならフェアですし、ファンドマネージャーも真剣に運用しますよ」と言われたら…
「成功報酬型とは、ただでオプションを渡しているようなものではありませんか?」
「外貨預金なら、高金利で資産を運用できます」と言われたら…
「どの通貨で預金しても、円で測った期待リターンは似たようなものではありませんか?」
「日本に住んでいるかぎり、お金は円という通貨で使うのだから、全資産を円で所有して何の不都合があるのだろうか?」と言えるからです。
「紙幣は紙くずになりえますが、金は価値を失うことがありません。資産の一部を金塊で所有することをお勧めします」と言われたら…
「金利や配当が得られない金への投資がなぜお勧めなのですか?」
たとえ話をすると、金の現物は「まったく働こうとしない美人の奥さん」のようなものです。確かに美しいので、近くで眺めている分には楽しいかもしれません。しかし、何も稼いでくれない上に、保管コストも高くつき、また「盗まれる心配」までしなければならないのです。しかも、金には大きな価格リスクがあり、売り買いの際には手数料や売買値差がコストとしてかかります。
「この商品は、顧客のニーズに合わせて、最新のデリバティブを使って運用されるものです」と言われたら…
「売り手が計算間違いをしない限り、デリバティブで買い手は儲からないのではありませんか?」
「ペイオフ解禁で銀行預金にすらリスクが伴う時代になりました。早めに海外のプライベートバンクに資産を移しましょう」と言われたら…
「法律も制度も異なる異国のプライベートバンクを、英語もろくに読めない私にどう信用しろと言うのですか?」
なぜ得体の知れないスイスの銀行を信用することができるのでしょうか。
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