【ほったらかし投資勉強会】マニュアルを1人暮らしの20代会社員が使うケース
少子高齢化が進む日本。年金やライフライン整備といったさまざまなところで、高度成長期の感覚で突き進んできたツケが回ってきています。
そんな世の中で、「これからどう働くのがいいのか」「どんな生き方がいいのか」と迷っている大学生や社会人は少なくないでしょう。
2024年1月に65歳で亡くなった経済評論家の山崎元さんは、がんで余命宣告を受けた際に、大学生になった息子に向けて手紙を送っています。
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『経済評論家の父から息子への手紙: お金と人生と幸せについて』 |
お金の稼ぎ方では「株式」に上手く関わることがコツになる。起業でも、ベンチャーへの参加でも、ストック・オプションをくれる会社への転職でもいい。私の時代は、出世したり専門家になったりして「労働時間を確実に高く売る」のが無難な道だったが、時代は変わった。株式性の報酬が有利だ。「自分を磨き、リスクを抑えて、確実に稼ぐ」ことを目指す古いパターンよりも、「自分に投資することは同じだが、失敗しても致命的でない程度のリスクを積極的に取って、リスクの対価も受け取る」のが、新しい時代の稼ぎ方のコツだ。リスクに対する働きかけ方が逆方向に変わった。仕事で株式性のチャンスに恵まれない場合は、インデックスファンドの長期投資が効率のいい株式リスクとの付き合い方になる。これは、凡人でもできるけれども、一見偉そうな他の投資よりも優れている。お金にも働いて貰うといい。以上、平凡だけれども、経済評論家としてアドバイスしておく。
昭和世代は、「自分を磨き、リスクを抑えて、確実に稼ぐ」ために、長時間勉強して、長時間仕事をしていました。私が編集者として出版社で働いていた頃は、残業で会社に泊まる同僚もいました。「長時間働くほど、がんばっている」「誇らしい」「えらい」といった価値観も、なんとなくありました。そして、出版業界も今ほど収益面で大変ではなかったため、残業代が出ていました。
しかし、今は違います。裁量労働制(実際の労働時間に関係なく、あらかじめ労使で定めた時間を労働時間と見なして賃金を払う制度)を取り入れている出版社は珍しくありません。長時間残業しても、給料(残業代)はつかないのです。
もう一ついえば、大ヒットを飛ばしたからといって、すぐに給料が上がるわけでもありません。特別手当などが出る企業もあるでしょうが、私の周辺では聞いたことがありません。ヒットメーカーに対して、出世という形でのインセンティブはあります。ただ、その分だけ会議やらなんやらで仕事が増えて、拘束される時間も増えていました。
出版社に限らず、日本の企業はだいたい似たような感じではないでしょうか。
私は地味な編集者ではありますが、ヒットメーカーよりも資産形成ができているかもしれません(資産の具体的な額を互いに示したわけではありませんが)。
その理由は、大学生の頃からなぜか金融商品(金銭信託)を購入し、就職するとともに給料天引きで貯蓄を始め、株その他でいろいろと失敗しましたが、最終的にほったらかし投資を取り入れたからです。「不安定なフリーランスの仕事でも、取引先が倒産しても、気が狂うことなく生活が継続できている」程度に運用ができています。
時間は力なり
「これからどう働くのがいいのか」「どんな生き方がいいのか」と迷っている大学生や社会人には、「少額でかまわないから、今、ほったらかし投資を始めましょう!」と力強く伝えたいのです。私たちが休んでいる間も、お金は世の中で働いて、金利として私たちに“報酬”をもたらしてくれます。
世の中、お金ばかりじゃないのですが、周りを見渡すとお金で人間関係が壊れたり、お金のために我慢を続けて精神を病んだりするケースは珍しくありません。
学歴が高く、普段は理知的で冷静な判断を下す人が、「取引先が倒産」という事態で、損失を取り戻そうと思ったのか、無謀な行動を取ろうとしたことがありました。その様子を見て私は「ちょっと待ってください」と止めたのですが、「冷静な人でも、お金で判断が狂うのだな」と内心驚いていました。そして、経済的独立が私たちに与える安心感は相当なものだと、改めて実感したのです。
ここで、世間一般におけるリアルな貯金額などを見ておきましょう。
金融広報中央委員会の家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)によると、次のとおりです。
○1人暮らしの20代の平均預貯金額:219万円
○1人暮らしの20代の貯金額の中央値:103万円
○世帯主の年齢が20代の2人以上世帯の平均預貯金額:403万円
○世帯主の年齢が20代の2人以上世帯の平均預貯金額:171万円
○1人暮らしの60代の平均預貯金額:2240万円
○1人暮らしの60代の貯金額の中央値:1100万円
○世帯主の年齢が60代の2人以上世帯の平均預貯金額:2588万円
○世帯主の年齢が60代の2人以上世帯の平均預貯金額:1200万円
そして、総務省の家計調査2023年(令和5年)によると、1人暮らしの毎月の生活費の平均額は16万7620円、2人以上の世帯は29万3997円でした。
というわけで、現在の貯蓄額が100万円の1人暮らしの20代(企業年金のない会社員)が、ほったらかし投資を実行するケースを考えてみます。
ほったらかし投資術 20代会社員の例
1 生活資金の確保は、3カ月分とします。1人暮らしの毎月の生活費の平均額は16万7620円なので3カ月分は50万2860円ですが、面倒くさいので50万円としましょう。貯蓄額は中央値の103万円を四捨五入して100万円とします。
100万円(貯蓄額)-50万円(生活資金)=50万円(運用資金)
生活資金の50万円は、普通預金に入れておきます。
2 「最悪の場合1年後に3分の1程度損をするかも知れないが、同じくらいの確率で4割儲かる場合」を考え、30万円をリスク資産とします。
〇投資額が30万円
最悪:10万円が減って20万円
最高:12万円が増えて42万円
長期投資を行った場合に1年当たりで増えると見込まれる:1万5000円
3 無リスク資産20万円のうち、10万円を個人向け国債変動金利型10年満期に、10万円をネット銀行の金利の高い定期預金にします。
※月々の収入については無視しています。
2万3000円×12カ月=27万6000円(iDeCo)
30万円-27万6000円=2万4000円→NISA成長投資枠へ(1人当たり上限240万円)
※可能なら月々数千円をNISAつみたて投資枠へ
※絶対に借金はしない
■ 『ほったらかし投資術』 以外の主な参考資料
金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)
総務省 家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)結果の概要
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