愛情も憧れも、資本主義に飲み込まれてしまう 『14歳からの資本主義』
資本主義 しほんしゅぎ
生産手段を資本家・企業者の階級が所有し、自分たちの利益追求のために労働者を働かせて生産を行う経済体制。
Oxford Languages
生産のための組織が資本によってつくられている経済体制。すなわち、資本制企業が物財やサービスの生産・流通の主体になっている経済体制であり、資本制経済ともよぶ。日本、アメリカ合衆国、西ヨーロッパ諸国など、いわゆる「西側の先進国」の経済体制は、資本主義である。
『日本大百科全書』
資本主義をネットで調べると「経済体制」として説明されています。しかし、社会を見回すと、教育、友人や恋人含む人間関係、さらに無意識の領域まで、資本主義に染まっているようです。
資本主義は、世の中のあらゆるものを「商品化」していく運動で、愛情も性欲も、資本主義に飲み込まれてしまう様子を描いた作品が、『pink』(著/岡崎京子)。
そして、『ゴミ屋敷とトイプードルと私』(著/池田ユキオ)で描かれていた港区女子は、自分と周囲の人間を持ち物や肩書きなどで値踏みし、「どちらのほうが高く"売れる"か」を競い合っています。自分は商品だから、誰かに選ばれる(購入される)ことで、価値があると思い込んでいるのです。
こうした私たちの無意識の行動について、文章でわかりやすく説明されているのが『14歳からの資本主義』(著/丸山俊一)。
資本主義社会では、「売れ行き」ばかりが重視される
このことを、市場での株の取引を行う人々の心理を表現した「ケインズの美人投票」を引き合いに出して、説明しています。
自分が「美しい」と思う人ではなく、みんなが投票しそうな人を選ぶ
自分の気持ちや価値観よりも、周りの人々の心の動き、つまり人気を重視して選択するということです。
他人の幸せばかりを眺めているうちに、自分自身が何をしたいのか、何をすべきか、自分の意見がわからなくなってしまう
就職活動にも当てはまるかもしれません。「就職求人市場」「売り手市場」「買い手市場」という言葉があるとおり、就活生の価値は市場で決められています。そして人気企業に入ると、「価値が高い人間」と認められるわけです。
人間としての存在価値は、市場で決められる
自分を高く売ることに夢中になっているうちに、自分がどんな人間で、何をしたいのかを忘れてしまう
「誰もがうらやむ、有名企業」に入ることしか目に入らなくなるのです。就職活動がうまくいかなければ、「私は価値のない人間」と自分を判断し、引きこもってしまう例もありました。
すべての物が商品として売られる。人間も感情も精神も創造性もそして市場で「使える」「役に立つ」という判断基準で評価を受ける
「私は~したい」「~になりたい」という欲求も、実は「私」という主体的なものではなく、周りのモノマネ。他人が欲しがっているもの(物質のみならず、評価や肩書き、名誉など)をうらやましがり、自分も欲しくなっているだけなのです。
他人が欲しがっているかどうか、つまり価値の指標になるのが、数字。
「何人が欲しがっているか」「それはいくらで手に入れられるか」と数字に置き換える作業で、無意識のうちに価値判断をしています。数字で結論を出したがってしまうのです。
素晴らしいから高いのか高いから素晴らしいのか
また、資本主義社会においては、資本(設備や原材料など)から価値を生み出す作業が繰り返されています。
資本を、際限なく自己増殖させていく活動、言い換えると欲望が欲望を果てしなく生み出す。きれいな言葉を使えば、「成長」
教育や仕事などの現場では、 「成長」を絶対的な善として捉えられている傾向があります。
『14歳からの資本主義』のサブタイトルは、「君たちが大人になるころの未来を変えるために」となっています。
個人的には、「未来を変える」というのは難しいのではないかと思っています。ただ、苦しさの原因が、人間や創造性までも「商品化」していく資本主義への過剰な適応、つまり「認めてもらえない人間は生きる価値がない」というような無意識の考えによるものだと気付けるだけで、小さな救いになるのではないでしょうか。



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