「衰退ポルノ」から考える「絶望って、安易じゃないですか?」

 はてな匿名ダイアリーの「衰退ポルノ」という投稿が、話題になっていました。

うちの母親(60代後半)は、日本はもうダメです、後進国なんです、みたいなニュースが大好き

またこういう人にありがちな傾向として、中国と韓国をやたら持ち上げたがる

●過去に栄華を誇った存在が没落していく様子を野次馬的にみるのが楽しい
●自らが老いていっていることと境遇を重ねることで、何らかの溜飲を下げている
●若い世代がだらしないせいでこのような境遇に陥っているという、若者ディス


 タイトルの「衰退ポルノ」は「感動ポルノ」の派生語だと推測できます。

 porn(ポルノ)は、性的な描写で刺激を与えるポルノグラフィ(pornography)の略語です。ひいては、性的ではなくても、欲求や感情を過剰に刺激するものを指して、ポルノという言葉が使われることもあります。

 感動ポルノは、Wikipediaでは「主に身体障害者が健常者に同情・感動をもたらすコンテンツとして消費されることを批判的に表した言葉」と説明されています。24時間募金を呼び掛けていた某番組のように、身体障害者などの社会的弱者の活動を、感動を呼ぶストーリーに仕立て上げる風潮は、メディアだけでなく、政治や地域活動などさまざまな場面で見られます。
 衰退ポルノも、日本の衰退をコンテンツとして消費する姿勢を皮肉った言葉だと考えられました。

 日本の衰退として、頻繁にメディアに登場する話題は、人口減少、少子高齢化、それらに伴う社会保障制度の崩壊。そして、GDP世界ランキング2位からの転落、自動車・家電メーカーの海外勢の台頭ではないでしょうか。

 はてな匿名ダイアリーの投稿者は、「自らが老いていっていることと境遇を重ねることで、何らかの溜飲を下げている」と書いていました。しかし、「うちの母親(60代後半)」は「日本はもうダメ」というニュースを見て楽しくもないし、スッキリもしていないと推測します。
 思うに、「日本はもうダメ」は人間の本能に従っているだけで、それが楽な状態ではないかと。

 根拠となるのは『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』(著:ハンス・ロスリング 日経BP)で説明されているネガティブ本能。ネガティブなニュースのほうが、ポジティブなニュースよりも圧倒的に耳に入りやすく、記憶に残りやすいという傾向を私たちは持っています。

 人間の脳は、何百万年にもわたる進化の産物だ。わたしたちの先祖が、少人数で狩猟や採取をするために必要だった本能が、脳には組み込まれている。差し迫った危険から逃れるために、一瞬で判断を下す本能。唯一の有効な情報源だった、うわさ話やドラマチックな物語に耳を傾ける本能。食料不足のときに命綱となる砂糖や脂質を欲する本能。


 また、「うちの母親(60代後半)」などの前期高齢者は、体力や気力の衰えを実感しやすいものです。そんな自分自身の老いを、国や地域の衰えと重ね合わせるのは、想像力がいらず、とても簡単です。

 本能に従って、簡単で楽なほうに流されると、「衰退ポルノ」に至るのだと自分は考えました。
 こうしたことを、『楽観論』(著:古市憲寿 新潮社)では次のように表現されていました。

絶望って、安易じゃないですか?


 「衰退ポルノ」に終始すると、誰も自分の頭を使って考えなくなります。絶望って、安易だから。

 日本は高齢者が多いので、テレビや新聞、書籍といったオールドメディアは高齢者向けのコンテンツを作ります。視聴率や販売部数って、そのほうが増えやすいから。
 政治家も、高齢者に向けてメッセージを発します。票って、そのほうが集めやすいから。


 「衰退ポルノ」にはまるのは楽でしょうが、楽しくもないしスッキリもしません。体力や気力が満ちあふれている若者が、オールドメディアと政治家を敬遠するのは、楽しくないしモヤモヤするためでしょう。

統計的にも言えるが、人生は総じて「ローリスク・ハイリターン」である。
人はなかなか死なないし、国家は滅多に崩壊しないし、人類滅亡もまだまだ先だろう。
何とかならないことは、ほとんどない。


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