「良心がない」というサイコパスに対し、処方箋はない
『サイコパス』(中野信子、文藝春秋)によれば、精神医学では「反社会性パーソナリティ障害」という診断が「サイコパシー」で、サイコパシーの人がサイコパスということになるようです(こうした診断や分類については諸説あり)。
ちなみに、スティーブ・ジョブズもサイコパスだったであろうと中野氏。
ネットで調べたところ、スティーブ・ジョブズはドラッグをやったり、彼女を妊娠させたのに子どもを認知せず養育費を払わず、裁判で売女扱いしたり、スティーブ・ウォズニアック(天才エンジニア)の報酬を横取りしたり、社員に罵詈雑言を浴びせたり、他人のアイデアをパクったり……最低ですね。
その一方で、カリスマ性を持った、魅力的な人物でもあったということでしょうか。
サイコパスの治療(心理療法)について、以下のようにこの本で言及されていました。要は、治療は無理ということですね。
●心理療法
〇精神分析的心理療法
科学的エビデンスに乏しいと書かれています。
---
フロイトの業績は、注意深く読めば科学的証明に乏しい、反証可能性があるとは言いにくい理論であることがわかります。そのため、今ではトンデモ科学呼ばわりする人たちもいるほどです。
---『サイコパス』より
〇人間学的心理療法
自己実現など肯定的価値観を主体とする心理学をもとにした療法で、パーソンセンタード・セラピー、ゲシュタルト療法があるそうです。これはサイコパスには効果がないようですね。
〇認知行動療法
物事の受け取り方や考え方に働きかけ、人間の行動を変化させていきます。
しかし……
---
サイコパスにはそもそも「不安」がありません。出発点がないのです。しかも彼らは行動を改めることを拒みます。
---『サイコパス』より
つまり、反省しているふりしかしないということですね。
さらに……
---
グループセラピーでは、サイコパスの恐ろしさが発揮されてしまう可能性もあります。
ぺらぺらとわかったようなことをまくしたてるサイコパスがいると、スタッフも含む参加者全員に負の影響を及ぼします。サイコパスは他人のもろさを見抜き、人を操る能力に長けています。グループセラピーは、彼らのそうした能力に磨きをかけるトレーニングの機会になってしまうのです。これがサイコパスの治療が困難である理由です。
---『サイコパス』より
著者の中野氏は「好むと好まざるとにかかわらず、サイコパスとは共存してゆく道を模索するのが人類にとって最善の選択である」と、この本で締めくくっていましたが、対談では「わかりやすいメリットを提示して、近づきすぎない」と語っていました。「逃げるが勝ち」ともとれます(https://diamond.jp/articles/-/121505?page=4)。
なにはともあれ、「私たちが住む社会にはサイコパスが存在する」と認めることがスタートになるのでしょうか。
そしてサイコパスに対しては、アドラー心理学での「課題の分離」、つまり「自分の課題と他人の課題は別である」と考えて、距離を取るといいのかもしれません。
アドラーは「私たちは目的のために感情を使う」と指摘しますが、その傾向はサイコパスほど強まるようです。
ですから、他人の課題に踏み込まないと同時に、他人にも自分の課題に踏み込ませない、感情などを使ってコントロールしない・されない状況をつくることが重要なのです。
〇社交的
〇情熱的
〇魅力的
〇トークやプレゼンテーション、お世辞がうまい
〇大舞台でも堂々としている
〇挑戦的で勇気がある
〇人当たりがよい
〇女性の場合は弱者というキャラクターを演じることもある
〇異性に積極的にアプローチ
●頻出ワード(『良心をもたない人たち 』マーサ・スタウト 草思社文庫より)
〇悪いことをやった後で「誰にも言わないでほしい」
〇「あなたは私に借りがある」
〇「あなたは私と似ている」
〇「あなたと私は心が通じ合える」
〇「そんなことは言っていない」(ごまかし、責任転嫁)
●言動
〇「他人に対する共感を、いかに演じれば効果的に他人をだませるか」ということを学習している(例えば、親を亡くして泣いている人に、涙目で近づいて「あなたの気持ち、わかるわ。力になるから、私のグループ<ネットワークビジネスや新興宗教その他、サイコパスにとっての営利活動>に来てみない?」などと声をかける)
〇間違っているかどうかを確かめずに、自信たっぷりと口火を切る(先んじれば周囲を圧倒できることを学習しているらしい)
〇オーバーな言動をする
〇支配欲が強く、他人をコントロールし、上下関係を作ろうとする
〇権威や所属感を重視する
〇常習的に、ありえないようなうそをつく(経歴詐称)
〇アメとムチの使い分けがうまい
〇不正を働き、いいとこ取りをする
〇協調性や忍耐が求められるチームワークが苦手
〇うそ・不正が暴かれても恥じることはない(恥や罪の意識が欠落)
〇懲りない
〇スリルを追求する
〇集中力が高すぎる
〇飽きっぽい
〇主張に一貫性がない(「そんなことは言っていない」と開き直る)
〇「自分こそ被害者」「不当な扱いを受けている」と振る舞う
〇「好意の返報性」を悪用する
※良心の呵責や罪悪感を口にするのは、有効な処世術と理解しているからで、心は痛んでいない
〇愛も道徳も持たず、慢性的に退屈している(『良心をもたない人たち 』マーサ・スタウト 草思社文庫より)
〇体のあらゆる小さな痛みやけいれんに対して自意識が猛烈に強い(『良心をもたない人たち 』マーサ・スタウト 草思社文庫より)
〇努力を続けることや、組織的に計画された仕事を嫌がる(『良心をもたない人たち 』マーサ・スタウト 草思社文庫より)
〇自分を"ピリピリした天才"に見せかける(『良心をもたない人たち 』マーサ・スタウト 草思社文庫より)
〇自分にしか興味がない(『良心をもたない人たち 』マーサ・スタウト 草思社文庫より)
〇他人の足を引っ張ったり、無力なふりをして寄生したり、周囲の人々を操作するスリルに取りつかれている(『良心をもたない人たち 』マーサ・スタウト 草思社文庫より)
〇泣き落としを使って同情を買おうとする(『良心をもたない人たち 』マーサ・スタウト 草思社文庫より)
●脳内現象
〇一般人のIQの平均と変わらない
※IQが高い人ばかりではなく、サイコパスの多くは凡人で目立たない
〇論理的な思考や計算はできる
〇扁桃体が機能不全→恐怖や不安など情動が弱い
〇前頭前皮質の機能が低い→衝動にブレーキをかけられない、良心というブレーキがない
〇他人に危害を与えたり、ずるいことをしたりしても平気
〇他人の目つきや表情で、その人の心理状態を読み取る能力が高い
〇顔に感情が表れない
〇他者に対する共感性が低い(悲惨な画像を見せても感情と関係する部分の脳が活性化しない)
〇共感はしないが、他人の感情を理解はできる
●職業
〇企業の経営者
〇弁護士
〇外科医
〇政治家
〇実業家
〇小説家
〇炎上ブロガー
〇ジャーナリストなどマスコミ関係
〇選挙関係
〇セールス関係
〇危険度の高いスポーツの選手
〇教祖
〇動物愛護
●その他
〇100人に約1人の割合で存在(『良心をもたない人たち 』ではアメリカでは25人に1人の割合)
〇集団にパラサイトして生き延びる「フリーライダー」
●サイコパスに対処する13のルール(『良心をもたない人たち 』より)
1 世の中には良心を持たない人もいるという苦い事実を理解する
良心を持たない人は、凶悪な顔ではなく、私たちと同じ顔をしている
2 自分の直感と相手の肩書が伝えるものとの間で判断が分かれたら自分の直感に従う
教育者、医師、指導者、動物愛好家、人道主義者、親……立派な肩書きでも良心を持たない人はいる
3 相手の言葉、約束、責任について「3回の原則」を当てはめてみること
1回のうそ、1回の約束不履行、1回の責任逃れは、誤解もありえる。2回続いたら、かなりまずい相手かもしれない。3回重なったらうそつきの証拠。自分のお金・仕事(信用)・友情を守るためにできるだけ早く逃げる。
4 権威を疑う
5 調子のいい言葉を疑う
6 必要なときは尊敬の意味を問い直す
恐怖心と尊敬をきっぱりと区別する
7 ゲームに加わらない
サイコパスの挑発に乗って、次のことしないように
●力比べ
●出し抜く
●心理分析
●からかい
8 相手を避けて、いかなる種類の連絡も絶つ
サイコパスに傷つくという感情はないから、遠慮なく交友関係から締め出す
9 人に同情しやすい自分の性格に疑問を持つ
笑顔を見せず冷たく接すること
10 治らないものを治そうとしない
私たちは自分の行動は変えられても、他人の行動、ましてや性格は変えられない
11 素顔を覆い隠す手伝いをしない
「誰にも言わないで」と涙ながらに訴えるのはサイコパスの得意技
12 自分の心を守る
13 幸せに生きる
■関連記事
悪質クレーマーやモンスターペアレントの背景に「パーソナリティ障害」? その3つのタイプ
https://sceltadelmetodo.blogspot.com/2019/03/blog-post_64.html
ちなみに、スティーブ・ジョブズもサイコパスだったであろうと中野氏。
ネットで調べたところ、スティーブ・ジョブズはドラッグをやったり、彼女を妊娠させたのに子どもを認知せず養育費を払わず、裁判で売女扱いしたり、スティーブ・ウォズニアック(天才エンジニア)の報酬を横取りしたり、社員に罵詈雑言を浴びせたり、他人のアイデアをパクったり……最低ですね。
その一方で、カリスマ性を持った、魅力的な人物でもあったということでしょうか。
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見た目だけではサイコパスとわからない |
サイコパスの治療(心理療法)について、以下のようにこの本で言及されていました。要は、治療は無理ということですね。
●心理療法
〇精神分析的心理療法
科学的エビデンスに乏しいと書かれています。
---
フロイトの業績は、注意深く読めば科学的証明に乏しい、反証可能性があるとは言いにくい理論であることがわかります。そのため、今ではトンデモ科学呼ばわりする人たちもいるほどです。
---『サイコパス』より
〇人間学的心理療法
自己実現など肯定的価値観を主体とする心理学をもとにした療法で、パーソンセンタード・セラピー、ゲシュタルト療法があるそうです。これはサイコパスには効果がないようですね。
〇認知行動療法
物事の受け取り方や考え方に働きかけ、人間の行動を変化させていきます。
しかし……
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サイコパスにはそもそも「不安」がありません。出発点がないのです。しかも彼らは行動を改めることを拒みます。
---『サイコパス』より
つまり、反省しているふりしかしないということですね。
さらに……
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グループセラピーでは、サイコパスの恐ろしさが発揮されてしまう可能性もあります。
ぺらぺらとわかったようなことをまくしたてるサイコパスがいると、スタッフも含む参加者全員に負の影響を及ぼします。サイコパスは他人のもろさを見抜き、人を操る能力に長けています。グループセラピーは、彼らのそうした能力に磨きをかけるトレーニングの機会になってしまうのです。これがサイコパスの治療が困難である理由です。
---『サイコパス』より
著者の中野氏は「好むと好まざるとにかかわらず、サイコパスとは共存してゆく道を模索するのが人類にとって最善の選択である」と、この本で締めくくっていましたが、対談では「わかりやすいメリットを提示して、近づきすぎない」と語っていました。「逃げるが勝ち」ともとれます(https://diamond.jp/articles/-/121505?page=4)。
なにはともあれ、「私たちが住む社会にはサイコパスが存在する」と認めることがスタートになるのでしょうか。
そしてサイコパスに対しては、アドラー心理学での「課題の分離」、つまり「自分の課題と他人の課題は別である」と考えて、距離を取るといいのかもしれません。
アドラーは「私たちは目的のために感情を使う」と指摘しますが、その傾向はサイコパスほど強まるようです。
ですから、他人の課題に踏み込まないと同時に、他人にも自分の課題に踏み込ませない、感情などを使ってコントロールしない・されない状況をつくることが重要なのです。
サイコパスの特徴(『サイコパス』より)
●第一印象〇社交的
〇情熱的
〇魅力的
〇トークやプレゼンテーション、お世辞がうまい
〇大舞台でも堂々としている
〇挑戦的で勇気がある
〇人当たりがよい
〇女性の場合は弱者というキャラクターを演じることもある
〇異性に積極的にアプローチ
●頻出ワード(『良心をもたない人たち 』マーサ・スタウト 草思社文庫より)
〇悪いことをやった後で「誰にも言わないでほしい」
〇「あなたは私に借りがある」
〇「あなたは私と似ている」
〇「あなたと私は心が通じ合える」
〇「そんなことは言っていない」(ごまかし、責任転嫁)
●言動
〇「他人に対する共感を、いかに演じれば効果的に他人をだませるか」ということを学習している(例えば、親を亡くして泣いている人に、涙目で近づいて「あなたの気持ち、わかるわ。力になるから、私のグループ<ネットワークビジネスや新興宗教その他、サイコパスにとっての営利活動>に来てみない?」などと声をかける)
〇間違っているかどうかを確かめずに、自信たっぷりと口火を切る(先んじれば周囲を圧倒できることを学習しているらしい)
〇オーバーな言動をする
〇支配欲が強く、他人をコントロールし、上下関係を作ろうとする
〇権威や所属感を重視する
〇常習的に、ありえないようなうそをつく(経歴詐称)
〇アメとムチの使い分けがうまい
〇不正を働き、いいとこ取りをする
〇協調性や忍耐が求められるチームワークが苦手
〇うそ・不正が暴かれても恥じることはない(恥や罪の意識が欠落)
〇懲りない
〇スリルを追求する
〇集中力が高すぎる
〇飽きっぽい
〇主張に一貫性がない(「そんなことは言っていない」と開き直る)
〇「自分こそ被害者」「不当な扱いを受けている」と振る舞う
〇「好意の返報性」を悪用する
※良心の呵責や罪悪感を口にするのは、有効な処世術と理解しているからで、心は痛んでいない
〇愛も道徳も持たず、慢性的に退屈している(『良心をもたない人たち 』マーサ・スタウト 草思社文庫より)
〇体のあらゆる小さな痛みやけいれんに対して自意識が猛烈に強い(『良心をもたない人たち 』マーサ・スタウト 草思社文庫より)
〇努力を続けることや、組織的に計画された仕事を嫌がる(『良心をもたない人たち 』マーサ・スタウト 草思社文庫より)
〇自分を"ピリピリした天才"に見せかける(『良心をもたない人たち 』マーサ・スタウト 草思社文庫より)
〇自分にしか興味がない(『良心をもたない人たち 』マーサ・スタウト 草思社文庫より)
〇他人の足を引っ張ったり、無力なふりをして寄生したり、周囲の人々を操作するスリルに取りつかれている(『良心をもたない人たち 』マーサ・スタウト 草思社文庫より)
〇泣き落としを使って同情を買おうとする(『良心をもたない人たち 』マーサ・スタウト 草思社文庫より)
●脳内現象
〇一般人のIQの平均と変わらない
※IQが高い人ばかりではなく、サイコパスの多くは凡人で目立たない
〇論理的な思考や計算はできる
〇扁桃体が機能不全→恐怖や不安など情動が弱い
〇前頭前皮質の機能が低い→衝動にブレーキをかけられない、良心というブレーキがない
〇他人に危害を与えたり、ずるいことをしたりしても平気
〇他人の目つきや表情で、その人の心理状態を読み取る能力が高い
〇顔に感情が表れない
〇他者に対する共感性が低い(悲惨な画像を見せても感情と関係する部分の脳が活性化しない)
〇共感はしないが、他人の感情を理解はできる
●職業
〇企業の経営者
〇弁護士
〇外科医
〇政治家
〇実業家
〇小説家
〇炎上ブロガー
〇ジャーナリストなどマスコミ関係
〇選挙関係
〇セールス関係
〇危険度の高いスポーツの選手
〇教祖
〇動物愛護
●その他
〇100人に約1人の割合で存在(『良心をもたない人たち 』ではアメリカでは25人に1人の割合)
〇集団にパラサイトして生き延びる「フリーライダー」
●サイコパスに対処する13のルール(『良心をもたない人たち 』より)
1 世の中には良心を持たない人もいるという苦い事実を理解する
良心を持たない人は、凶悪な顔ではなく、私たちと同じ顔をしている
2 自分の直感と相手の肩書が伝えるものとの間で判断が分かれたら自分の直感に従う
教育者、医師、指導者、動物愛好家、人道主義者、親……立派な肩書きでも良心を持たない人はいる
3 相手の言葉、約束、責任について「3回の原則」を当てはめてみること
1回のうそ、1回の約束不履行、1回の責任逃れは、誤解もありえる。2回続いたら、かなりまずい相手かもしれない。3回重なったらうそつきの証拠。自分のお金・仕事(信用)・友情を守るためにできるだけ早く逃げる。
4 権威を疑う
5 調子のいい言葉を疑う
6 必要なときは尊敬の意味を問い直す
恐怖心と尊敬をきっぱりと区別する
7 ゲームに加わらない
サイコパスの挑発に乗って、次のことしないように
●力比べ
●出し抜く
●心理分析
●からかい
8 相手を避けて、いかなる種類の連絡も絶つ
サイコパスに傷つくという感情はないから、遠慮なく交友関係から締め出す
9 人に同情しやすい自分の性格に疑問を持つ
笑顔を見せず冷たく接すること
10 治らないものを治そうとしない
私たちは自分の行動は変えられても、他人の行動、ましてや性格は変えられない
11 素顔を覆い隠す手伝いをしない
「誰にも言わないで」と涙ながらに訴えるのはサイコパスの得意技
12 自分の心を守る
13 幸せに生きる
■関連記事
悪質クレーマーやモンスターペアレントの背景に「パーソナリティ障害」? その3つのタイプ
https://sceltadelmetodo.blogspot.com/2019/03/blog-post_64.html
文/森 真希(もり・まき)
医療・教育ジャーナリスト。大学卒業後、出版社に21年間勤務し、月刊誌編集者として医療・健康・教育の分野で多岐にわたって取材を行う。2015年に独立し、同テーマで執筆活動と情報発信を続けている。
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