汚れを便宜的に"酸性・アルカリ性"に分けて、洗剤などを選ぼう
基本的に家の中の多くの汚れは、台所用洗剤を塗った後、水拭きをすれば落とせます。そのほとんどが、食べ物の油や皮膚から分泌される皮脂など、油脂系の汚れだからです。
洗剤の界面活性剤が、油脂を浮かび上がらせ、水となじみやすくしてくれます。
ただ、洗剤だと落とし切れなかったり、水拭きがしにくかったり(あるいは水拭きが面倒)する場合、アルコールや食酢など、別のものを使って掃除する手段があります。
どんな汚れに何を選ぶかの目安となるのが、"酸性・アルカリ性"。その内容を、以下の図にまとめました。
家の汚れを"酸性・アルカリ性"で分類することに対し、批判的な意見もありますが、『クラナリ』では「わかりやすさ」を重視して、"酸性・アルカリ性"でまとめておきます。
合成洗剤の主成分は界面活性剤。ごく簡単にいうと、界面活性剤は親水基と親油基の両方を持つ物質です。"酸性・アルカリ性"とは別次元の話題です。
アルコールについては、水と油に混じりやすいという性質から、油汚れを落とす効果があります。中性から弱酸性に相当し、アルコールの作用も"酸性・アルカリ性"とは別次元。
家の掃除とはほとんど関係のない話題ですが、酸性・アルカリ性について、以下で触れておきます。
■まずは「モル」から
1mol(モル)とは、6.02×10の23乗 個の集団(ちなみに6.02×10の23乗 はアボガドロ数と呼ばれているとのこと)。
6.02×10の23乗 というややこしい数ではなく、100などわかりやすい数にすればいいのにと、素人は思ってしまいます。
こんなややこしい数になったのは、常温で固体なので扱いやすい炭素(C)が基準になったからのようです。
ここで、炭素12gに含まれている炭素原子の数の計算をします(なぜ12gかは不明)。
炭素原子の1個の質量は、約2.0×10のマイナス23乗とのこと。
炭素原子の数
=炭素の質量÷炭素原子の1個の質量
=12g÷(約2.0×10のマイナス23乗)
=6.02×10の23乗(アボガドロ数)
どんな物質にもアボガドロ数の個数の粒子が含まれているので、1アボガドロ数を1mol(モル)という単位で表すようにしたとのこと。
逆をいえば、1molには1アボガドロ数の、5molには5アボガドロ数の粒子が含まれているわけです。
そして、molを単位として表した物質の量が、物質量(記号n)です。
物質量の概念を鉛筆の数え方で例えてみましょう。鉛筆は12本の集まりで1ダースと表現しますが、化学の世界では6.02×1023個の集まりを1molと表現します。
https://zukai-kikenbutu.com/buturikagaku/2-mol.html
■次に「モル濃度」
モル濃度は、溶液に粒子が何mol(6.02×10の23乗 個)含まれているかを表しています。■そして本題のpH
pH(水素イオン濃度指数)は以下の式で求められます。あまりにも難しいのですっ飛ばしますが……○pHが小さいほど水素イオン(H+)の濃度は高い
○pHが1減少すると水素イオン(H+)濃度は10倍になり、水酸化物イオン( OH−)の濃度は10分の1になる
○pHが1増加すると水素イオン(H+)濃度は10分の1になり、水酸化物イオン( OH−)の濃度は10倍になる
■酸性・アルカリ性とは?
酸性とは、水溶液中の水素イオン(H+)が水酸化物イオン( OH−)よりも多い状態。
アルカリ性とは、水溶液中の水酸化物イオン( OH−)が水素イオン(H+)よりも多い状態。
いくつかの物質が、水溶液の中で水素イオン(H+)を渡したり受け取ったりして、中性になることが中和です。
掃除についても、酸性、アルカリ性、中和という言葉がよく使われますが、これは「誤用が多々含まれるが、わかりやすい表現」なのだそうです。
酸と酸化は別物です。ザックリと表現すると、酸とは水素イオンを放出する物質のことで、酸化とは酸素原子を与えること反応のことを指し、関連する元素が水素と酸素で全く異なります。具体的には、硝酸は代表的な酸ですが酸化剤でもありますが、シュウ酸という物質は酸ですが還元剤として働きます。塩酸や酢酸などは、そのままでは特に酸化剤や還元剤とは見なされない酸です。
http://www.detergent.jp/kaisetsu3/acidbase.html
×「酸は酸化剤」
×「酸の効果は酸化作用による」
酸 acid⇔塩基、アルカリ 〈関連用語:酸性、塩基性、アルカリ性〉
酸化 oxdation⇔ 還元 〈関連用語:酸化剤、還元剤〉
台所のこびりついた油汚れに重曹やセスキ炭酸ソーダなどの弱いアルカリを用いるのは、実は非常に効率の悪い方法です。金属汚れの除去にとってどの酸を選ぶかという点は非常に重要なポイントになります。単純に「酸であれば」という考え方では対応できないのがカルシウムや鉄さび汚れの酸洗浄なのです。またクエン酸を用いて水垢汚れ除去をしようとして、長時間反応させたために不溶性物質を生成してかえって汚れをひどくするなどの事故もあります。http://www.detergent.jp/kaisetsu3/acidbase.html
上記の引用は、横浜国立大学大学院環境情報研究院 人工環境と情報部門の大矢 勝 教授の文章です。重曹やセスキ炭酸ソーダ、クエン酸を使った掃除が、一時期、「安全」「簡単」としてメディアに取り上げられていました。それに対する警鐘です。
過去に仕事で聞いた例ですが、重曹をお湯で溶かして掃除をしようとしたときに、素手を突っ込んでしまって、皮膚がベロンとはがれた人がいました。ちなみにこの人、薬剤師です……(おいおい)
重曹もセスキ炭酸ソーダもクエン酸も、高温のお湯だとpHも変わり、粘膜や皮膚に付着すると危険です。眼鏡や手袋で体を防護してから使うことをお勧めします。
■参考資料
https://ocw.hokudai.ac.jp/wp-content/uploads/2016/01/ScienceLiteracy1-2009-Text-12.pdf
https://www.nhk.or.jp/kokokoza/library/2020/tv/kagakukiso/archive/kagakukiso_19.pdf
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