3-1 慢性腎臓病と診断されたら考えたいこと
第3章 人生会議・共同意思決定という難関
3-1 慢性腎臓病と診断されたら考えたいこと
家族全員が健康で、それぞれに自立して暮らしていると、家族の存在を意識する機会はほとんどありません。表面的には平穏でしょう。
それがひとたび病気やケガなどが起こると、平穏が破られます。治療にかかるお金や世話などの話し合いで、「家族なんだから」「私ばかりが我慢させられてきた」などと、いさかいが生まれたり、隠れていた問題が表面化したりしがちです。
一例として、家庭内別居の状態が続いてきた夫婦で、夫が病気になり在宅での治療を望んでいても、妻にしてみたら「好き勝手やってきて、どうして私が夫の面倒を見なければならないのか」と納得がいかず、「治療費は出すから入院してほしい」と主張することもあります。
たとえ円満な家庭でも、お金やマンパワーで家族の利害がなかなか調整できないことも珍しくありません。患者さんが「子どもたちには迷惑をかけたくないから、治療を受けない」と話していても、治療を受けなかったために衰弱して手助けが必要になり、結果として子どもたちに迷惑をかけるパターンもあります。
そのため、慢性腎臓病と診断された時点で、家族がいるのであれば全員を集めて、患者さん自身はどのように人生を全うしておきたいのかを話し合っておくことが重要ではないでしょうか。患者さんのそばで生活している人と、遠く離れて暮らす人との間では、ほとんどの場合で意見の対立が見られました。「いよいよ悪くなってから考えよう」となると、どの治療を選択するのか検討する時間が短くなってしまいます。
病気のこと、お金のこと、人生観など、普段は避けてしまいがちな話題ですが、家族の間でしっかりとコミュニケーションを取っておくことがお勧めです。
また、ステージが進んだら、転倒をしないことが患者さんには求められます。慢性腎臓病については骨折しやすくなるからです。自転車やバイクといった二輪車で転倒している高齢者は珍しくありません。二輪車は避けて、徒歩や三輪車がよいでしょう。
慢性腎臓病に限らず、高齢の患者さんが在宅や通院で治療を受けている場合は、ガスではなくオール電化に切り替えることが勧められています。認知機能が低下してくるため、うっかり火を消し忘れるなどで火事を起こすリスクが高いためです。
それから、介護保険や地域包括センターを確認しておきましょう。
高齢者の介護を社会全体で支えることを目的として、介護保険制度が2000年にスタートしました。40歳以上の人が加入して介護保険料を納め、介護が必要になったときに介護サービスが受けられる社会保険です。
65歳以上になれば、市区町村(保険者)が行う要介護認定で介護が必要と認定された場合、サービスを受けることができます。
要介護認定は介護サービスの必要度を生活機能や認知機能などで判断するもので、自立・要支援・要介護に分類します。
末期腎不全でも排尿や排便、口腔洗浄などが自分でできる場合は、要介護度は低いと見なされ、自立と認定されるケースもあります。病気の重さは、要介護度の高さとは必ずしも一致しません。
介護保険については、主に次の2つが問題になっています。
○財源不足
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年以降は、介護費用の増加が予想されると同時に、介護保険料を負担する40歳以上の被保険者の人口が減っていきます。
○労働力不足
日本の人口における、介護を担う年代の割合が減少しています。
介護保険法は3年に1回見直されるため、改正に合わせて私たちも内容を確認する必要があります。
これまで当たり前のように安価で受けられた日本の医療が、高齢化がさらに進む10年後、20年後には高額になっているかもしれません。
慢性腎臓病の患者さんへの緩和ケアについては、2026年6月の診療報酬改定で、緩和ケア病棟の入院料が算定対象に加えられることになりました。しかし、財源や労働力が足りないという課題がある以上、今後進展するどうかは疑問です。
国や自治体、医療関係者に「お任せ」で終末期も何とかなるという姿勢では、患者さん自身も家族も生活が破綻するリスクがありそうです。ですから、慢性腎臓病が軽度の段階で、家族がひざを交えて今後の方針を話し合うことが大切なのです。


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