5-3「自然の麻酔」とも呼ばれている尿毒症
5-3「自然の麻酔」とも呼ばれている尿毒症
尿毒症は英語ではUremiaです。尿素のUreaと血液の状態を示す-miaがくっついた言葉で、尿素が血液中に多い状態を意味します。健康な状態では体の外に出されていた尿素などの尿の成分が、腎臓の機能が低下し、血液中に蓄積して全身に悪影響を及ぼすのが尿毒症なのです。
尿素の化学式は(NH2)2COで、窒素(N)、水素(H)、炭素(C)、酸素(O)からできています。尿素の成分で、窒素が約46%を占めています。
人間の体内では、タンパク質を構成するアミノ酸が分解されてできた有毒なアンモニア(NH3)が、肝臓の尿素回路(オルニチン回路)で無毒の尿素に変えられます。尿素は血液に乗って腎臓へと運ばれ、尿として排出されています。
体内で発生するアンモニアのほとんどが、腸内細菌の活動によるものです。腸と肝臓とは門脈という静脈(血管)でつながれているので、アンモニアは血液に乗って直接肝臓へと運ばれます。
一方、細胞がアミノ酸を分解した際に発生したアンモニアについては、そのまま血液に乗って流されると細胞が害を受けます。ですから、肝臓に運ばれる前に、アンモニアはグルタミン酸とくっついてグルタミンになるのです。
このようにアンモニアと違って尿素は、無毒な老廃物です。人間の体を私たちが暮らす部屋でたとえると、尿素については、床に落ちた髪の毛や鼻をかんだティッシュペーパー、食器を洗った際の排水など、生活する上で発生するゴミと変わりません。ゴミがあると不快ではありますが、その程度のものです。
しかし、床が見えなくなるほどゴミがたまったり、排水が流れなくなったりすると、部屋には住めなくなります。この「汚部屋」状態が、尿毒症といえます。
年齢を重ねるとともに、肝臓も腎臓も老いていきます。健康な人でも、糸球体濾過量(GFR)は10年ごとに5mL/分/1.73m²ずつ低下していくことが多いものです。
残念な話ではありますが、加齢で人間の体は「汚部屋」化していくというわけです。ただ、決して悪いことばかりではありません。
かなり高齢になり最期を迎える頃になると、ウトウトと眠る時間が増え、食が細くなり、水も飲まなくなって、呼吸が弱まってきます。こうした状態は「自然の麻酔(Natural Anesthesia)」と医療関係者からは呼ばれているそうです。ウトウトと意識が遠のいている状態で心臓が止まれば苦しまず、いわゆる安らかな最期を迎えるのです。
海外の研究では、75歳以上の末期腎不全の患者については、さまざまな合併症もあり、透析療法をした場合としなかった場合では、生存期間の差は見られないという報告がありました。
透析療法には煩雑さや苦痛があり、尿毒症にも苦しみがあります。そして、患者さんの年齢やライフステージ、置かれた状況(一人暮らしか否か、財産など)で、透析療法か保存療法かのバランスが変わってくるといえるでしょう。
■主な参考文献
高齢化社会における透析医療の諸問題
日本人透析導入患者,特に高齢者は導入後早期死亡が高く,身体活動度と強く関連する
「終末期癌患者に対する輸液治療のガイドライン」より 必要な点滴、害のある点滴とは?
終末期の症状を知っておきましょう…看取りの時に何をしてあげればいいのか|700人看取った看護師がアドバイス
高齢CKDステージ5患者の生存率:保存的治療と腎代替療法の比較


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