改めて源泉徴収について調べてみた


 源泉徴収(withholding tax)は、給与や報酬を支払う側が、受け取る人の所得税などを差し引いて、本人に代わって国に納める仕組みです。給与や報酬などお金が発生する「源泉」から税金を徴収するわけです。

 イギリスで1692年にできた土地税 (Land Tax) で、源泉徴収が採用されていると、中央大学商学部の矢内一好教授(当時)が説明していました。土地を借りる人が地代を支払うときに、税金の分だけを差し引くという方式だったとのこと。

 一般的には、同じくイギリスで、1803年に首相のヘンリー・アディントンが成立させた所得税法が近代的な源泉徴収のルーツとされています。当時はナポレオン戦争の最中で、戦費を調達するために源泉徴収を取り入れました。
 アメリカでも戦争が関係していて、南北戦争中の1862年に導入されたのだそうです。

米国において最初に施行された1862年法の概要であるが、納税義務者は、米国に居住するすべての者 (every person)である。課税所得は、年次の利得(gains),利益(profits) 又は所得(income)で、不動産等からの所得,利子及び配当所得,給与、米国国内又はその他の場所で行われる専門職業からの所得、商業又は事業からの所得、その他あらゆる源泉から生じるものが課税対象となっている。

 ドイツでは、第一次世界大戦直後の1920年に導入されました。当時のドイツはワイマール共和国で、第一次世界大戦で戦敗国になり財政危機が深刻でした。

 日本で最初の源泉徴収は1899(明治32年)年で、公社債の利子に対して行われました。
 所得税に源泉徴収が導入されたのは、1940年(昭和15年)の税制改正です。戦費調達や滞納の未然防止、納税の簡易化、納税者の捕捉が目的です。

 現在では、所得税と復興特別所得税を足した税率10.21%が、給与や報酬などから差し引かれています。 
 専門家に1万円で講演をしてもらった場合、1021円を源泉徴収して本人には8979円を支払います。ただし、同一の個人に対して1回の100万円を超える支払いが伴う場合、100万円を超える部分については税率が20.42%になります。

 また、制度が見直されて、算定方法が変更されています。

 令和7年度税制改正において、所得税の基礎控除の見直し等が行われたことに伴い、税額や扶養親族等の数の算定方法が変更となっています

 
 源泉徴収が必要な報酬や料金は、支払いを受ける人によって異なっています。


報酬・料金等の支払を受ける者が居住者である場合の源泉徴収の対象となる範囲
1 原稿料や講演料など
ただし、懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等については、一人に対して1回に支払う金額が50,000円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。

2 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金

3 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬

4 プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金

5 映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金

6 ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金

7 プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金

8 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

報酬・料金等の支払を受ける者が内国法人である場合の源泉徴収の対象となる範囲
・馬主である法人に支払う競馬の賞金

支払を受ける者が研究会、劇団などの団体で、個人か法人かが明らかでない場合は、その支払を受ける者が、法人税を納める義務があることまたは定款、規約、日常の活動状況などから、団体として独立して存在していることを明らかにした場合は法人として取り扱い、そうでなければ個人として取り扱います。

報酬・料金等の額の中に消費税および地方消費税の額(以下「消費税等の額」といいます。)が含まれている場合は、原則として、消費税等の額を含めた金額が源泉徴収の対象となります。ただし、請求書等において、報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません(注)。
(注) 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始後も、上記の取扱いは変更ありません。

 個人から個人へ仕事をお願いして報酬を支払う場合は、源泉徴収する必要はありません。例として、家族の似顔絵を描いてもらって、イラストレーターに報酬を支払う際は、源泉徴収しなくていいのです。

 しかし個人でも、誰かを雇って給料を支払っていたら、源泉徴収をする必要があります。

 法人であれば、報酬を支払う際に源泉徴収をします。
 法人ではない団体、例えばPTAや自治会などでも、講演料など「源泉徴収の対象となる範囲」内で報酬が発生したら、源泉徴収をします。

 例えば、PTAが個人の専門家に講演をしてもらったら、講演料は源泉徴収の対象になります。
 一方、アイドルに来てもらって報酬を支払う場合、支払先がアイドルの所属事務所という法人であれば、源泉徴収は行いません。専門家でも同様で、法人化していたら源泉徴収は必要ありません。

 源泉徴収を行う前には、「給与支払事務所等の開設の届出」を行います。届出書はe-Taxソフトを使って作れます。AIが次のようにまとめました。

必要な手続き・提出先提出期限: 給与などの支払事務を開始(または事務所を開設)した日から1ヶ月以内
提出先: 団体の主たる事務所(事業所)の所在地を管轄する税務署(※国税庁の税務署所在地・案内ページで管轄区域を確認できます)
提出方法: 税務署の窓口へ持参、郵送、またはe-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用してオンラインで提出

 源泉徴収した税金は、原則として支払いを行った月の翌月10日までに国(税務署)へ納付しなければなりません。





■主な参考資料
「源泉徴収はナチスの発明」というウソ
https://gendai.media/articles/-/124074?page=6

3 源泉徴収制度の導入―昭和時代―
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/tokubetsu/h26shiryoukan/03.htm

インボイス制度開始後の報酬・料金等に対する源泉徴収
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/gensen/111209/01.htm

市川市市民活動団体事業補助金審査会
https://www.city.ichikawa.lg.jp/page/4918.html

A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_11.htm
Powered by Blogger.