普段の人間関係で消耗しないためにも知っておきたいクレーマー対策「そだね法」 『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』
自分が雑誌の編集部にいた頃、粘着質のクレーマーがよく電話をかけてきました。中高年男性です。電話口で「この特集の内容は本当なのか」「前回との違いはどこなのか」などと、関西弁で、横柄な口調で、ネチネチネチネチと話し続けていました。
また、雑誌の記事の朗読を始める高齢女性もいました。ストップをかけなければ、30分以上も、自分たちが作成した記事の読み上げを聞かされることになります。
クレームは多岐にわたり、正当な指摘もあれば、不合理なもの、寂しさを埋める不毛な長話もありますが、受ける側としては、本来の業務に差しさわりにないように対応したいものです。
自分もいろいろなクレームを経験しましたが、民間企業と比べて行政へのクレームは、はるかに多いといわれています。
『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』(著:山下由美 ダイヤモンド社)には、タイトルどおり、大量のクレームを処理してきた著者による対応策が掲載されていました。
例えば、団体や夫婦など複数でクレームを言ってきたときには、当事者や責任者、立場が強い人といったキーパーソンに絞って対応し、例えば夫がクレームを言った後で妻がクレームを言い始めた場合には「まずご主人とお話させてください」と伝えるとのこと。
確かに、交代でクレームを聞かされるのは時間も体力も奪われるので、「絞る」というのは重要ですね。
この本で挙げられているクレーム対策は、クレーマーだけでなく、良好だと思える友人や親子といった間柄でも、知っておいたほうがよいということでした。例えば傾聴については、怒っている相手の場合、同じ愚痴のリピートになりがちです。こちらがうんざりして疲れる前に止めることも重要。
ここでは、本書の内容をざっくりとまとめました。
クレームへのNG対応
■その場しのぎの、過剰な対応をする→相手の心中「クレームで得した! またやろう」
プロのクレーマーによると、スーパーで買った商品に不備があったら、買ったお店ではなく、「商品を作った企業」に連絡するのが重要で、「そうすれば、新しい商品が箱でもらえる」
不備のあった1つの商品を箱で交換するという過剰な対応によって、クレームが得になる機会を生んでいます。同時に、「新しい商品が箱でもらえる」という既得権になって、クレーマーは他社に対しても「○○社は箱で持ってきたのに」と要求するようになり、クレームをエスカレートさせていく可能性もあるということ。
お客様からぶつけられた怒りから逃げていると、相手はそれを既得権として、あなたを狙ってくるようになります。その場しのぎのご機嫌取りは、最終的に自分に跳ね返ってくるだけです。
過剰な対応がSNSなどで拡散されると、マネをする一般人(クレーマーというより、“お得情報”を実行する人)を多く生み出して、対応に追われるようになってしまうとのこと。
■怒鳴る相手に冷静に振る舞う→相手の心中「こっちの気持ちがわからないのか!!」
こちらが冷静に対応すればするほど、相手は「自分がこんなに大変な状況だと訴えているのに、それがわからないのか!」と感じてしまう
心は冷静に、しかし振る舞いは相手の怒りの奥にある驚きや悲しみなどを表現し、相手に合わせるとのこと。
■誤解を解こうと、正しい情報を伝えようとする
怒っている状態のときに、あれこれ理屈を言われても、怒っている本人には「そんなの言い訳だ」「こちらの立場になって考える気がない」としか思えず、怒りをますますヒートアップさせるだけです。
冷静なタイプには「でも」「ですが」「だから」といった発言はNGとのことですが、これはクレーマー対策だけでなく一般的な会話でも当てはまると思われます。
■ひたすら謝る→相手の心中「やっぱり、私のほうが正しんだ」
多大な時間を要しますし、クレームを言うことをあきらめさせたとしても、相手の怒りを消せたわけではない
ひたすら謝ることで、次のことが起こると説明されていました。
●後日、同じことで文句を言われる
●うんざりして、相手が寄り付かなくなる
●代案を提示しないので「不誠実だ」と別の怒りを生む
●「自分の主張は正しいんだ」と誤解をして、要求をエスカレートさせる
■「ほかではやってくれた」という言葉を鵜呑みにする
1度うまくいったことは既得権になる恐れがあります。1度ごねてうまくいったことが2度目もうまくいくと、心ならずも普通の人が、クレーマー化してしまうことも珍しくありません。
■怒っている相手の話を傾聴する
相手が感情的になっていたり、横暴な性格であったりする場合は逆効果です。
話が終わる頃には、起こっている本人は最初に何を言ったか忘れていて、また同じ話を始めるか、逆にまったく違った主張を始める状況を繰り返すことになります。
傾聴によって相手は延々とクレームをリピートして、こちらは消耗するという結果に。
3大誤解
1 こちらの話したとおりに伝わっている
「誠意を込めて話せば、お客さまに伝わるに違いない」と考えがちです。しかし、残念ながら、みなさんが想像している以上に、こちらの言葉は相手には伝わらないものなのです。
〈実験〉①初めに紙の真ん中に丸を5つ描いてください。②次に、紙の角に星を3つ描いてください。③そして、丸を囲むように三角を描いていください。
筆者のセミナーでは、上の実験をやってもらうそうで、描いた絵がそれぞれでかなり異なるとのこと。
こんな単純な言葉のやり取りでも、人によって解釈がまったく異なるのです。この受け取り方の違いこそが、相手とのすれ違いの原因になるのです。
人間というものは、自分の都合のよいように話を聞くものです。「言った」「いや、言っていない」と水掛け論になるのは当たり前で、この場合は「そのようにお聞きになったのですね」などと対象を限定して受け止めた後で次善策を提示して、水掛け論を止めるとのこと。
2 こちらの話が正論なら納得してくれる
いくらお店や会社、自分に理があっても、お客さまの困っている気持ちにそぐわなければ、納得してもらえません。
挙げられていた例は、病院で予約している人を先に案内しても、「具合が悪くて病院に来ているのに何時間待たされるんだ!」と不満に思っている人に、「予約されている患者さんが先の案内になる」と伝えても、言われた側の気持ちが収まらないということでした。
「申し訳ありません! 今日はどうされました? おつらいですよね」と、具合が悪くてつらい思いをしている男性の気持ちに寄り添ったひと言があったらどうだったでしょうか。
お客さまの怒りがお客さま自身の勘違いに端を発したものだったとしても(じつはよくあることです!」、「正しい説明をしよう」と焦らないことです。
正論は相手のプライドを傷つけ、納得どころか、意固地にさせる可能性があることを覚えておきましょう。
3 納得してくれれば、引き下がってくれる
多少気持ちにズレがあっても、「会社やあなたの立場はわかる」と、一定の理解を得られることがあります。けれども、間違わないようにしたいのは、理解を得られたり、納得してもらったりしたからといって、素直に引き下がってくれるとは限らないことです。
この誤解については、アメリカのポール・マクリ―ン博士が唱えた「三位一体脳」説をもとに説明が行われていました。
私たちの脳には、脳幹などの生存本能を司る「爬虫類の脳」と、それを取り囲むように、大脳辺縁系など快や不快といった感情に関係する行動をコントロールする「動物の脳」、その周りに大脳新皮質、言語や理論的思考を司る「人間の脳」があります。
そして、行動のほとんどは「爬虫類の脳」と「動物の脳」が司っているので、感情が動かなければ行動できないとのこと。
怒りに支配されていると論理的思考が働かないので、クレーマーに理屈で接してはいけないということになります。
怒っている本人が必ずしもその原因や、怒りの収めどころを自覚しているとは限らないのもやっかいなところです。不満や怒りはあるものの、具体的にどうしてほしいのかわかっていない人も珍しくありません。
こうしたクレーム対策として、筆者は「超共感法」、別名「そだね法」を紹介しています。ただし、相手に共感するわけではありません。
「怒っているお客様に『そうなんです』(YES)と言わせる」
具体的には、相手の立場を理解する、相手の気持ちを代弁する、相手のペースに合わせて訴えをいったん受け止める、といったことが挙げられていました。
大声で怒鳴る人には、「ご足労いただき、申し訳ありません!」と同じくらいの大声でハキハキと謝って、相手がたじろいだ瞬間に「こちらにどうぞ」と落ち着ける場所に案内するそうです。
理詰めの人は、自分の知識や理論が周囲にも広く役立つと思い込んでいると同時に、「役に立ちたい!」という思いを抱いているため、相手の話に感心して承認欲求を満たすのですが、「それが正しいですね」と同調はしないとのこと。
クレームを受けるのは実に不快なのですが、「なんとかなだめて、この場を去ってもらおう」と考えるか、「新たなビジネスチャンスになるかもしれない」と考えるかで、自分の態度は大きく異なります。そして、どんな対応を取るのかが、自分にも跳ね返ってきます。
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